老舗漢方専門店「薬日本堂」さんにご協力いただき、介護職に役立つ漢方に関する情報を発信しています。
今回は、【漢方スクール講師が教える】介護職のための『身体の柔軟性低下』からの回復法についてです。是非最後までご覧ください。
【前回の記事】
漢方スクール講師が教える介護職のための『関節痛・腰痛』解消法!
介護職に欠かせない身体の柔軟性
介護職の方が担う介護業務には身体の柔軟性が欠かせません。
前回の『関節痛・腰痛』解消法でも紹介されましたが、介護の現場では利用者様の体位変換や移乗介助などの動作が筋肉や関節に負担をかけます。
柔軟性が低下すると、介護業務中の転倒やけがなどにつながるだけでなく、疲れやすくなるので注意が必要です。
今回は、漢方の視点で身体の柔軟性を高めていくヒントをお伝えします。
柔軟性チェック|簡単に確認できる2つの方法
①肩関節の柔軟性…背中手つなぎ
まず右腕を上から、左腕を下から背中に回し、両腕で指を組めるかどうかをチェックします。
反対側もやってみましょう。利き腕でないほうが上だと固まって握りづらいと思います。
A 指先が握れる
B 指先が触れる
C 指先が触れない
②背中、腰、脚裏の柔軟性…足伸ばしでの前屈
両足を前に出して座り、膝を曲げないで前屈した時にどれだけ両手の指先が出るかチェックします。
無理をして足がつらないように注意してください。
A 指が全部出る
B 指先がつま先に届く
C 指先がつま先に届かない
いかがでしたか?①②ともにCの場合は、柔軟性が低下していると考えられます。
なぜ身体は硬くなるの?
身体の柔軟性とは「筋肉が伸びる能力」「関節の可動域」と考えられます。身体が硬いと感じる時は、筋肉が緊張し、萎縮して、関節の動きが小さくなっています。
身体が硬くなる原因はさまざま。
加齢や運動不足、ケガや病気などで筋肉が萎縮して硬くなるケース。これは要介護者の方に多くみられます。
過剰な運動や長時間の同じ姿勢、冷えなどで筋肉が緊張して硬くなるケースは、介護職の皆さまに多くみられます。
漢方で考える柔軟性低下の原因と改善策
漢方で人の身体は気(き)、血(けつ)、水(すい)で構成されていると考えます。気はエネルギー、血は栄養、水は潤いと考えるとイメージがつきやすいですね。
柔軟な身体作りには栄養である血と、潤いの水が欠かせません。
特に血は、肌をふっくらと保ち、筋肉を充実させ、腱を丈夫にする働きがあります。不足すると肌や筋肉がやせて柔軟性が低下し、しびれや痙攣、足がつるなどの症状が起こりやすくなります。
また血行が悪いと筋肉が硬くなり、関節も動きづらくなります。
水は関節の動きをなめらかに保つ働きがあり、水の不足や流れが滞ると曲げ伸ばしがしづらくなり、柔軟性が低下します。
実は、ストレスや緊張によって気の巡りが悪くなっても柔軟性が低下するので、日々のリラックスタイムは重要です。
一日の疲れを癒やす入浴時間は有効に使いましょう。
一見、関係なさそうな不調だけれど…
漢方では全身のつながりを重視し、直接つながっていないように見える部位の不調も、身体からのサインととらえます。
次の不調や生活環境がみられたら、柔軟性低下に向かいやすいと考えてください。
□夜ふかし傾向で目がかすむ
□夜中によく足がつる
□爪にすじが入り、割れやすい
□ダイエットのために肉と魚を食べていない
□肌の乾燥、髪のぱさつきが激しくなった
□排尿の回数が減ってむくみが気になる
□職場が寒くて手足末端や腰が冷える
□気づくと青あざが出来ている
柔軟性を高めるおすすめストレッチとツボ押し
介護の動作以外の動きやツボ押しで柔軟性を維持しましょう。
椅子での股割とふくらはぎ伸ばし
椅子に浅く座った状態で両膝に手を乗せて左右に大きく開いていきます。股関節の柔軟性を保つのに有効。
足をもとに戻してから前に伸ばし、足首をゆっくり上下に動かします。膝下の前後の筋肉を伸ばすのに有効です。
肩関節まわし
肘を軽く曲げた状態で右腕を前に10回、後ろに10回、ゆっくりと回します。終わったら左腕も回しましょう。
胸の筋肉と肩甲骨の辺りをほぐすのに有効です。
ツボ押し:失眠(しつみん)、曲池(きょくち)
失眠は足裏、かかとの中央にあるツボ。首の後ろから背中、ふくらはぎ、かかとまで、背面全体の筋肉のこわばりを緩めます。
曲池は肘を曲げた時にできるくぼみにあるツボ。頭から首、肩、腕まで、上部の血行を良くしてこわばりを緩めます。
食事の際は、血を補い巡らせる食材を摂るように心がけましょう。
赤色や黒色の食材で血を補う
クコの実、プルーン、レバー、赤身の肉、人参、黒豆、黒きくらげなど
温める食材で血を巡らせる
生姜、シナモン、長ネギ、ニンニク、ニラ、羊肉など
血を補い巡らせる食材とおすすめホットドリンク
最後に、寒さでこわばった身体を緩めるホットドリンクをご紹介しましょう。
(材料)
紅茶 200cc
すりおろし生姜 小さじ1/2
すりおろし人参 大さじ2
ハチミツ 大さじ1
(作り方)
熱い紅茶にハチミツを加えてとかし、生姜と人参を加えて混ぜます。冷えてお腹の調子が悪い時にも有効なドリンクです。
これまでの漢方・養生の智慧をヒントに、介護に携わる皆さまが健康であられるよう願っております。
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今回は、介護職のための身体の柔軟性低下からの回復法について、薬日本堂漢方スクールの齋藤先生にご執筆いただきました。
身体への負担を軽減するためにも身体の柔軟性を高めましょう。身体が硬いなと感じられる方は、是非参考にされてください。
人は年齢とともに身体の柔軟性が低下していきます。そのために介護職ができることは何か、一緒に学んでみませんか?
この記事の執筆者
薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師
齋藤 友香理 Yukari Saito
東京理科大学薬学部卒業後、薬日本堂入社。10年以上臨床を経験し、平成20年4月までニホンドウ漢方ブティック青山で店長を務め、多くの女性と悩みを共有した実績を持つ。講師となった現在、薬日本堂漢方スクールで教壇に立つかたわら外部セミナーも担当し、漢方を学ぶ楽しさを広めている。また社員教育にも携わり、「養生を指導できる人材」の育成に励んでいる。また、「薬日本堂のおうち漢方365日」「薬膳・漢方検定 公式テキスト」など、書籍監修にも多く携わっている。
*薬日本堂漢方スクール https://www.kampo-school.com/
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