この度、老舗漢方専門店「薬日本堂」さんにご協力いただき、介護職に役立つ漢方に関する情報を発信することになりました。
第一弾は、【漢方スクール講師が教える】介護職のための『肩こり』解消法についてです。是非最後までご覧ください。
薬だけじゃない「漢方」
日本は世界的に見ても長寿国で、国内の高齢者人口の割合は年々増え続けています。
そんな中、これからの日本を支える基盤として注目を集めているのが「介護業界」。高齢化が進む中で、業界へのニーズはますます高まっています。
また、公衆衛生や栄養状態、ヘルスケアの改善によって、健康産業は成長の一途を遂げており、そんな中で近年漢方が見直されています。
漢方というと、漢方薬を服用するイメージする方も多いと思います。しかし漢方は、日々の生活の中で毎日を健やかに元気に過ごすための知恵の集合体のようなもの。
薬だけなく、不調をケアするためのライフケアや食材の選び方、心の持ちようなど、毎日の暮らしに取り入れられることも漢方といえるのです。
この連載では、老舗漢方専門店「薬日本堂」が運営する薬日本堂漢方スクール講師陣が、代表的な不調とその改善方法についてご紹介します。
介護士さんご自身の健康管理としても、ぜひお役立ていただければと思います。
3つのタイプ別肩こり
病名はつかないけれど、心や身体から発信される不快な症状を、漢方では「未病」といいます。
漢方では「未病」の段階で身体が示す不調のシグナルをしっかりとらえ、病気を予防し症状を繰り返さない身体をつくることを第一に考えます。
さて、今回のテーマは日本人の国民病ともいえる「肩こり」。
一般的に肩こりの原因は、ストレス、姿勢、運動不足や目の疲れといわれますが、介護職の皆様にとりましては、利用者様を介護する上で自分よりも大きな体格の方を抱えて移動させリハビリや入浴をさせることで肩まわりの筋肉に過剰な負担がかかったり、利用者様の記録を残すために長時間のデスクワークで同じ姿勢をとり続けたりすることも大きな要因と考えられます。
漢方では、慢性の肩こりを「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」の巡りが滞っているシグナルととらえ、「気」の巡りが滞っている「ストレス肩こり」、「血」の巡りが滞っている「血行不良肩こり」、「水」の巡りが滞っている「水たまり肩こり」に分けて考えます。
①ストレス肩こり:「気」の巡りが悪いタイプ
後頭部から首、肩にかけてのこりはストレスや緊張が原因で、エネルギーである「気」の巡りが悪くなっているタイプです。
頭痛やイライラ、憂鬱を伴うケースも多くあります。
②血行不良肩こり:「血」の巡りが悪いタイプ
肩をさわるとガチガチに硬くなっていて、押すと痛みを感じるのは栄養の液体である「血」の巡りが悪いタイプです。
身体の冷えや長時間の同じ姿勢が原因で、血行不良となり肩のまわりがうっ血し不快感が生じます。
③水たまり肩こり:「水」巡りが悪いタイプ
肩がこっているという自覚はあるのに、さわると柔らかい場合は体内の水分である「水」の巡りが悪いタイプです。
肩全体が重苦しいのが特徴で、主に胃腸の不調が原因で水分代謝が低下して体内に余分な水分がたまるために起こります。
肩こりタイプチェック
まずは自分の「肩こりタイプ」を知り、滞った「気・血・水」の巡りを良くしていくことが、肩こり解消の大きな鍵になります。まずは、チェック表でご自身の肩こりタイプを探り、ご自身のタイプに合わせてこまめにケアしていきましょう。
ストレスタイプの方は、気分の鬱積を解消して筋肉の緊張をゆるめることがポイントです。
アロマやハーブティーなど好みの香りで気を巡らせ、ストレスをため込まないようにしましょう。
趣味やスポーツでストレス発散、気分転換するのもよいでしょう。食材では、セロリや春菊など香り豊かな野菜や柚子やレモンなど柑橘類を取り入れましょう。
気が高ぶって肩に力が入るときはミントティーもおすすめです。お仕事の休憩中にも手軽に試せます。
血行不良タイプの方は、冷やさないようにすることがポイントです。
入浴は湯船にゆったり浸かり身体を温め血行を良くしましょう。ヨモギを入れた薬草風呂は身体を芯から温めてくれます。
同じ姿勢が長時間続いた時は、首や肩を回したりストレッチで身体を伸ばすなど、こまめに心と身体の緊張をほぐしましょう。
たまねぎやニラ、生姜などの辛味の食材や黒酢など、血の巡りが良くしてくれる食材です。
水たまりタイプの方は、胃腸の疲れを解消して水分代謝を整えることがポイントです。
水分(果物・飲酒)の摂りすぎに注意するのはもちろん、冷たいもの、生もの、脂っこいもの、甘いものはできるだけ控えましょう。
ウォーキングなどジワジワ汗をかく運動や半身浴が効果的です。食材では、小豆や黒豆、冬瓜など豆類・ウリ科の食材が水巡りを良くします。
ハトムギは体内にたまった余分な水を追い出してくれますので積極的に活用したい一品です。
ツボ押しもおすすめ
肩こりには運動が有効ですが、多忙なためなかなか運動する時間がとれないという方には、ツボ押しもおすすめです。
介護の仕事は、始終緊張を強いられ筋肉をゆるめるヒマなどないかもしれませんが、息を吐くことで筋肉や神経はゆるみますので心がけるようにしましょう。
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薬日本堂が運営する情報サイト【漢方ライフ】
ボディメカニクスで介護の負担軽減
老舗漢方スクールの山吹先生のコラムはいかがでしたか?
普段の生活で取り入れやすいものから、是非お試しいただければ幸いです。
漢方以外にも、介護職の身体の負担軽減に効果的なものとして、ボディメカニクスを活用した介護があります。
ボディメカニクスを活用した介護を取り入れると、介護する側の安全と負担軽減に有効なんですよ。
これから介護を学びたい未経験者や、実務経験はあるけれど、介護技術を論理的に学んだ経験がない、正解がわからないという方には、初任者研修をオススメします。
初任者研修では、介護の基礎知識や、ボディメカニクスを活用した介護技術を学ぶことができます。
仕事を長く続けるためには、あなた自身の身体が健康でなければなりません。この機会に是非初任者研修で介護を学んでみませんか?
この記事の執筆者
薬剤師・薬日本堂漢方スクール講師
山吹 育恵 Ikue Yamabuki
病院勤務を経て、漢方の健康観、生命観に興味を持ち1990年薬日本堂に入社。店舗において20年の漢方相談と店長を経験。現在はその臨床経験を活かし、薬日本堂漢方スクール(*)のコースやワンデイセミナーを担当する他、社内相談員の育成支援に携わる。
*薬日本堂漢方スクール https://www.kampo-school.com/
自分の健康は自分で守り、自分で作る「漢方・養生ライフ」がテーマ。気軽に参加できるワンデイセミナーから、資格取得を目指した本格的に学べるコースまで、さまざまな講座をご用意。オンライン講座も充実しています。