介護事務の仕事に興味があるものの、「資格が必要なのか分からない」「未経験でも大丈夫?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。介護事務は、介護施設やサービス事業所の運営に欠かせない事務職であり、特に介護保険制度に基づく請求業務を担う専門性の高いポジションです。
本記事では、湘南国際アカデミーの現場視点をもとに、介護事務の仕事内容や代表的な民間資格、資格を持つことで得られるメリットまでをわかりやすく解説します。再就職やキャリアチェンジを目指す方にとって、介護事務資格の取得は大きな一歩になるかもしれません。
介護事務の主な仕事内容
介護事務は、介護に関する事務手続きを中心に多様な業務を担う仕事です。主に介護施設で勤務します。介護のサービスがスムーズに提供されるよう、現場を支える縁の下の力持ちとして欠かせない役割を果たしています。
ここでは、介護事務の具体的な仕事を紹介します。
窓口・電話対応業務
介護事務の仕事の一つが、施設の窓口で来訪者や電話の対応をすることです。
利用者や家族、医療関係者、業者などからの問い合わせに対して、状況に応じて適切に担当者へ取り次ぐか、自身で対応します。訪問者が来たときは応接室への案内や飲み物の用意なども行います。
勤怠・労務管理業務
職員のシフト作成や勤務時間の管理、給与計算などの勤怠管理も介護事務が行うことがあります。また、新規採用者の労働条件通知書作成や社会保険の手続きなど、労務に関する事務作業を担当するケースもあります。
レセプト作成(介護報酬請求業務)
介護事務のメイン業務と言えるのが、介護報酬の請求に関わる書類作成です。介護サービスの利用料は、利用者が1~3割を負担し、残りを自治体が支払います。レセプト(介護給付費明細書)を正確かつ期限内に作成し、市町村や保険団体に提出するのも、介護事務の仕事です。報酬請求は介護施設の経営に直結するため、ミスがないよう細心の注意が求められる仕事でもあります。
備品・設備管理業務
施設内で使用する介護用品や消耗品の在庫管理、発注業務も介護事務が行います。必要な物資を切らさないように注意しつつ、状況に応じて発注をします。さらに、施設内の設備が壊れた場合には、業者への修繕依頼や予算の調整なども担当し、現場スタッフと協力して問題解決にあたります。
利用者請求書作成・ケアマネジャーサポート業務
介護報酬の請求に加え、利用者に対する請求書の作成も介護事務の重要な業務です。また、介護施設によってはケアマネジャーの補助として、介護保険に関する管理業務や資料作成を担当する場合もあります。
介護事務に関する資格の種類
介護事務に関する資格は複数の種類があり、民間資格が中心です。どの資格も介護事務に必要な知識やスキルを証明できるもので、それぞれ特徴や試験内容が異なります。代表的で取得しやすいおすすめの介護事務に関する資格を紹介します。
介護事務管理士
介護事務管理士は技能認定振興協会が認定する資格で、介護施設での受付、会計、そしてレセプト作成に必要な知識とスキルがあることを証明します。試験は、法律や介護保険のルールを問う学科試験と、実際に作成したレセプトから間違いを見つける実技試験から成り立っています。
合格率は比較的高いため、介護事務初心者も挑戦しやすいのが魅力です。受験資格はなく、誰でも申し込めます。講座や通信教育が充実しており、基礎からしっかり学べる環境も整っています。
ケアクラーク
ケアクラークは日本医療教育財団が運営する資格で、介護報酬請求の実務能力や社会福祉制度に関する知識があることを証明します。学科試験は選択式で25問、実技試験ではレセプトの作成問題が出題され、実務に即した内容になっています。受験は全国各地で可能で、年齢や経験に関係なく誰でも挑戦できます。
合格基準は学科・実技それぞれ70%以上の得点で、しっかり準備すれば合格を狙いやすい資格です。通信講座や通学講座も充実しているため、働きながら学びたい人にもおすすめです。
介護報酬請求事務技能検定
介護報酬請求事務技能検定は、日本医療事務協会が主催する資格で、介護報酬の請求事務を正確に行うための知識と技術を認定します。受験資格は、同協会の介護事務講座を修了していることが条件です。試験は学科と実技に分かれ、明細書作成や正誤問題を通じて実務力を問われます。合格率は約80%と高く、講座でしっかりと学んでいれば合格しやすい試験です。
介護事務実務士
介護事務実務士は、医療福祉情報実務能力協会が認定する資格で、介護報酬請求に関する実務能力を幅広く証明します。試験は指定校での団体受験が基本で、学科試験では介護保険法や関連法規、介護報酬請求に関する内容が出題されます。実技試験では、居宅サービスや施設サービスのレセプトの作成が課題として出されます。
合格率は60~70%程度で、資格取得の難易度はそれほど高くはありません。また、指定された通信講座を修了すれば無試験で資格が取得できます。
介護保険事務士
介護保険事務士は、介護保険の保険金請求事務に関する専門資格で、介護保険制度の知識を深く理解していることを示します。主に大学や専門学校で受けられる所定の講座を修了した人が対象で、受験資格のハードルはやや高めです。
資格取得には専門的な学習と実務知識が必要で、病院や介護施設で保険請求業務を担当するプロフェッショナルとして評価されます。より専門的な知識を身に付けたい人におすすめです。
介事管理専門秘書検定資格
介事管理専門秘書検定資格は、日本能力開発推進協会が認定する資格で、介護保険制度や介護報酬請求の知識に加え、利用者対応やケアマネジャーのサポート業務に必要な技術を証明します。
試験は認定教育機関で指定されたカリキュラムを修了した人が受験可能で、介護現場での幅広い知識と実践力を身に付けたい人に適した資格です。資格取得者は、介護事務の専門性に加え、秘書的なスキルも持つ人材として評価されます。
介護保険事務管理士
介護保険事務管理士は、主に医療や介護サービスの提供施設で求められる介護事務の専門資格です。受験には指定された教育機関で「介護保険制度論」や「介護報酬算定実務」などの科目を履修する必要があり、専門性の高い知識が問われます。
年に2回試験が実施され、取得できれば介護保険請求事務のプロフェッショナルとして、病院や介護施設で高く評価されます。より専門的な分野でキャリアを積みたい人におすすめの資格です。
介護事務に関する資格を取得するメリット
介護事務に関する資格を持つことは、子育てが一段落した主婦が社会復帰を目指すうえで大きな助けになります。介護事務は資格がなくても働けますが、資格を持つことで仕事の幅が広がり、安心して長く続けられる職場選びが可能になります。最後に、資格取得のメリットを3つ紹介します。
再就職で有利になりやすい
介護事務に関する資格があれば、未経験だったとしても仕事の知識やスキルがあることを証明できます。子育て期間のブランクがある人でも、資格があることで「即戦力」として採用されやすくなり、再就職のハードルが下がります。また、資格取得講座には就職支援サービスが付いているものもあり、求人探しや面接のサポートが受けられるため安心です。
家庭や将来に役立つ介護保険の知識が身に付く
介護事務の勉強を通じて介護保険制度の仕組みを学べるため、もし家族が介護を必要とするときにも役立ちます。例えば、親や配偶者が介護サービスを利用する際、どのように申請や費用負担が行われるかを理解していると安心できるでしょう。資格取得は、自分自身や家族の将来の備えにもつながる、生活に根ざした学びと言えます。
介護業界でのキャリアアップやステップアップに役立つ
資格の取得を通して介護や福祉の基礎知識が身に付くことで、将来的にケアマネジャーや介護職の資格取得、管理職への挑戦も目指せます。子育てを終えた今、新たなキャリアやスキルアップのスタートとして大いに活用できます。
FAQ|介護事務資格に関するよくある質問
介護事務の資格取得や就職に関して、受講生の皆さまから多く寄せられる質問をまとめました。初めて介護事務の学習を考えている方にも分かりやすくお答えします。
- Q1.介護事務は無資格でも働けますか?
- A
はい、資格がなくても働くことは可能です。ただし、介護報酬請求などの専門的な業務を行う場合は、実務で必要な知識が求められるため、民間資格の取得が就職や業務習得の大きな助けになります。
- Q2.介護事務資格の中でおすすめはどれですか?
- A
初学者には「介護事務管理士」や「ケアクラーク」など、合格率が高く教材やサポート体制が整った資格がおすすめです。就職先のニーズや自分のライフスタイルに合わせて選ぶと良いでしょう。
- Q3.医療事務と介護事務の資格は違いますか?
- A
はい、業務内容と制度が異なるため、資格も別になります。医療事務は医療保険制度に基づくレセプト業務、介護事務は介護保険制度を扱います。介護業界で働くことを前提とするなら、介護事務資格の取得が望ましいです。
- Q4.資格取得にどれくらいの学習期間が必要ですか?
- A
多くの通信講座では、標準学習期間が2〜4カ月程度です。仕事や家庭と両立しながら学べるカリキュラムが整っているため、無理なく進められます。実務経験がある方は短期間での取得も可能です。
介護事務に関する資格を取得して安定したキャリアを目指そう
この記事では介護事務の仕事内容や代表的な資格の種類、資格取得によるメリットについて解説しました。介護事務に関する資格の取得は、専門知識を身に付けることで仕事の幅が広がるだけでなく、再就職する際のアピールポイントにもなります。ぜひ資格取得を目指して、新しいキャリアの一歩を踏み出してみてください。
湘南国際アカデミーでは、介護業界で働く方々を対象に、実務に直結する研修や資格講座を多数開講しています。介護事務に限らず、初任者研修や実務者研修、介護福祉士対策まで、一人ひとりの目標に合わせてサポート体制を整えております。
これから新しいキャリアを目指したい方、将来に備えてスキルを身につけたい方は、ぜひ湘南国際アカデミーがあなたの一歩を全力で応援します。
湘南国際アカデミーでは、介護関連資格の教育・職業紹介を通じ、「介護をする側のQOL向上」をテーマにイベントや研修を企画し、受講生や就労先企業から厚い信頼を獲得。これまで延べ約1万人を支援する中でグリーフケアの重要性を痛感し、仕事と人を結ぶだけでなくケアの視点を含む総合的なサポートを目指している。現在は上智大学グリーフケア研究所でさらなる学びを得ながら、各企業向け「事業所内レベルアップ研修」の企画・運営にも携わり、介護とキャリアの両面から多面的に活動を展開している。
