この記事は連載コラム「はじめまして!ここからはじまる障害者支援の世界」の第2回です
「障害のある方ってどんな人たちでしょうか?」
そう聞かれたとき、皆さんの頭の中にはどんなイメージが浮かぶでしょうか。「困っている人」「不自由な生活をしている人」「助けが必要な人」——そんなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。
たとえば「車いすの人」「目が見えない人」「知的障害の人」など、具体的な姿をイメージする方もいると思います。たしかに、これらは「障害」と呼ばれるものの一部です。
でも実は、世界では「障害」についての考え方が大きく変わりつつあります。
当記事では、これらの新しい視点を知ることで、障害者支援の仕事の意味がまったく違って見えてくることも含めて一緒に学んでいきましょう。
「障害」の2つのとらえ方:医学モデルと社会モデル
最近では「障害はその人の中だけにあるのではなく、社会との関係の中にある」という考え方が世界中に広がっています。
専門的な言葉でいうと、「本人の中に障害がある」と考えることを「医学モデル」、「社会に障害がありそれに困っている」と考えることを「社会モデル」といいます。
【医学モデル】障害は「その人自身の心身の問題」→ 本人が治療・訓練によって適応していくべきもの
【社会モデル】障害は「社会のバリアによって生まれる問題」→ 社会の側が変わっていくべきもの
この「社会モデル」の考え方は、日本の法律にも反映されています。障害者基本法(第2条)では、障害者を「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義しており、「社会的障壁」という概念が明記されています。また、2006年に国連で採択された障害者の権利に関する条約でも、障害の社会モデルの考え方が国際的な基準として採用されています。
車いすの人の例で考えてみる
車いすの人が階段を上れなくて困っています。このとき、どう考えるかによって見え方がまったく変わります。
医学モデルの視点:「車いすだから困っている」「身体障害で階段を上れないから困っている」
社会モデルの視点:「エレベーターがないから困っている」「手伝ってくれる人がいないから困っている」「バリアフリーになっていないから困っている」
つまり、本人に障害があるのではなく、社会に障害があり、それで困っているのが「障害者」であるという考え方です。
目が見えない人は、手伝ってくれる人がいないこと、または音声案内がないことに困っている。知的障害の人は、まわりの人たちが知的障害を理解していないから、知らないから、困っている——そう考えることができます。
本人は何も問題はなく、ありのままでいいのです。社会が変わっていくこと・変えていくことが大切なのです。
研修中に泣き出した受講生のこと
私はこの医学モデル・社会モデルの話を研修でお伝えしているのですが、ある日の研修中に泣き出した若い女性の受講生がいました。
「何かよけいなことをいってしまい、傷つけてしまったかな」と思い、その場で「大丈夫ですか?」とたずねました。すると彼女は、こう話してくれました。「自分は軽度の知的障害をもっており、ずっと自分が嫌いで親を責めてきました。でも、今の話をきいて自分はなにも悪くなかったんだと、私に障害があるのではなく社会に障害があるから、わたしは今のままでいいんだといってくれているようで、うれしくて。」
おそらく、その場にいた多くの人が、実感として「障害とは何か?」のヒントをもらえたのではと感じました。

介護福祉士・保育士
この言葉は、私自身が障害の社会モデルを学んだときに感じたことと重なりました。「障害者を支援する」のではなく、「社会を変えていく仕事だ」という意識が、支援の質をまったく変えると今も感じています。
「できないこと」より「できること」に目を向ける
できないこと、人と違うことなど、ネガティブなことに目がどうしても向いてしまいます。それは、私も同じです。
でも、できないことではなく「できること・できていること」に目を向け、人と違うことを「その人にしか持っていない素敵なもの」と考えることができれば、同じ相手を見ても、世界がまったく違って見えてきます。
障害者の方への支援は、困っている人のお手伝いをしているという面はもちろんあります。それと同時に、「社会を変えているんだ」という面も忘れないでほしいと思っています。
障害を「本人の中にある障害」と「社会の中にある障害」、この2つの考え方でとらえていく人が、ひとり、ふたりと増えていけば、少しだけ未来が輝きだす気がしてなりません。
障害・医学モデル・社会モデルに関するよくある質問
- Q1.医学モデルと社会モデル、どちらが正しいのですか?
- A
どちらか一方が「正しい」というわけではなく、両方の視点が必要です。医療的なケアや治療が必要な場面では医学モデルの視点が不可欠ですし、生活支援や社会参加の場面では社会モデルの視点が重要になります。現在の障害者支援の現場では、両方を組み合わせた「ICF(国際生活機能分類)」という考え方が国際標準として使われています。ICFはWHOが2001年に策定したもので、障害を「心身機能・身体構造」「活動」「参加」という3つの側面と、「環境因子」「個人因子」の相互作用でとらえます。(参照:厚生労働省「ICFの概要」)
- Q2.社会モデルの考え方は、介護の現場でどう活かせますか?
- A
「この人はできない」ではなく「何があればできるか」という視点で支援を考えられるようになります。たとえば、コミュニケーションが難しい方に対して「どうすれば伝わるか」と環境や方法を工夫することが社会モデルの実践です。利用者の「できること」に着目し、自立支援・社会参加を促す姿勢は、介護職員初任者研修・実務者研修でも重視される考え方です。
- Q3.障害者支援の仕事をするうえで、この考え方を知っておく必要はありますか?
- A
はい、とても重要です。障害者総合支援法の基本理念には「共生社会の実現」が掲げられており、社会モデルの考え方が土台になっています。支援者がこの視点を持つことで、利用者を「できない人」としてではなく「社会のバリアに困っている人」としてとらえ直すことができます。それが、より質の高い支援と、利用者の自己肯定感につながります。
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2023年11月より湘南国際アカデミー専任講師として、初任者研修・実務者研修・介護福祉士受験対策講座及びガイドヘルパーや同行援護従事者養成研修など、障害福祉分野の研修を担当。
「福祉=幸せ」をテーマに、知識・技術に加えて「心」の大切さを重視し、一期一会の精神で受講生に寄り添っている。






