2024年4月から、認知症介護基礎研修の義務化が本格化しました。
神奈川県内で認知症介護実践者研修・リーダー研修を実施している湘南国際アカデミーにも、施設管理者や介護職員の方から、以下に関するご相談が増えています。
- 「うちの職員は対象になりますか?」
- 「入職後1年以内とはいつまで?」
- 「初任者研修を持っていれば免除ですか?」

介護福祉士
【監修者からのごあいさつ】
本記事は、介護福祉士として現場経験を持ち、デイサービス所長・相談員として職員育成や採用に携わってきた五味順(湘南国際アカデミー)が監修しています。制度の解説だけでなく、実際の現場で起きやすい課題も踏まえて整理しています。
【30秒でわかる】認知症介護基礎研修 義務化まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 本格義務化 | 2024年4月(経過措置終了) |
| 対象者 | 無資格で介護に直接従事する職員 |
| 受講期限 | 原則「入職後1年以内」 |
| 免除対象 | 初任者研修・実務者研修・介護福祉士等 |
| 受講方法 | 主にeラーニング(事業所経由申込) |
認知症介護基礎研修が義務化された背景は?
制度の目的
認知症介護基礎研修の義務化は、認知症ケアの最低水準をすべての現場職員で共有することを目的としています。
高齢化の進展により、認知症高齢者は増加傾向にあります。
一方で、無資格の職員が認知症の方と関わる場面も増えています。
基礎的理解がないまま対応すると、以下のようなリスクにつながる可能性があります。
- 不適切な声かけ
- 過度な制止や叱責
- 本人の尊厳を損なう関わり
義務化は「罰則」ではなく、事故予防とケアの質の底上げが本質です。

介護福祉士
【監修者コメント】
現場で所長として勤務していた際、認知症ケアに対する理解の差が、職員の不安や離職につながるケースを多く見てきました。基礎研修の義務化は、現場を守るための制度でもあると感じています。
いつから義務化?2024年4月の改正ポイント
制度上は2021年改定から段階的に進み、経過措置を経て2024年4月から実質的に義務化が本格化しました。
認知症介護基礎研修の受講に関するルールは、2021年4月の介護報酬改定を起点に「事業所が必要な措置を講じること」が求められるようになりました。ただし、現場の準備期間として経過措置が設けられ、すぐに全員が受講しなければならない運用ではありませんでした。
この経過措置が終了し、2024年4月以降は、対象となる職員を計画的に受講させることが事業所の運営上の前提になります。現場では「未受講でもとりあえず配置する」という曖昧な運用が許されにくくなり、採用・配置・教育の設計自体を見直す必要が出てきました。
重要なのは、制度の目的が「罰すること」ではなく「事故や不適切ケアを予防する仕組みづくり」である点です。受講の遅れは、現場の混乱だけでなく、職員本人の不安や離職にもつながりやすいため、早めに受講計画と期限管理を組み込むことが現実的な対策になります。
参考:厚生労働省PDF資料「令和3年度介護報酬改定の主な事項について」
受講が必要な対象者
原則として、介護保険施設・事業所等で“介護に直接携わる”職員のうち、医療・福祉系の資格を持たない人が対象になります。ここでは、受講を必要とする主な対象者や受講のルールを解説します。
無資格で介護に従事する職員が対象
対象となるのは、介護保険施設・事業所等で介護に直接従事する職員のうち、医療・福祉関係の資格を持たない人です。ここでいう「直接従事」は、身体介助だけでなく、見守り、移動の付き添い、トイレ誘導、食事の声かけなど、利用者の生活に影響する支援を含むと考えると判断しやすくなります。
勤務形態は常勤・非常勤、施設・居宅などを問いにくい点も要注意です。短時間勤務やスポット勤務でも、利用者対応に入るなら対象になり得るため、「雇用形態で除外できる」と思い込むと受講漏れが起きます。
現場での判断観点としては、利用者との接点が定常的か、介護記録に関与するか、介助の一部でも担うかを確認します。迷う場合は、職務分掌と実態を整理したうえで、自治体や指定の実施団体、運営指導での扱いも踏まえて慎重に確認するのが安全です。
入職後1年以内の受講ルール
新規採用(新卒・中途を問わず)の無資格者は、原則として入職後1年以内に受講させる運用が基本になります。現場で起きやすいのは「忙しくて後回しになり、気づいたら期限が迫る」ケースなので、採用時点で受講時期を内定させ、初期研修計画に組み込むのが確実です。
期限管理は、個人任せにせず事業所側で台帳化することが重要です。入職日、対象判定、申込日、受講開始日、修了日、修了証の保管先までを一連で管理すると、配置や監査対応でも説明がしやすくなります。
途中で部署異動や担当変更があっても、無資格のまま直接介護に入る可能性があるなら、受講計画は原則継続して考えます。逆に、完全に直接介護から外れる配置に変わった場合は対象性の再判定が必要になるため、異動時に必ずチェックする運用を作ると漏れを防げます。

介護福祉士
【監修者コメント】
採用担当として感じるのは、「受講計画を入職時に設計している法人」と「後回しにしている法人」では、職員定着率に差が出やすいという点です。義務化対応は、育成設計の見直しの好機でもあります。
受講が免除される人・資格
介護職員初任者研修など免除対象の資格
既に認知症ケアの基礎を学んでいるとみなされる以下表の資格・研修修了者は、受講が免除されます。
以下の表で免除対象になっている資格や研修修了者はそれぞれの資格や研修カリキュラムにて、認知症の理解や介護の基本を一定水準で学んでいるとみなされるため、認知症介護基礎研修の重複受講を避ける趣旨です。
| 資格 | 免除可否 |
|---|---|
| 介護職員初任者研修、実務者研修、介護福祉士、介護支援専門員、看護師・准看護師、医師、薬剤師、歯科医師、歯科衛生士、介護職員基礎研修課程修了者、ホームヘルパー1級修了者・ホームヘルパー2級修了者、社会福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、生活援助従事者養成研修修了者、介護に関する入門的研修修了者など | 免除 |
| 認知症サポーター養成講座修了者 | 原則免除にならない |
注意点として、認知症サポーター等の啓発的な講座や、民間団体の資格は、原則として免除の根拠にならないことが多いです。現場では「知識があるか」ではなく「制度上の免除要件に該当するか」で判断されるため、最終確認は所属事業所と自治体の案内に沿って行ってください。
受講しないとどうなる?事業所・本人への影響
未受講のまま配置すると、事業所側の運営上のリスクや、本人の業務範囲の制限につながる可能性があります。
事業所側のリスク
☑ 運営指導で指摘
☑ 教育体制不備と判断
☑ 是正対応が必要になる可能性
本人への影響
☑ 配置制限
☑ シフト制限
☑ 現場経験の機会減少
さらに重要なのは、事故やトラブルの予防という観点です。認知症の方は、出来事自体は忘れても不安や恐怖といった感情が残りやすいとされ、関わり方ひとつでBPSDが強まることがあります。研修を受けずに現場に出ることは、本人の尊厳だけでなく、職員のストレスやクレーム対応の増加にもつながり得るため、早期受講は現場双方の負担軽減になります。

介護福祉士
【監修者コメント】
認知症の方は出来事よりも感情が残りやすいと言われています。声かけ一つで安心にも不安にもなる。その重みを理解することが、基礎研修の第一歩です。
認知症介護基礎研修の内容(カリキュラム)
認知症介護基礎研修のカリキュラムは入門者向けに、認知症の基礎理解から関わり方、チームでの支援の考え方までを短時間で学べる構成です。
(湘南国際アカデミー)
| 科目 | 目的 | 内容 | 時間数 | 区分 |
|---|---|---|---|---|
| 認知症の人の理解と対応の基本 | 認知症の人を取り巻く現状、症状に関する基礎的な知識を学び、認知症ケアの基礎的な技術に関する知識とそれらを踏まえた実際の対応方法を身につける。 | ・認知症の人を取り巻く現状 ・具体的なケアを提供する時の判断基準となる考え方 ・認知症の人を理解するために必要な基礎的知識 ・認知症ケアの基礎的技術に関する知識と実施上の留意点 | 150分程度 | 自宅学習 (eラーニング) |
基礎研修は、知識を増やすだけでなく、現場で起きやすい困りごとを「理解と工夫」で整理できるようにする設計です。たとえば、徘徊や帰宅願望、怒りっぽさなどの行動は、単なる問題行動ではなく、環境の変化や不安、体調不良、伝えたいことが伝わらないことが背景にある場合があります。研修では、その見立ての基本を学びます。
認知症ケアで一貫して重視されるのが、尊厳の保持と意思決定支援です。できないことを増やす関わりより、できることを支える関わりを選ぶことが、結果として安全にもつながります。短時間の研修でも、この判断軸を持てるようになると、対応のブレが減り、チームの連携がしやすくなります。
受講形式がeラーニング中心の場合でも、単なる視聴で終わらず、理解確認のテストや振り返りが組み込まれるのが一般的です。修了後に現場で実践するには、学んだ内容を申し送りやケア会議の言葉に落とし込むことが大切で、事業所側が復習の機会やOJTの観点を用意すると効果が定着します。
研修で学ぶこと(認知症ケアの基礎)
研修では、認知症の定義や原因疾患(アルツハイマー型、血管性、レビー小体型、前頭側頭型など)の基礎を押さえたうえで、中核症状とBPSDの違い、生活への影響を学びます。大切なのは用語暗記ではなく、「症状に見える行動の背景に何があるか」を考える入口を作ることです。
ケアの中核として、尊厳の保持、偏見や誤解の解消、意思決定支援、コミュニケーションの工夫、環境調整(音・光・動線・掲示の工夫など)、健康管理と体調変化の気づき、家族支援、チームケアの基本が扱われます。特に、本人が感じた不安や屈辱が後に残りやすいという前提に立つと、声かけのトーンや否定しない関わりが重要だと理解しやすくなります。
eラーニングの場合は、章ごとの動画視聴に加え、復習問題や確認テストで理解を定着させる流れが一般的です。修了証が発行される仕組みが多いため、事業所では修了証の回収・保管、受講履歴の管理までを含めて運用設計しておくと実務がスムーズです。
湘南国際アカデミーでは、認知症ケアに必要な尊厳の保持や意思決定支援などの考え方を、実務に活かせる形で学べるよう構成されており、初学者にも分かりやすいと好評です。
受講方法と申込手続き(eラーニング)
多くの自治体でeラーニングが基本となり、申込は個人ではなく事業所を通じて行うケースが一般的です。
受講の入口は、都道府県や指定都市など自治体が案内する実施団体の情報確認から始まります。実施団体が複数ある地域や、年度ごとに受付期間が決まっているケースもあるため、採用が多い時期に合わせて早めに枠を確保するのが現場では重要です。
申込は、受講者本人ではなく事業所が取りまとめて行う運用が一般的です。これは、対象者の判定、受講期限の管理、受講費の支払い、修了証の保管といった実務が、事業所責任で整合する必要があるためです。個人で勝手に受けた研修が制度上の要件を満たさないと、結局やり直しになるリスクもあります。
eラーニングは業務と両立しやすい一方、受講の先延ばしが起こりがちです。勤務時間内での受講可否、端末や通信環境、受講中の中断ルール、修了までの締切を事業所が明確にすると、期限超過や未修了を防げます。
研修時間・所要日数
所要時間は、半日から1日程度で修了できる設計が一般的です。eラーニングでは、動画視聴が約150分程度に加えて、復習問題や確認テストの時間が必要になります。まとまった時間が取りにくい場合でも、分割して進められる方式のことが多いです。
集合型(オンライン配信を含む)で実施される場合は、講義と演習を合わせて計6時間程度が目安になります。演習では事例を使って、声かけや環境調整、危険予測などを具体化できるため、現場での再現性が上がりやすいのが特徴です。
費用の目安
費用は自治体や実施団体により差があり、無料から数千円程度が多い傾向です。受講料が低額でも、テキスト代が別途必要な場合や、支払い方法が振込のみなど手続きが発生することがあります。
誰が負担するかは事業所の方針によって異なります。事業所負担にすることで受講促進につながりやすい一方、個人負担の場合は給与控除の扱い、立替精算のルールなどを明確にしないとトラブルになりがちです。
実務上は、費用よりも「未受講による配置制限や運用リスク」のほうが影響が大きくなります。年度計画として教育費を確保し、採用人数の見込みに応じて予算化しておくと、受講遅れを防ぎやすくなります。
介護職員初任者研修との違い
認知症介護基礎研修は“認知症ケアに特化した入門”、介護職員初任者研修は“介護全般の基礎を体系的に学ぶ”点が大きな違いです。
| 項目 | 認知症介護基礎研修 | 介護職員初任者研修 |
|---|---|---|
| 目的 | 認知症ケア特化 | 介護全般の基礎 |
| 時間 | 半日〜1日 | 約130時間 |
| 対象 | 無資格者の最低基準 | キャリアの土台 |
認知症介護基礎研修は、無資格者が認知症の方と関わるために必要な最低限の理解と対応を短時間で学ぶ位置づけです。現場で起きやすい困りごとに直結しやすく、早期に不安を減らす効果があります。
一方の介護職員初任者研修は、介護の理念、身体介護の基本、コミュニケーション、生活支援、制度理解などを幅広く体系立てて学びます。認知症ケアも範囲に含まれるため、キャリアの土台としては初任者研修のほうが守備範囲が広いのが特徴です。
実務の観点では、将来的に初任者研修を受ける予定があるなら、基礎研修との重複が一部発生する可能性があります。ただし、現場で今すぐ認知症ケアが必要で、短期間で最低限の軸を作りたい場合は基礎研修が有効です。
事業所としては、採用時点で本人のキャリア志向も聞き取り、基礎研修の受講と初任者研修への移行を一連の育成計画として設計すると定着につながります。
研修修了後のステップアップ(実践者・リーダー・指導者)
基礎研修はスタート地点で、より専門性を高める上位研修(実践者研修・リーダー研修・指導者)へ段階的に進む道があります。
認知症介護基礎研修で得られるのは、現場での基本姿勢と最低限の共通理解です。しかし、認知症ケアは個別性が高く、症状や生活背景によって支援の組み立てが変わります。より質の高いケアを実現するには、アセスメントやケア計画、チームマネジメントを深める上位研修が重要になります。
代表的な上位研修として、認知症介護実践者研修、実践リーダー研修、指導者養成研修があります。実践者研修では、理念理解に加えて、事例を通した実践力やアセスメント、職場実習などを通じて現場適用力を高めます。
リーダー研修や指導者養成では、個人の技術だけでなく、チームのケアを整える力が問われます。認知症ケアは一人のうまさよりも「誰が対応しても安心できる一貫性」が成果に直結するため、基礎研修修了後に、事業所内で役割に応じたステップアップを用意することが、結果として利用者の安心と職員の負担軽減につながります。

介護福祉士
【監修者コメント】
基礎研修は入口です。実践者研修では「見立てる力」、リーダー研修では「チームを整える力」を養います。現場の質を本気で高めたい場合、段階的な研修設計が欠かせません。
FAQ|認知症介護基礎研修の義務化に関するQ&A
対象範囲や免除可否、期限の考え方など、現場でよくある疑問をQ&A形式で整理します。
- Q1.認知症介護基礎研修の受講義務は、パートや短時間勤務でも対象になりますか?
- A
雇用形態ではなく、介護に直接携わるかどうかで判断されます。短時間でも利用者対応に入るなら対象になり得るため、職務内容と実態で確認が必要です。
- Q2.入職後1年以内とは、いつを起点に数えますか?
- A
基本は入職日を起点に考え、事業所側で期限管理するのが安全です。申込日ではなく修了日が基準になる運用もあり得るため、自治体・実施団体の要項に合わせて余裕を持って計画してください。
- Q3.認知症サポーターを持っています。免除になりますか?
- A
一般的には免除要件にならないことが多いです。免除は制度上定められた資格・研修修了に基づくため、最終的には所属事業所と自治体の案内で確認し、根拠書類が残る形で整理しましょう。
認知症介護基礎研修の義務化で押さえるポイントまとめ
最後に、対象者・期限・免除・受講手続きの要点をチェックリスト的に振り返り、事業所と本人が取るべき対応をまとめます。
義務化の要点は、介護に直接携わる無資格者に対して、認知症ケアの基礎を共通言語として身につけさせることです。制度の狙いは現場の最低水準の底上げであり、事故や不適切ケアの予防、職員の不安軽減にもつながります。
実務では、2024年4月以降を前提に、対象者の判定と期限管理を仕組み化することが重要です。新規採用者は入職後1年以内の受講を基本に、採用時点で受講計画を組み込み、修了証の回収・保管まで含めて運用を整えると漏れを防げます。
免除対象は初任者研修や介護福祉士、看護師などが代表例ですが、自治体や要項で確認し、自己判断は避けてください。受講方法はeラーニングが主流で申込は事業所経由が多いため、受付時期、費用負担、勤務時間内の受講ルールを決めておくと、現場が無理なく義務化に対応できます。
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現在はキャリアアドバイザーとして、求職者の就労サポートや企業支援を担当。採用担当経験者としての豊富な経験を活かし、求職者の強みを引き出す面接対策にも定評がある。介護業界の発展に貢献するべく、求職者・企業双方の支援に尽力。
プライベートでは息子と共にボーイスカウト活動を再開し、奉仕活動を通じて心を磨くことを大切にしている。
また、湘南国際アカデミーが発行する「介護業界マンスリーレポート」の企画・監修にも関わり、介護事業所の人材課題や育成ニーズについて、継続的に現場情報の収集・分析を行っている。






