介護業界は、高齢化社会を背景に年々需要が高まっているにもかかわらず、人手不足が深刻な状態にあります。特に2025年や2040年といった節目の年に必要となる介護職員数は大幅に増加する見込みで、現状のままでは必要な人材が追いつかない恐れがあります。
また、都市部に比べて地方ではさらに求人倍率が低かったり、逆に都市部では求人倍率が高過ぎて人材確保が困難になるなど、地域による格差も問題を複雑にしています。厚生労働省が打ち出している処遇改善策や外国人材の受け入れ拡充策は進みつつあるものの、人材の流動性や離職率の高さも依然として課題です。
※本記事は、厚生労働省の統計データ「介護人材確保に向けた取組」と、湘南国際アカデミーが現場ヒアリングを基に発信する「介護業界マンスリーレポート」の一次情報をもとに構成しています。
介護人材不足の現状:最新データと将来予測
まずは、どの程度の人手不足が進んでいるのか、国内の統計データや今後の需要推移を確認していきましょう。
厚生労働省の推計によると、2040年には介護職員が約270万人以上必要とされる一方、実際にはそれを大きく下回る人材しか確保できない可能性が高いといわれています。特に都市部では求人倍率が高く、東京都では4倍以上の倍率とも報告されており、事業所間で人材獲得競争が激化している状況です。一方で地方では高齢化率が進む地域が多く、急激に需要が増加する一方、若年層の人口流出が顕著なため担い手が不足しがちとなっています。
経済的支援に加えて、イメージアップ施策や教育支援プログラムなど、様々な角度から人材を呼び込む取り組みが必要とされています。
2025年・2040年問題とは?需要と供給のギャップ
2025年には団塊の世代がすべて75歳以上となり、医療や介護サービスの需要が急激に高まります。この時期を支えるための介護人材が不足することは以前から叫ばれていましたが、2040年にはさらに大きな波が来ると予想されています。高齢者人口の増加ペースに対し、若年層の数が減少しているため、介護に従事する人材が追いつかないのです。
地域差が顕著に現れる背景
介護職員の不足度合いはさらに地域差が大きく、都市部では求人が多いものの人材需要が旺盛で採用コストも上昇傾向です。一方、地方では高齢化率が都市部よりも高いにもかかわらず、若年層や求職者が集まりにくく、慢性的な人手不足となりがちです。
このような地域差の背景には、経済格差や人口動態の違いに加え、事業所の待遇やキャリア支援の質のばらつきも影響しています。地域ごとのニーズや環境に合った採用戦略や助成制度の設計が求められる時代に突入しました。
公的データと現場一次情報から見る介護人手不足の実態
厚生労働省の統計データは、介護業界全体の人手不足を俯瞰するうえで重要な指標となりますが、実際の現場で起きている変化や課題は、数字だけでは把握しきれない側面もあります。
湘南国際アカデミーでは、介護事業所や受講生、採用担当者への継続的なヒアリングや研修実施データをもとに、**「介護業界マンスリーレポート」**として独自の一次情報を定期的に発信しています。
このレポートでは、求人動向、人材定着の課題、現場で求められるスキルの変化など、国の統計では見えにくい実務レベルの傾向を整理しています。
実際に、マンスリーレポートでは
- 「人手不足そのもの」よりも育成・定着に課題を感じている事業所が増えていること
- 採用よりも既存職員の離職防止や教育体制整備に関心が移っていること
といった現場の声が多く確認されています。
このように、本記事では厚生労働省の公的データに加え、湘南国際アカデミーが蓄積してきた現場起点の一次情報も根拠としながら、介護人材不足の実態と今後求められる対策を整理しています。
▶ 参考:湘南国際アカデミー
介護業界マンスリーレポート
https://si-academy.jp/monthly-report-on-nursing-care-industry/
介護の人手不足がもたらす影響
人手が足りない状況での介護サービスは多方面へ深刻な影響を及ぼす可能性があります。
十分な人数を確保できないと、スタッフ一人ひとりの業務負担が過度に増加します。その結果、業務効率の低下だけでなく、メンタルヘルスの問題にも発展しやすくなり、離職を招いて人手不足がさらに深刻化する恐れがあります。
また、介護事業所が経営難に陥ることで、地域の介護インフラが損なわれるリスクも考えられます。こうした悪循環を断ち切るためには、待遇面の改善やサービスの質向上だけではなく、抜本的な対策と支援が必要です。
サービス品質の低下や介護事故リスク
スタッフが不足すると、一人ひとりの利用者に十分なケアを行う時間が確保しづらくなります。特に身体介助が必要な方々への対応がおろそかになると、転倒事故や医療的ケアの遅れなど、リスクが高まる可能性があります。
さらに、勤務体制が不十分な状態が続くと職員間のコミュニケーション不足も発生しがちです。その結果、情報共有の遅れやミスが重なり、サービスの品質低下を招く原因となり得ます。
事業所の倒産増加や経営リスク
収支のバランスが合わない状態が続くと、事業者は運営の継続が困難になります。特に人件費が大部分を占める介護業界では、人手を減らせばサービス品質が落ち、増やせば人件費が上がるというジレンマに直面しがちです。
このジレンマを解消できないまま赤字が続くと、事業縮小や倒産に追い込まれるケースが出てきます。その結果、利用者が行き場を失うなど、地域社会にも大きな影響が及ぶのです。
人手不足の原因・背景を探る
介護業界の人手不足には複合的な要因が存在し、それらが相互に絡み合って問題を深刻化させています。
景気や社会情勢の変化に伴い、介護現場の働き方や給与水準には大きな影響が及びます。介護職の仕事は重労働であり、人間関係のトラブルや心身のストレスが原因で離職する人も多いです。これらの要因を改善するには、個々の施設の努力だけでなく、制度や評価のあり方を含めた社会全体での取り組みが不可欠です。
また、若年層の介護現場離れや、他の産業への転職が進むといった状況も指摘されています。特にサービス業やIT業界などとの雇用競争が激化しているため、介護の魅力や社会的意義を強く発信し、人材を呼び込むアプローチが求められています。
少子高齢化と新たな人材確保の難しさ
日本全体の少子化により、介護業界に限らず労働人口自体が減っているため、人材確保が一段と難しくなっています。同時に、高齢化が急速に進むことで介護サービスの需要は右肩上がりとなり、需給バランスが崩れやすい状況です。
若年層の確保といっても、介護職に対する負のイメージが根強く残っていることがマイナスに働きます。そのため、働きやすい環境づくりや職業としての魅力を具体的に示す取り組みが必須です。
介護職の給与と社会的評価のミスマッチ
介護職は人の生活や命を支える重要な仕事でありながら、給与や社会的評価が他の職種ほど高くないという実態があります。このミスマッチが原因となり、介護業界に進む若者が少なくなり、不足に拍車をかけているのです。
離職率の高さと人間関係の課題
介護職の離職理由として多く挙げられるのが、人間関係トラブルやコミュニケーション不足です。ケアの現場ではチームワークが欠かせないため、スタッフ間の連携が上手くいかないと業務がうまく回らなくなり、結果として離職につながります。
また、夜勤や不規則なシフトなど、身体的にも負担がかかりやすい勤務体系が続くと、長期的に働きづらいと感じる人も増えます。こうした職場環境の改善には、管理職のマネジメント力強化や働き方改革の実践が求められています。
国や自治体が進める介護人材不足対策
多方面からのアプローチが求められる中、国や自治体はさまざまな施策を展開しています。
処遇改善加算や補助金制度を通じて、給与や研修環境を整備し、介護職のやりがいを高める取り組みが進められています。外国人材の受け入れに関する制度も整いつつあり、特定技能やEPAプログラムを活用して海外からの人材を補おうとする動きが活発化しています。
さらに、ICTや介護ロボットなど新しい技術を導入することで、スタッフの負担を軽減し、人手不足を緩和する試みも推進中です。どの施策も現場レベルでの実行が鍵となり、十分な説明や教育が伴わなければ効果を発揮しにくいという課題も残されています。
処遇改善加算や補助金制度の活用
介護職の給与水準を底上げするために導入されたのが処遇改善加算をはじめとする各種補助金制度です。これによって、事業所は一定の要件を満たすことで、給与や手当を上乗せしやすい環境が整いつつあります。
導入後も、実際にどの程度労働環境が改善されるかは事業者の運用次第となる部分も大きいです。職員に直接還元される仕組みをいかに透明性高く運用できるかが、長期的な人材定着につながるポイントといえます。
外国人材の受け入れと具体的なルート
EPA(経済連携協定)による受け入れや、最近では特定技能制度を活用した海外人材の積極導入が進められています。東南アジアを中心に日本の介護現場で働く意欲をもつ人材は多く、現地での日本語教育や研修プログラムを充実させる取り組みが徐々に成果を上げ始めています。
ただし、言語の壁や文化的背景の違いへの対応が必要で、受け入れ側の環境整備が欠かせません。日本で取得できる資格やキャリアパスの明確化により、外国人介護職が長く定着できる環境を整えることが大切です。
ICT・介護ロボット導入など業務効率化の推進
介護記録の電子化やコミュニケーションツールの活用など、ICTの積極活用による業務の効率化が全国で進んでいます。特に書類作業の簡略化は職員の負担を大幅に減らし、より利用者とのコミュニケーションに時間を割けるようになります。
また、自動移乗機器や見守りロボットといった先端技術の活用により、腰痛リスクや夜間巡視の負担を軽減する試みも見られます。コストや導入後のサポート体制など課題はあるものの、中長期的には人手不足を補う大きな助けとなる可能性があります。
事業者が取り組むべき改善策と成功事例
現場を直接マネジメントする事業者には、働き続けたいと思われる環境づくりが求められます。
長時間労働やハードな肉体労働だけが目立つと、働く側は将来性や安心感を持ちにくくなります。そのため、研修制度の整備やキャリアアップの道筋を明確にすることは、職員のモチベーションを高める上で非常に重要です。
先進的な事業者の中には、ITツール活用や業務見える化を推進し、業務効率と働きやすさを同時に実現している例もあります。人間関係の問題にも配慮し、コミュニケーションの風通しをよくすることで、離職率の低下に成功しているところも増えています。
職場環境の改善:ワークライフバランスと研修体制
スタッフが安心して長く働ける環境を整備するには、柔軟なシフトや休暇制度の整備が欠かせません。また、新人や未経験者が現場でスキルを身につけられるよう、段階的な研修プログラムを用意することで早期離職を防止できます。
キャリアパス・評価制度の整備
施設長や管理職への明確なステップ、専門性を磨くための研修カリキュラムといったキャリアパスを整備すると、スタッフの将来設計がしやすくなります。それによって、短期的な転職希望を抑える効果が期待できます。
また、仕事の成果を客観的に評価する制度が整っていると、努力や実績がわかりやすく還元されます。こうした評価制度が整備されている事業所では、社員一人ひとりがスキルを高めることに意欲的になり、職場全体の活性化につながります。
IT化・見える化で離職率を抑制した導入事例
業務内容を可視化することで、どこに負担がかかっているのかが明確になり、改善策を講じやすくなります。例えば、タブレット端末を活用した記録システムを導入した事業所では、従来の紙ベースでの入力時間を大幅に削減しました。
これにより、スタッフがサービス向上のための時間を確保できるようになり、離職率の低下や職員の満足度向上を実現しています。システムの初期導入コストや運用研修など乗り越えるべき課題もありますが、長期的な視点では十分にメリットが大きい取り組みといえるでしょう。
FAQ|介護人手不足に関するよくある質問
- Q1.介護業界の人手不足は、今後さらに深刻化するのですか?
- A
高齢化率の上昇に伴う需要増と少子化による労働人口の減少が同時に進行しているので、人手不足は今後ますます深刻化する可能性があります。現行の政策や対策だけでは追いつかない部分も多く、あらゆる角度からの支援策が求められています。
ただし、一部では介護ロボットやICT導入による効率化が進み、人手不足を補う取り組みも拡大しています。さらなる技術革新や働き方改革が進むことで、ある程度は緩和される可能性はあります。
- Q2.なぜ介護職は人が定着しにくいのですか?
- A
給与や待遇面の課題に加え、夜勤や身体的負担など、他業種と比べて厳しい勤務実態が定着率の低さに直結しているとされています。多忙な業務に追われる中で、新人や未経験者のフォローが十分に機能しないケースも多いです。
職員同士のコミュニケーション不足が原因で、孤立感を抱くスタッフも少なくありません。職場環境や評価制度の整備、メンタルサポートの強化が 急務といえるでしょう。
- Q3.外国人材の受け入れは人手不足の解決になりますか?
- A
外国人材の受け入れは一定の効果が期待されています。EPA制度や特定技能などのルートを活用することで、人材不足を緩和する取り組みは進んでいます。特に意欲の高い外国人が介護現場で活躍し始めていることも事実です。
ただし、語学や文化の違いという課題に対応する環境づくりが不可欠です。外国人の方が安心して働きやすい職場づくりを実現することで、長期的な定着に結びつきます。
- Q4.IT導入やロボットは、どのように人手不足を補えるのですか?
- A
介護業務の中でも特に負担の大きい書類作成や移乗介助などがロボットやICTによって補われることで、人の手が必要な部分に職員が集中できるようになります。この効率化が働きやすい職場づくりと人材の定着につながります。
さらに、データを活用したヘルスケアの最適化も期待されており、利用者一人ひとりに合わせたケアプランを策定しやすくなるメリットもあります。コストや導入後の教育など課題はありますが、将来的には欠かせない手段となるでしょう。
- Q5.介護人材不足の中でも、初心者が活躍できる道はありますか?
- A
初心者でも研修や教育プログラムが充実した事業所では、基礎から段階的にスキルを身につけられます。未経験から始めたスタッフがリーダー職に登用されるなど、着実にキャリアアップしている事例は少なくありません。
助成制度や企業内研修、メンター制度があるかどうかを確認することで、安心して介護職をスタートできます。早い段階から周囲のサポートを得ることで、専門性を高めながら長く働くことが可能です。
【まとめ】介護業界の人手不足を解消し、持続可能な未来へ
国や自治体、事業者、そして地域社会が一丸となって課題に向き合うことが、今後の介護サービスの質や持続可能性を左右します。
急激に進む高齢化と少子化により、介護人材不足は当面の大きな課題であるといえます。しかし、処遇改善や外国人材の受け入れ、ICTや介護ロボットの活用など、多面的なアプローチを組み合わせることで、徐々に解決の糸口が見えてきています。
大切なのは、単に労働力を確保するだけでなく、従事する人がやりがいを持って働ける環境を整えることです。給与面やキャリアパスの充実、職場内コミュニケーションの活性化などを合わせて実施し、介護サービスの質と働きやすさを両立できる未来を皆で目指しましょう。
湘南国際アカデミーでは、介護人材育成に特化した豊富な講座ラインナップと、実務に直結した研修を提供しています。
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現在はキャリアアドバイザーとして、求職者の就労サポートや企業支援を担当。採用担当経験者としての豊富な経験を活かし、求職者の強みを引き出す面接対策にも定評がある。介護業界の発展に貢献するべく、求職者・企業双方の支援に尽力。
プライベートでは息子と共にボーイスカウト活動を再開し、奉仕活動を通じて心を磨くことを大切にしている。
また、湘南国際アカデミーが発行する「介護業界マンスリーレポート」の企画・監修にも関わり、介護事業所の人材課題や育成ニーズについて、継続的に現場情報の収集・分析を行っている。






