
仲川一清(介護福祉士)
この記事の監修者
湘南国際アカデミー学院長。介護福祉士や社会福祉士などの資格を持ち、教育者としての豊富な経験を活かして次世代の介護人材育成に尽力。受講生合格率95.5%を達成した介護福祉士国家試験対策講座や200名以上の教員育成の実績を持つ。著書やeラーニング教材も手掛けるなど、幅広い活動を展開中。
介護福祉士実務者研修は介護の専門的な知識と技術を身につけるための大切なステップですが、一方で自宅学習の量や期限管理などで苦労する方も多いのが実情です。
本記事では、自宅学習が間に合わなくなる主な原因や、効率的な学習方法、そして本当に時間が足りないときの対処法などを詳しく解説します。研修を期限内に修了するためのポイントを把握し、実務者研修に臨みましょう。
1.実務者研修の自宅学習が間に合わないケース
介護福祉士実務者研修は通信添削課題等の提出がなければ、修了できないわけですが、「間に合わない」というのは、どういうケースがあるか、主なケースについて説明します。
(1)介護福祉士の国家試験
介護福祉士実務者研修を受講する人のほとんどは、介護福祉士の取得を目指します。介護福祉士になるためには、受験しなければなりません。受験に必要な要件のひとつとして実務者研修の修了がありますが、受験の申込み時(受験する前年の8月くらい)の時点で、実務者研修を修了していなくても、「修了見込み」での申し込みが可能です。
この場合、受験(毎年1月末ごろ)した年の、3月31日まで(2025年の場合)に、実務者研修を修了していなければ、せっかく受験したとしても、その試験は無効とされてしまい、再度受験しなければならないため、時間的・費用的に大きな損失となってしまいます。
したがって、このケースにおいて「間に合わない」というのは、3月31日までに修了できないケースをいいます。なお、「修了見込み」で受験した場合は、修了後に実務者研修修了証を、公益財団法人 社会福祉振興・試験センターに送付しなければなりません。
(2)養成施設で定めた提出期限
通信添削課題等の提出期限は、養成施設によって異なります。なかには、「○月○日までに提出しなさい」というように、提出期限が決められているところもあります。とくに、「1回限りの開催」や「年に1回しか開講しない」ような養成施設では、このケースが多くなります。
(3)養成施設の在籍期間
受講生として在籍できる在籍期間が決められています。どのくらいの期間在籍できるかは、養成施設によって異なりますが、たとえば、在籍期間が1年とされていた場合は、その期間内に通信添削課題等と面接授業(スクーリング)を修了させておかなければ、退学扱いとなり、再度受講し直す必要が出てきてしまう可能性があります。
面談授業(スクーリング)は決められた日に教室に出向かなければならないので、心配は少ないのですが、通信添削課題等については、自分で提出時期をコントロールできてしまうため、「間に合わない」というケースが起きやすくなります。
2.自宅学習が間に合うようにするためには
(1)提出期限を確認しておく
まず、受講をはじめる前に、養成施設に通信添削課題等のおおよその内容や提出期限の有無、提出までの期間等を確認しておきましょう。仕事の都合や、自分の生活を勘案し、「これなら大丈夫だろう」と思ったら受講を開始した方が安心です。
(2)在籍期間を確認しておく
せっかく通信添削課題等が「間に合いそうだ」となっていても、在籍期間を過ぎてしまい、退学扱いになってしまったら元も子もありません。通信添削課題等の期限だけでなく、在籍期間も同時に確認しておきましょう。
とくに、「受験は数年先だけれども、先だって実務者研修を終わらせておこう」という人の場合、「時間的なゆとりがあると思って、じっくりと通信添削課題等に取り組んでいたら、養成施設の在籍期間が短くて慌ててしまった」というケースが散見されますので注意が必要です。
過去の受講生で通信添削課題が間に合わなかった人や、在籍期間を過ぎてしまって、退校扱いになってしまった人のケースなどを聞いておくのもひとつでしょう。
(3)不測の事態が起きた場合のことを確認しておく
どんなに、順調に受講が進んでいたとしても、病気・ケガ等というのは、生きている以上、つきものです。そういった不測の事態が起きてしまったときに、養成施設として、柔軟に対応してくれるのか確認しておきましょう。
受講料が無料になる実務者研修についての詳細は、以下の記事をご覧ください
3.自宅学習の取り組み方・心構え
(1)スケジュールはなるべく細かく立てる
「間に合わない」といった状況に陥らないためには、実務者研修の修了だけでなく、介護福祉士国家試験を含んだスケジュール管理が重要です。
その際、「だいたいこのくらいの時期に提出しよう」といった、ざっくりとしたスケジュールではダメです。「間に合わない」という人の多くは、スケジュールがざっくりとしすぎていて、遅れていることに気づかないため、「まだ大丈夫だろう」と思ってしまうのです。
「○月○日までに、この提出物を出そう。そのためには、この日は○ページまで終わらせておこう」と、なるべく細かく立てておきましょう。その方が、「予定よりも早く進んでいるな」とか「ちょっと遅れ気味だな」など、タイムリーな進捗の把握が可能となますし、遅れていることがわかれば、「やらなきゃマズいぞ」と切迫感をもつことができます。
(2)学習環境をつくる
「やらなければならないのはわかっているけれども、やる気が起きなくて…」という人も結構いるかと思います。言うまでもありませんが、資格を取得する研修ですから、やらなければ話になりません。
人間のやる気は、自然に発現することもありますが、やっているうちに、やる気が出ることが脳科学的にもわかっています。ですから、とにかく「やる」ことが大切で、やり出したら、いつの間にか1時間過ぎているというものです。では、「やる」ためにはどうしたらいいか。
まずは、環境を整えることです。とくに、自宅ではなかなかやる気が起きないのではないかと思います。自宅というのは、安らぎの場、娯楽の場になっていることが多く、学習以外のことに時間を費やす場になっていると思います。そこに、「学習」という新たな生活習慣を取り込むことは、かなりの努力を要する行為です。
ですから、いっそのこと家を出て、図書館、ファミレス(迷惑にならない程度で)、喫茶店など、「学習せざるを得ない状況」に身を置いてしまうのがいいでしょう。あるいは、勤務時間が終わってから、職場の一角を借りて学習するのも効率的です。
一緒に受講する仲間、友人がいると、さらにやる気が増します。学習自体は個人的な営みですが、同じ過程を踏んでいる仲間がいると、「自分だけが辛いのではない」、「皆がんばっているなぁ、自分もがんばろう」という思いも起きやすくなります。
また、困ったことや、わからないことがあったときに、アドバイスし合うこともできますし、教わるよりも、教え合う方が記憶に残るので、学習効果は高くなります。
身近に仲間や友人などがいない場合は、面談授業(スクーリング)で、気の合う人と親しくなっておくとよいかもしれません。同じ介護の仕事をしている、専門職同士として、一生の仲間になるかもしれません。
(3)学習習慣を身につけることも研修の目的のひとつ
そもそも、介護福祉士実務者研修は介護の知識・技術について習得するだけではありません。専門職としての姿勢を養うための研修でもあります。
たとえば、医師免許が取得できたから、学習から解放され、学習しなくなったという医師はいません。むしろ、取得できてから、より一層学習しています。だからこそ、私たちは安心して医療を受けることができているのです。
このように、専門職というのは、知識・技術をもっているのはもちろんですが、それ以上に大切なことは、自分磨きに努める姿勢であり、それによって社会的信頼が高まるのです。
そのためには、学習習慣を身につけておくことが大切です。実務者研修における、比較的長い期間の学習は、こうした学習習慣を身につけるのに最適です。「コツコツと学習できない」という人でも、「せめて週に○時間は学習しよう」と、習慣づけを心がけましょう。専門職としての第一歩です。
4.それでも「間に合わない」という場合は…
(1)養成施設に相談する
「そんなこと言われても、もう後の祭りだ!」という場合は、養成施設に連絡・相談してみましょう。ケガや病気によって間に合わない場合は、何らかの救済をしてもらえるかもしれません。
養成施設から、「とにかく期限内に出さなければダメです」と言われてしまったら、すべての時間を充当して、必死に取り組むしかありません。
(2)人の力を借りる
もし、同じ養成施設を修了している先輩や、いま受講している友人などがいたら、アドバイスしてもらうと良いでしょう。つまり、人の力を借りるということです。
人の力を借りるのは、人に頼ることとは違います。人の力を借りるとき、その責任は自分にありますが、人に頼る場合、責任は相手になってしまうからです。ですから、人の力を借りることは、他力本願でも何でもなくて、自分の能力の一部なのです。そうした能力を伸ばすことは、介護のしごとにおいて、大いに役立つことにもなるはずです。
実務者研修の自宅学習に関するQ&A
受講中によく寄せられる疑問点や不安要素をピックアップしました。
介護福祉士実務者研修の受講生の多くは、働きながら学習する人が多いので、気になる点や困ったことが起きても、自分で解決しようとして、抱え込んでしまうことがあります。ひとりで悩むのではなく、気軽に相談するようにしましょう。
- Q1.実務者研修の通信添削課題は、どの程度の分量でしょうか?
- A
実務者研修は、450時間の学習(介護職員初任者研修修了者は320時間など、免除科目があります)をしなければならないとされています。通学であれば、約半年になります。半年かかる内容をについて、通信添削課題等で学習するわけですから、それなりの分量になることは想像に難くないのではないかと思います。
信添削課題等の分量は、養成施設によって異なりますが、1日、2日で終わらせることができるようなものではありません。ポイントは、分量ではなく、通信添削課題等の履修方法です。通信添削課題のための教材が届いて、郵送による履修方法もあれば、パソコンやスマートフォンを使ったe-ラーニングによる履修方法もあります。どのような方法が学習しやすいかは、個人の好みや学習スタイルによって異なりますから、自分に合った履修方法で学習できた方が良いのです。
湘南国際アカデミーでは、どちらの学習方法にも対応しており、選択することができます。どの方法で学習するのが良いのかわからない場合は相談してください。あなたに合った履修方法を提案できます。
- Q2.仕事が忙しくて自宅学習の時間が取れません。どうやって時間を確保すればいいでしょうか?
- A
仕事が忙しく、その上、帰宅してから家事などもこなさなければならない、「とても学習する時間などない」という人は多いです。ですから、できる限り短時間で、最も高い学習効果が得られるようにしたいものです。
どうやって時間を確保すればいいか考える前に、教材が届いたら、なるべく細かく(できれば、1日単位まで細かく)修了までの計画を立てましょう。今日はどこまで終わっていれば計画通りに進んでいるか(進んでいないか)を、わかるようにしておかないと、間に合わなくなってしまう可能性があります。計画を立てると、1日に取り組まなければならない学習量と、それに要するおおよその時間がわかります。
次に、その時間をどうやって捻出するかということです。勤務時間が固定されている場合は、自分の生活パターンを見ながら、どこに時間を取ることができるか、見直してみましょう。必ず、取れる時間があるはずです。
変則勤務の場合は、なかなか時間が読めません。そういう場合は、「明日は1時間やろう」「次の休みに、3時間やろう」と、都度考えていくのが良いでしょう。
コンスタントに「毎日1時間」と決めておくのもひとつですが、仕事や家庭の事情で計画通りにいかないことも多くなります。最初は意気込んでいても、一度、計画が崩れてしまうと「無理!」と、投げやりになってしまうこともあります。計画通りに進まないときは、再度、計画を見直す習慣をつけておきましょう。
また、計画したら「必ずやる!」という、強い決意をもちましょう。とくに最初が肝心です。なぜなら、次第に学習のコツがつかめてくるからです。そうすると、「今日はここまで、1時間かけて学習する」と決めていたことが、「あれ? 30分で終わったぞ」となることもあります。学習を続けていると、学習に対するハードルが下がってくるのです。最初は慣れないことで大変かもしれませんが、徐々に慣れてきますし、生活の一部として溶け込んでくるはずです。
- Q3.自宅学習がどうしても進まないときはどうしたらいいでしょうか?
- A
多くの人にとって、自宅というのは、社会生活から解放され、くつろぐ場であったり、テレビやスマホなどの娯楽の場になっていたりするでしょう。そこに「学習」を新たに取り込むというのは、苦労するものです。自宅のように、ほかに楽しみがあると、やりたくないことは後回しになっても仕方ありません。
そういう場合は、環境を変えてしまうのが一番です。自宅に余裕があれば、学習スペースをつくってしまう。テレビやスマホを見ない場所をつくるというように、物理的環境を変えてしまうと良いでしょう。あるいは、いっそのこと自宅を出て、図書館に行く、ファミリーレストランやネットカフェにこもるというのもひとつの方法です。新たな環境で、新たなことに取り組む「ワクワク感」をつくると、やる気も起きてくるものです。
- Q4.どのような学習方法が良いのでしょうか?
- A
「学習とは、学習の仕方を学習することである」と述べている人がいます。ある受講生が、「実務者研修を受講して、仕事がラクになった」と話してくれました。ひとたび学習の仕方を習得してしまえば、仕事で困ったことが起きても、学習の仕方がわかっていますから、問題解決がかなりラクになるということです。ですから、自分なりの学習方法や学習スタイルを見出すことが、最も自分に合っていて、ベストな方法といえます。
自分なりの学習方法を見出すためには、いろいろと試してみる必要があります。
学習の基本は、「読む」「書く」「観る」「聴く」「話す」の5つがあります。
まずは、テキスト等の教材を「読む」。読むときは、漫然と「目を通す」のではなく、できれば、「音読」をすると効果的です。
次に、「書く」ようにしましょう。テキスト等があれば、欄外に思ったこと、感じたこと、何でもよいので書き込む習慣をつけると良いです。
近年、動画コンテンツなど、「観る」・「聴く」に焦点を当てた学習方法が流行っています。とても手軽なので、スキマ時間などに視聴するのが良いでしょう。
- Q5.通信添削課題の締め切りが近いのですが、間に合わない場合はどうなりますか?
- A
- Q6.スクーリングの日程が合わない場合はどうすればいいですか?
- A
養成施設を選択するときに、スクーリングの日程も確認するようにしましょう。とくに、年に数回しかスクーリングを計画していない養成施設は注意が必要です。
しっかりと、スクーリングの日程を確認し、仕事の調整をしていたとしても、急な病気や不測の事態で、スクーリングに行けなくなってしまうということもあり得ます。そのような場合は、すぐに養成施設に相談してください。振り替えの日程を調整する必要があります。
湘南国際アカデミーでは、神奈川県内11教室で随時スクーリングを行っています。もし、予定していたスクーリングが難しい場合は、希望の日程に振り返ることができます。
- Q7.どうしても学習が追いつかず、研修を断念しそうなのですが…
- A
せっかく割いてきた時間やお金がもったいないです。「あきらめよう」ではなく、「どうしたら続けられるだろうか」という方向で考えていくようにしましょう。
そのためには、まず、養成施設に学習が追いつかないので、どうすればよいのかを相談しましょう。友人や知人に相談するのもエネルギーになります。そのためには、スクーリングの時に親しくなっておくと、さらに励みになります。
まとめ
介護福祉士実務者研修の自宅学習は、計画的に進めることで締め切りに追われにくくなり、学習効率も上がります。もし遅れが生じたら、まずはスクールや職場に相談し、振替日程やシフト調整のサポートを受けましょう。必要に応じて再受講や次年度への繰り越しといった選択肢も検討しながら、あきらめずに学習を続けることが大切です。
湘南国際アカデミーでは、神奈川県内の11教室を活用したスクーリングの振替や、学習スケジュールの相談など、受講生が期限内に修了できるよう、きめ細かなサポートを行っています。もし「自宅学習がどうしても進まない」「締め切りに間に合うか不安」という方は、まずは無料の資料請求や個別相談をご利用ください。あなたの生活スタイルや学習ペースに合った方法で、実務者研修をしっかり修了し、介護福祉士へのステップアップを目指しましょう。
専門実践教育訓練給付金についての詳細は、以下の記事をご覧ください
