介護の現場でも医療的ケアのニーズが高まる中、介護福祉士が喀痰吸引を行うためには特別な研修や手続きが必要です。本記事では、医療的ケアなどを学ぶ実務者研修に力を入れてきた湘南国際アカデミーが、安全に喀痰吸引を行うための要件や制度について詳しく解説します。
喀痰吸引は誤嚥性肺炎などの重篤なリスクを防ぐ重要な技術ですが、医療行為に位置づけられるため、法的な枠組みに基づいて実施する必要があります。以下の構成で具体的に見ていきましょう。
2025年時点では、多くの介護施設や在宅医療の場面で医療的ケアが求められており、介護福祉士の活躍の幅はますます広がっています。喀痰吸引の資格を取得することで、利用者の呼吸状態を安定させ、重篤化を防ぐ対応が可能になります。幅広い知識とスキルを得ることで、より質の高いケアを提供できる点が大きな魅力と言えるでしょう。
1. 介護福祉士が喀痰吸引を行えるようになった背景
介護福祉士が医療的ケアを担う必要性が高まり、法改正によって喀痰吸引の一部が認められるようになりました。
近年、高齢化の進展とともに介護現場での医療的ケアの重要性が急速に高まっています。特に吸引や経管栄養など、従来は看護師が担っていた行為の一部を介護福祉士が行う機会が増えてきました。適切な法整備が行われることで、医師の指示や安全管理を前提としながらも、介護福祉士による喀痰吸引が認められるようになり、介護の質はさらに向上しています。
医療行為としての喀痰吸引と法改正の経緯
喀痰吸引は、もともと医師や看護師だけが行える医療行為と位置づけられていました。しかし、高齢者人口の増加で在宅や施設で医療的ケアを受ける需要が急増したため、介護福祉士による負担分担が必要となりました。その結果、法改正により一定の研修を受けた介護福祉士が喀痰吸引を行うことが一部で認められ、質の高いケアと利用者の安心を両立できる仕組みが整えられました。
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2. 喀痰吸引が必要となる利用者の状態と安全対応
喀痰が必要となる典型的な症例と、その際の安全対策について確認します。
呼吸機能や嚥下機能が低下している高齢者や、慢性疾患を抱える方は気道内に痰がたまりやすくなります。痰がしっかり排出できないと誤嚥性肺炎や感染症を引き起こすリスクが高まるため、こまめな吸引ケアが重要です。安全対応としては、利用者の姿勢やバイタルサインの確認、吸引中の観察を徹底し、必要に応じて医師や看護師と連携を図ることが求められます。
喀痰がたまる原因とリスク
高齢になれば肺活量や気管の筋力が衰え、痰を自然に排出する力が弱まります。神経難病などで嚥下機能が著しく低下している場合、口腔内や気管に痰が停留してしまい、誤嚥や肺炎につながる恐れがあります。また、痰が長時間気道内にとどまると細菌繁殖の可能性が高まるため、吸引による早期の除去が欠かせません。
3. 介護福祉士が喀痰吸引を行うために必要な研修
法律で定められた研修を修了し、専門的な知識と技術を身につけることが不可欠です。
介護福祉士が喀痰吸引を行うには、介護職員等によるたんの吸引等の実施のための研修(喀痰吸引等研修)を受講し、修了認定を受ける必要があります。研修内容は座学と実技、そして実地研修を含む大きなカリキュラムとなっており、利用者の安全を第一に考えるための理論と手技を総合的に学びます。実際に多くの事業所が研修コストを負担したり、自治体が助成制度を設けたりすることもあり、働きながら受講しやすい環境が整えられています。
喀痰吸引等研修の種類(第1号・第2号・第3号)
喀痰吸引等研修には、第1号・第2号・第3号と呼ばれる区分があります。第1号研修は鼻腔・口腔からの吸引など基本的な医療的ケアが中心で、第2号研修は経管栄養などもう少し専門的な行為が含まれ、第3号研修では個別の利用者に特化したケアが対象となります。施設の種類や利用者の状態に応じて、必要な研修を選択して受講するのが一般的です。
喀痰吸引等研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
基本研修と実地研修の内容
基本研修では、医療行為としての吸引や経管栄養に関する基礎理論や倫理的側面を学びます。一方、実地研修では実際にカテーテルを扱い、擬似モデルや現場でのシミュレーションを通じて、状況判断と安全確保の技術を習得します。これらを段階的に学ぶことで、利用者の安定とケア保持の両立を目指す高度なスキルを身につけられます。
4. 登録喀痰吸引等事業者と認定特定行為業務従事者の手続き
喀痰吸引を行う際には事業所や従事者としての登録が必要となり、その手続きが定められています。
きちんと研修を修了した介護福祉士が喀痰吸引を行うためには、所属する施設自体が登録喀痰吸引等事業者であることが望ましいです。加えて、個人としても認定特定行為業務従事者としての登録を行うことが必要となり、利用者の安全管理を徹底するための体制づくりが進められています。2023年のデータでは、全国で3万件を超える登録特定行為事業者が誕生しており、多くの施設が医療的ケアの提供体制を強化しています。
登録喀痰吸引等事業者(登録特定行為事業者)とは
登録喀痰吸引等事業者とは、厚生労働省が定める要件を満たし、喀痰吸引などの医療的ケアを安全に行うための管理体制を整えた施設のことです。必要な人数の看護師配置や医師との連携体制に加え、研修を修了した介護職員を適切に指導する仕組みを備えることで、登録を受けることができます。こうした制度により、利用者やその家族が安心してサービスを受けられるような仕組みが確立されています。
認定特定行為業務従事者の認定と登録申請
個人として喀痰吸引を行う際には、研修修了後に認定特定行為業務従事者としての登録申請が求められます。申請方法や書類は各都道府県の担当窓口や厚生労働省のホームページなどで確認できますが、基本的には研修修了証明書や実地研修記録などを提出する流れです。登録を受理されると正式に認定を得て、安全管理やコンプライアンスを徹底した中で喀痰吸引を実施できるようになります。
5. 具体的な喀痰吸引の手順と注意点
実際に喀痰吸引を行う際の手技や、感染予防・指示内容確認の重要性を解説します。
喀痰吸引は、利用者の呼吸状態を安定させるための重要なケアですが、身体的負担の大きい行為でもあります。吸引前には利用者本人のバイタルチェックや姿勢の確保を行い、吸引後には状態観察をしっかり行うことが肝要です。常に医師の指示書や看護師からのアドバイスを確認しつつ、多職種で連携して安全を最優先に行う姿勢が欠かせません。
カテーテル操作のポイントと感染予防
カテーテルを操作する際は、挿入の深さや角度を利用者ごとに正確に把握することが大切です。必要以上に奥へ挿入すると気管を傷つけやすくなるため、研修で学んだ正しい手技に沿って行わなければなりません。また、カテーテルの使い回し防止を含めた衛生管理の徹底は必須で、使い捨て物品の選択やアルコール消毒など、感染予防策を徹底することで安全を維持できます。
医師の指示書の確認と多職種との連携
喀痰吸引を行う前には、医師が作成した指示書の内容をしっかりと把握し、利用者の状態変化や既往歴など必要な情報を確認する必要があります。特に呼吸器系の合併症を抱える利用者では、些細な変化でも重大なリスクにつながる可能性があるため、看護師と細かい情報を共有しましょう。多職種チームで指示内容を共有し、リスクを最小限に抑えながら安全な吸引を実施することが重要です。
6. 喀痰吸引等研修を受講するメリットと費用
研修受講により介護福祉士としての専門性が高まり、就職・転職にも有利となります。
喀痰吸引のスキルを身につけることで、より幅広いケアが可能となり、利用者に対するサービスの質も格段に高まります。これは施設側から見ても大きなメリットであり、研修を修了した介護福祉士は即戦力として評価されやすくなります。さらに、受講料や受講時間は一定の負担があるものの、多くの自治体や事業所では研修費の補助制度が活用できるため、費用面のハードルも低くなりつつあります。
研修受講で広がる介護福祉士の可能性
喀痰吸引技術を身につけることで、在宅介護から施設介護まで幅広く活躍できる土台が整います。特に、看取りのケアや状態が不安定な利用者への対応において、医療的ケアが充実していると安心して任されやすい存在となるでしょう。結果として、介護福祉士としてのキャリア選択肢が広がり、専門職としての自信にもつながります。
受講料と助成・支援制度の活用
喀痰吸引等研修は、座学と実習を備えたコースとなるため、一定の受講料が必要となります。自治体や事業者独自の助成制度では、研修費の一部または全額を補助するケースもあり、経済的負担を軽減できる可能性があります。支援制度の内容は地域によって異なるため、事前に情報収集し、自身の状況に合わせて効果的に活用することが大切です。
7. 介護福祉士登録証への記載方法と原本証明
喀痰吸引等の実地研修を修了した場合、登録事項を適切に変更し、登録証にもその旨を反映させる必要があります。
介護福祉士登録証は、資格を公式に証明する重要な書類です。喀痰吸引等の実地研修を修了した後は、法的に定められた手続きを踏んで登録証への追記や修正を行うことで、第三者にも安全に医療的ケアができる人材であることを示すことができます。書類の不備や申請の遅れを防ぐために、改めて手続きの流れを把握しておくことが大切です。
登録事項の変更手続きと必要書類
登録事項の変更を行う場合、通常は指定の申請書や実地研修修了証明書のコピーなどを用意します。都道府県担当部署や指定の研修機関へ提出し、審査を経て正式に登録事項が更新されます。記載漏れや書類の不備を避けるためにも、研修修了時点で必要書類をまとめておき、段取りよく対応することが重要です。
「実地研修を修了した喀痰吸引等行為」の記載と原本証明
喀痰吸引等の実地研修を修了した場合、その実績を登録証に明記することで、公式な証明となります。登録証の再発行や追記が完了したら、原本証明としての効力を持たせるために、必要に応じて関係機関へ提示する機会が出てくるでしょう。さらに、登録証の現物管理には気をつけ、紛失等を防ぐための対策を行うことも欠かせません。
8. 喀痰吸引における施設ごとの方針とよくある質問
施設ごとの対応方針や、介護福祉士・利用者からよく寄せられる疑問を解決します。
施設によっては、看護師と連携して吸引対応を行うところや、利用者の状態に応じたマニュアルを細かく整備しているところなど、独自の方針があります。介護福祉士としては、その施設のルールに従いながら、必要に応じて看護師や医師と連絡を取り合い、吸引プロトコルの見直しを行うことが大切です。多職種で情報を共有し、常に利用者の安全と快適性を最優先に考えたケアを実現する姿勢が重要です。
介護福祉士と看護師の吸引範囲の違い
看護師は医療従事者としての資格により、喀痰吸引の範囲が広く、気管内吸引を行う場合もあります。一方、介護福祉士の場合は法的制限があり、喀痰吸引等研修を修了した範囲でしか吸引を実施できません。こうした違いを理解しながら、常に医療者と連携し、安全第一のケアを心がける必要があります。
喀痰吸引を行わない場合のリスクとは?
喀痰がたまったまま放置されると、利用者は誤嚥や肺炎を起こすリスクが高まります。特に高齢者や呼吸器に疾患を抱える方の場合は、少しの痰の停滞でも大きなトラブルにつながる可能性があります。早期の吸引ケアによって気道をクリアに保ち、利用者の呼吸状態や生活の質を向上させる重要性を再確認する必要があります。
FAQ|介護福祉士 喀痰吸引に関するよくある質問
喀痰吸引の制度や手続きについて、現場でよく寄せられる代表的な疑問を3つに絞ってご紹介します。これから研修を検討する方や制度を正しく理解したい方は、ぜひ参考にしてください。
- Q1.介護福祉士でも喀痰吸引を行うには研修が必要ですか?
- A
はい。介護福祉士であっても、喀痰吸引等研修(第1号・第2号等)の修了が必要です。修了後には「認定特定行為業務従事者」としての登録を行い、さらに勤務する事業所が「登録特定行為事業者」である必要もあります。
- Q2.喀痰吸引等研修はどこで受けられて、どれくらいの期間がかかりますか?
- A
自治体の指定研修機関や介護系専門校などで受講可能です。内容は座学・演習・実地研修に分かれ、全体で2〜4か月ほどかかるのが一般的です。費用負担に対して助成制度を設けている自治体もあります。
- Q3.喀痰吸引を安全に行ううえで最も大切なことは何ですか?
- A
感染予防の徹底と、吸引中・前後の利用者の状態観察です。バイタルサインの確認、指示書の内容の把握、カテーテル操作の適正などを踏まえ、常に医師や看護師と連携しながら、安全第一で行うことが求められます。
まとめ・総括
喀痰吸引を行うための研修や手続きの概要を振り返り、介護福祉士として果たすべき役割を再確認します。
介護福祉士が喀痰吸引を行うには、法的に定められた研修の修了と登録が不可欠であり、利用者の安全を最優先にした制度設計が行われています。高齢化社会が進む中で転倒リスク予防や認知症ケアとともに、医療的ケアとしての喀痰吸引に対応できる人材への需要はさらに高まるでしょう。社会的責任の大きい介護福祉士だからこそ、専門性を高めて利用者の安心と生活の質向上に寄与し続けることが重要です。
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