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令和6年度介護報酬改定と「認知症介護基礎研修」の完全義務化を徹底解説

  • 介護職員初任者研修

介護報酬改定は、単なる単価調整ではなく、現場の質・安全・体制整備を制度として誘導する仕組みです。令和6年度(2024年度)介護報酬改定では、特に 「認知症介護基礎研修」の完全義務化 が運用上の大きな転換点となっています。

この記事では、改定の背景と目的、義務化のポイント、実務への落とし込み、サービス種別ごとの対応例、実地指導対策までを 図表・チェックリスト・現場視点でわかりやすく整理しました。

介護報酬改定(令和6年度)の背景と目的

令和6年度改定を理解するには、介護保険制度における報酬改定の役割と、近年の政策課題である人材・生産性・質の担保を押さえることが必要です。

介護保険制度と改定の意義

介護報酬改定には以下の表に挙げた3つの機能(役割)があります。

介護報酬の主な役割
役割内容
サービスの質の確保研修・記録・会議など要件で最低限の安全を担保
体制の誘導望ましいケアや連携を評価し現場の取り組みを促進
財政との調整
必要な分野へ重点配分

改定は国の施策とも連動します。地域包括ケア、重度化防止、科学的介護といった方向性は、現場ではアセスメントの精度、ケア計画への反映、多職種連携、情報共有の頻度として具体化します。認知症ケアも同様で、本人中心のケアやBPSDの予防を、現場の標準行動に落とすための要件として研修が位置づけられます。

事業所運営に直結する理由は、基準や加算の要件が人員配置・研修・記録の3点セットで構成されるからです。研修受講は実施しただけでは不十分で、対象者一覧、受講日、修了証の写し、入職日からの期限など、説明できる形で管理して初めて改定対応になります。

認知症介護基礎研修の完全義務化とは

認知症介護基礎研修の完全義務化とは新たに義務が発生したというより、既に定められていた義務が経過措置終了により実務上も厳格に求められる状態になることです。

認知症介護基礎研修とは

認知症介護基礎研修は、無資格・未経験者を含む 認知症ケアに携わる職員が共通の基礎知識を持つための研修です。
令和6年度の改定で 完全義務化 として運用が強化されました。

実務で重要なのは、受講そのものより管理です。誰が対象で、いつ入職し、いつまでに受ける必要があり、免除根拠は何で、修了証はどこに保管されているか。これらが説明できないと、実地指導では受講していても未整備と判断されることがあります。

完全義務化の比較(令和3→令和6)

認知症介護基礎研修の義務化の比較(令和3→令和6)
項目経過措置(令和3~令和5)現在(令和6~)
対象者受講必須緩やか厳格
管理要件形式的台帳・証憑管理必須
実地指導指摘になりにくい場合あり未整備は指摘対象

また、完全義務化は現場の教育の入口を揃える意味があります。指導担当者の教え方にばらつきがあっても、研修を通じて最低限の理念と対応の基本を共有できれば、OJTの負担やトラブル対応の消耗を減らし、離職予防にもつながります。

認知症介護基礎研修義務化の対象事業所は?

認知症介護基礎研修は、介護報酬上の基準・要件として位置づけられ、対象となる職員に受講させることが事業所の運営上の責務になります。ポイントは、利用者の認知症の有無にかかわらず、認知症ケアに携わる可能性がある業務であれば、基礎知識を持つことが前提とされている点です。

原則として多くの介護サービス事業所で対象になり得ます。判断の軸はサービス種別名よりも、職員が直接介護に携わるか、員数算定に入るか、認知症の利用者に関わる可能性があるかです。

一方で、直接介護に携わらない職種や、配置基準上の算定対象外となる関与の仕方など、例外的に対象外になり得るケースもあります。ここは思い込みで決めず、最新の通知や自治体運用で確認し、判断根拠を記録として残すことが安全です。

認知症介護基礎研修の対象者と免除規定

認知症介護基礎研修の対象者の見落としや免除要件の誤認は、実地指導での指摘につながりやすい領域です。ここでは、職種・資格・業務内容を解説します。

認知症介護基礎研修の対象者チェック表
職種対象判定ポイント
介護職直接介護に関与
事務職見守り・送迎等で介護実態がある場合は対象
看護師既存資格で免除可能(証明必須)
外国人スタッフ介護関与の可能性があれば対象

さらに、派遣・委託・短時間勤務など雇用形態が多様なほど漏れが起きます。実地指導で問われるのは現場に入っている人の実態なので、雇用形態ではなく、業務実態と員数算定を基準に管理台帳を作ることが有効です。

看護師・介護福祉士など免除となる職種

認知症介護基礎研修が免除となる代表例として、以下の表にあるように看護師・准看護師、介護福祉士介護支援専門員介護職員初任者研修修了者、実務者研修修了者、生活援助従事者研修修了者などが挙げられます。これらは認知症ケアを含む基礎的知識を別ルートで修得していると整理されるためです。

また、認知症介護実践者研修実践リーダー研修、指導者養成研修など、より上位の認知症研修を既に修了している場合も免除扱いになり得ます。重要なのは、免除の根拠が資格名や研修名で説明でき、証明書類が揃っていることです。

認知症介護基礎研修の免除となる主な資格
資格名免除対象
生活援助従事者研修
介護職員初任者研修
実務者研修
介護福祉士
介護支援専門員(ケアマネジャー)
上位認知症研修(認知症介護実践者研修等)
民間資格(例:認知症サポーター)

誤解が多いのが民間資格です。認知症サポーターなど、学びとして価値はあっても、免除規定として扱われないことがあります。免除になるかは制度上の位置づけで決まるため、現場の納得感ではなく、通知に基づく線引きを徹底する必要があります。

外国人スタッフへの適用と注意点

外国人スタッフも、直接介護に従事するなら原則として対象です。日本人か外国人かで義務の考え方が変わるわけではなく、利用者の安全とケア品質のために基礎知識の共通化が求められます。

認知症介護基礎研修の具体的な研修内容

研修の中身を知ることで、受講計画の立てやすさだけでなく、OJTやチームケアへの落とし込み方も明確になります。

認知症介護基礎研修は、認知症の種類を暗記するためというより、現場で起きる困りごとを理解し、対応の軸を作るための内容です。知識が増えるだけでなく、声かけ、環境調整、記録の視点が変わることが、研修の実務的な価値になります。

研修を受けても現場が変わらないケースは、学んだ内容が日々の業務ルールと接続されていない場合に起きます。例えば、帰宅願望が出たときの初動対応、拒否が強いときの代替案、家族への伝え方などを、事業所の標準手順として整えると研修効果が残ります。

受講はゴールではなくスタートです。受講後1か月以内に短い振り返り面談を行い、現場で困った事例を1つ持ち寄って共有するだけでも、学びが定着しやすくなります。

研修カリキュラムと学習目標

認知症介護基礎研修のカリキュラム(湘南国際アカデミーのカリキュラム例)では、認知症の理解、症状と生活への影響、ケアの理念、対応の基本、家族支援といったテーマを扱います。
現場の行動に落とすと、相手の世界を否定しない関わり、安心を作る説明、混乱を減らす環境、リスクを先読みする観察という形になります。

認知症介護基礎研修カリキュラム
(湘南国際アカデミー)
科目目的内容時間数区分
認知症の人の理解と対応の基本認知症の人を取り巻く現状、症状に関する基礎的な知識を学び、認知症ケアの基礎的な技術に関する知識とそれらを踏まえた実際の対応方法を身につける。・認知症の人を取り巻く現状
・具体的なケアを提供する時の判断基準となる考え方
・認知症の人を理解するために必要な基礎的知識
・認知症ケアの基礎的技術に関する知識と実施上の留意点
150分程度自宅学習
(eラーニング)

学習目標を実務的に言い換えるなら、なぜその行動が起きているのかを推測し、本人の尊厳を保ちながら安全を確保するための選択肢を持てるようになることです。強く止めるのではなく、代替行動へ誘導する、時間帯や場所を変える、刺激を減らすといった発想が出るようになります。

修了後の行動変容としては、声かけの言葉を短く具体的にする、同じ説明を落ち着いて繰り返す、できることを奪わない、記録に感情ではなく事実と前後関係を書く、といった点が効果的です。これらはチームで共有して初めて意味があるため、記録様式や申し送りの観点も合わせて整えると成果が出やすくなります。

eラーニング・集合研修などの受講方法

認知症介護基礎研修は自治体主体で実施される場合や、湘南国際アカデミーのように自治体から指定を受けて開催することが多く、eラーニング、集合研修、ハイブリッドなどの形式があります。eラーニングはシフトに合わせやすい反面、受講の先延ばしが起きやすいため、開始日と締切日を明確にし、受講状況を見える化することが重要です。

所要時間や費用感は実施主体により差がありますが、短時間で完結しやすい設計が一般的です。運用上の要点は、修了証の発行条件を事前に確認し、修了証を回収して台帳に登録するところまでを一連の業務にすることです。個人の端末で完了しても、事業所側に証憑がなければ未整備と判断され得ます。

新規採用者には受講までの猶予が運用されることが多いため、年間計画としては、入職月ごとに受講期限を一覧化し、四半期ごとに受講枠を確保する形が管理しやすいです。繁忙期にまとめて受けさせようとすると未了が出やすいため、早めに受講させる方が結果的に負担が軽くなります。

認知症チームケア推進加算の算定要件

令和6年度の介護報酬改定では、新たに「認知症チームケア推進加算」が創設され、BPSDへの対応や認知症ケアの標準化を推進する体制整備が評価対象となりました。
この加算では、アセスメントや会議の開催、記録管理、研修修了者の配置など、複数の要件をPDCAとして運用していることが求められます(出典:厚生労働省通知「認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について」令和6年3月18日)

認知症チームケア推進加算の要点
引用元:厚生労働省|認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について
項目内容
加算の目的認知症の行動・心理症状(BPSD)に対応するチームケア体制を構築し、未然の予防・早期対応を評価する
対象サービス介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院
加算の要件(概要)認知症ケアに関するアセスメント・カンファレンス・支援計画策定・記録・振り返りをチームで実施
具体的要件初回アセスメントの実施(入所後1か月以内)
認知症ケア会議の開催(月1回以上)
ケア方針の記録とチーム内共有
記録の保存(一定期間)
研修要件認知症チームケア推進研修の修了者を1名以上配置(ケア会議の運営等を担う)
記録整備アセスメント内容、支援方針、振り返り内容を記録し、介護記録と連動させて保存
注意事項
加算算定には、形だけの会議ではなく「PDCAとして運用」している証跡が必要

通所系・訪問系・施設系サービス別の対応ポイント

同じ研修要件でも、サービス種別によって対象職員の範囲・受講調整・OJTの組み立て方が変わります。現場の詰まりどころ別に整理します。

通所系サービスの対応ポイント

通所系サービス(デイサービス等)は、日中の活動時間帯に複数の利用者と密接に関わる場面が多いため、認知症ケアの標準化と記録の質が特に重要です。令和6年度介護報酬改定では、認知症介護基礎研修を受講した職員の配置や、認知症の傾向がある利用者への計画的な対応が求められています。

対応設計のポイント

  • 受講スケジュールの組み込み
    通所サービスでは利用時間が規則的であるため、研修受講は業務開始前や休憩時間に計画的に組み込むことが可能です。
  • 個別アセスメントの活用
    利用者ごとの認知機能やBPSD傾向について、日々のアセスメントを行い、ケア計画に反映します。
  • ミニ勉強会や共有会の実施
    定期的に短時間の勉強会を開催し、受講内容をチーム内で共有して現場での実践につなげます。
  • 記録の簡素化と継続性
    観察事項から対応・評価までを 1枚で追える記録様式 にすると、介護記録とカンファレンス記録が連動して、説明責任を果たせます。

訪問系サービスの対応ポイント

訪問系サービス(訪問介護・訪問入浴・訪問看護等)は、職員が単独で業務を進めることが多く、現場での判断力と標準化されたケア手順の整備が特に求められます。

現場対応で重視する点

  • 標準対応手順の整備と共有
    利用者宅ごとの対応手順(声かけ、環境調整、初期対応手順など)を標準化した文書化した手順書として用意すると、研修内容が実践に結び付きやすくなります。
  • 評価・振り返りのフローを明示
    訪問ごとの観察→評価→記録→振り返りという流れを、手順として明文化することで、訪問者ごとのバラつきを抑えられます。
  • OJTとしてのケース検討実施
    同行訪問やケース検討を行うことで、研修で学んだ理念を実際の場面へ落とし込む支援力を高めます。
  • 記録方法の工夫
    単独での訪問のため、訪問後すぐに入力できるよう、スマホやタブレットの活用、簡易記録様式の整備が効果的です。

施設系サービスの対応ポイント

施設系サービス(有料老人ホーム・特別養護老人ホーム・老人保健施設など)は、多数の利用者を常時ケアする環境で、認知症対応の体制整備と継続的なチームアプローチが特に重要になります。

施設内対応の留意点

  • ユニット・フロア単位での教育設計
    施設では役割が細分化されがちですが、ユニット単位で標準的な対応フローを整えることで、職員間の連携がスムーズになります。
  • 夜勤者・パート職員も対象に含む
    認知症介護基礎研修は、夜勤や短時間勤務者も対象になる場合があるため、受講計画に全員を含める仕組み化が必要です。
  • BPSD対応ルールの標準化と共有
    拒否行動・徘徊などが発生した場合の対応ルールや環境調整のチェックリストを設けることで、現場での一貫性ある対応が可能になります。
  • 多職種協働の体制整備
    介護職、看護職、リハビリ職、栄養士等が連携して定例ミーティングを行い、個別支援計画を共有することが実務対応で求められます。
  • 継続的な記録と評価の仕組み
    介護記録、生活歴、BPSD評価を定期的に見直し、チームで評価→計画→振り返り→改善(PDCA) を回す仕組みを整えることが加算算定のポイントにもなります。

引用元:厚生労働省|認知症チームケア推進加算に関する実施上の留意事項等について

FAQ|介護報酬改定や認知症介護基礎研修に関するよくある質問

介護報酬改定や認知症介護基礎研修の完全義務化に関して、介護事業所の皆様から多く寄せられるご質問をまとめました。以下のFAQでは、義務化の対応や受講管理の仕組みづくり、実地指導への備えなど、現場で実際に役立つ視点から解説しています。

Q1.
認知症介護基礎研修の完全義務化とは何を意味するのですか?
A

完全義務化とは、これまで経過措置があった「認知症介護基礎研修」が、2024年度からすべての対象者に対して原則受講必須となることを意味します。未受講者の存在は例外扱いされにくくなり、実地指導での指摘対象となるリスクがあります。

Q2.
認知症介護基礎研修の対象者をどのように判定すれば良いですか?
A

原則として、医療・福祉系の資格を持たず、認知症ケアに携わる可能性がある職員はすべて対象になります。雇用形態(常勤・非常勤)は関係なく、実際に介護現場に入るかが基準です。事務職でも送迎や見守りなどを行う場合は対象になり得ます。

Q3.
認知症介護基礎研修をすでに修了しているかどうかの確認方法は?
A

修了証明書の有無で確認します。口頭での申告ではなく、資格証や修了証のコピーを入職時に回収し、台帳に記録して保管することが重要です。特に、免除規定に該当する職種であっても、証憑がなければ未受講扱いされる可能性があります。

Q4.
外国人スタッフにも研修受講は義務ですか?
A

はい、外国人スタッフも直接介護に携わる場合は原則として対象です。ただし、介護福祉士などの該当資格を保有している場合は免除されることがあります。その場合も証明書の写しと台帳管理が必要です。言語配慮として「やさしい日本語」や手順書の活用が効果的です。

まとめ・総括

令和6年度の「介護報酬改定と認知症介護基礎研修の完全義務化 」は、事業所のリスク管理・サービス品質・人材育成に直結しています。
単なる制度の解説だけでなく、 受講管理の仕組み化・台帳管理・実地指導への備え・チームケア加算との整合性 までを体系的に整えることが成功の鍵です。

湘南国際アカデミーでは、介護現場の実務と制度対応を両立させる 研修支援・仕組み化アドバイス・実地指導対策 を提供しています。
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この記事を書いた人
元ユニットリーダー研修指導者。10年在籍した介護老人福祉施設の現場では、研修受け入れ担当者として、年間100名以上の研修生の指導にあたる。湘南国際アカデミーでは、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士国家試験受験対策講座の講師や介護福祉士受験対策テキストの執筆などを担当する傍ら、ケアする側もケアするという立場で、介護をする側のQOL向上のためのイベントや総合的なサポートを手掛けている。
その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
江島 一孝
藤沢校・横須賀校・海老名校・相模大野校・横浜戸塚校・横浜馬車道関内校・小田原校・大和校・横浜二俣川校
【所持資格】
介護福祉士・介護福祉士実習指導者・介護支援専門員・福祉用具専門相談員・介護技能実習評価試験評価者
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