中澤みほ(国家資格キャリアコンサルタント)
この記事の監修者
大学でキャリアカウンセリングを学び、最年少でキャリアコンサルタント資格を取得。公共職業訓練校や大学の就職支援を担当し、企業向け研修のプロデュースも手掛ける。湘南国際アカデミーでは、介護資格教育や就職支援を通じ「介護する側のQOL向上」を目指し、受講生や企業から信頼を得ている。
2025年、5人に1人が75歳以上となる超高齢化社会の始まりの年と言われています。介護業界は高齢化社会の進展とともに需要が増加しており、転職を考える方も多くなっています。
介護職への転職を成功させるためには何が必要か。そもそも転職しないで済む方法はないのか。
本ガイドでは、介護の教育機関 湘南国際アカデミにて、介護資格の取得支援から就労サポート、介護転職に関する相談を延べ2,000人以上支援してきたキャリアコンサルタントの経験や視点を基に、現状分析から求人の探し方、未経験者のためのステップ、転職エージェントの活用方法まで解説します。
介護職転職の現状と市場動向
現状と市場動向を把握して効果的な転職活動を行うための準備をしましょう。
日本の高齢化率が急速に進む中、介護職の需要は年々増加しています。特に、介護施設や在宅介護サービスの拡充に伴い、介護職への転職希望者も増加傾向にあります。転職市場でも高い需要が見込まれています。
現在の介護市場では、働き方も多岐にわたります。また、地域によって求人の傾向や待遇も異なるため、自身の希望やライフスタイルに合わせた選択が重要です。
介護業界での転職需要
介護業界における転職需要は、少子高齢化の進行とともに今後も拡大が見込まれています。特に訪問介護やデイサービスなど、多様なサービスの拡充に伴い、様々な分野で活躍出来る人材の需要が高まっています。また、多様な経験を持つ人々の参入も増えており、職場環境の多様化が進んでいます。
介護職のやりがいと魅力
高齢者の方の生活において、介護職の役割はとても大きく重要です。利用者さんの健康や生活の質の向上に直接貢献できることは、多くの介護職者にとってやりがいへとつながっています。また、働きながら専門的な知識やスキルを習得できる点も魅力の一つです。さらに、チームで協力し合いながら働く環境や、利用者さんとの深い信頼関係を築くことができる点も介護職の大きな魅力といえます。これらの要素が、介護職を志す人々の転職意欲を高めています。
介護職の労働環境と課題
介護職はやりがいのある反面、労働環境にはいくつかの課題が存在します。主な課題としては、不規則な勤務体系、体力的な負担が挙げられます。また、給与水準が他の業界に比べて低い傾向にあるため、職業としての魅力を向上させるための取り組みが求められています。それらは時に、精神的なストレスや職場内でのコミュニケーションの難しさにもなっています。
これらの課題を克服するために、働きやすい職場環境の整備や適切な人材育成が今の介護業界では重要な課題となっています。
このような背景から、国や行政による介護職員処遇改善加算の拡充や各介護事業所の労働環境の改善に向けての取り組みもあり、これから介護職として働こうとする方達にとっては、以前よりも労働環境の整備が進んでいるのは心強いのではないでしょうか。
無資格でも始められる介護職への転職
介護業界には、無資格でも応募可能な職種が多く存在します。主にヘルパーや介護補助スタッフなどが該当し、現場での実務を通じてスキルを身につけることができます。無資格で始められる職種は、研修やサポート体制が整っている職場も多いため、介護職への第一歩として実際の業務を経験しながら、必要な資格やスキルを習得することが可能になってきました。
介護職員初任者研修や資格取得の活用術
介護職において、資格の取得はスキルアップやキャリアの向上に大きく寄与します。特に、介護職員初任者研修は未経験者でも参加しやすく、基本的な介護知識や技術を学ぶことができます。
最近では「介護無資格者の研修義務化」が導入されたことにより、介護職員として勤務するために最低でも認知症介護基礎研修資格を取得することが義務付けられましたが、学ぶ知識や技術、研修時間数などの内容は介護職員初任者研修の方が充実した内容で担当できる業務内容の幅も広いため、受講料や時間をあまり気にせずに学ぶことができる方には介護職員初任者研修の受講をお勧めしています。また、初任者研修以上の介護資格の取得は応募時のアピールポイントとなり、より良い条件での転職が可能となります。また、職場によっては資格取得を支援する制度を設けているところも多いため、積極的に活用することをおすすめします。
初任者研修に関して、さらに詳しく知りたい方は
介護職の種類と仕事内容
介護職といってもさまざまな種類があります。それぞれの介護サービスの特色や役割、仕事内容を理解することで、自分に適した職種を選ぶことができるでしょう。
介護職(ヘルパー)の役割
ホームヘルパーは、利用者の日常生活をサポートする役割を担います。具体的には、食事や入浴、排泄の介助、衣類の管理、掃除や洗濯などの家事援助などがあげられます。利用者さんが安全で安楽な生活を送れるよう支援することが主な任務です。基礎的な介護スキル、コミュニケーション能力のほか接遇やマナーも必要とされます。
活躍の場は利用者さんのご自宅を訪問する訪問介護や訪問入浴。有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの施設。デイサービスといわれ日中の時間に通われ運動やアクティビティに取り組む通所。そのほかにも外出を援助するガイドヘルパーなどがあげられます。
訪問介護や施設型の職場の違いに関して
訪問介護などの利用者のご自宅に訪問する場合には、利用者を始め介護者であるご家族とのコミュニケーション力や担当するケアマネジャーや医療関係者との連携が求められることがあります。一方、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設などの施設型の職場では、多くの利用者に対応するために他の介護職員とのチームケアが求められることが多々あります。
私に相談をされる方の中には、常に自分の回りに先輩職員や仲間がいる環境の施設型の職場を希望されることが多く見受けられますが、大事なことは自分の特性に合う職場を選ぶことです。
訪問介護では、基本的には日中の業務が主体で、一件のご自宅でのサービス提供が終わると次の利用者の自宅までは移動時間や休憩時間となり、気持ちの切り替えができたり、ある程度の業務を把握して独り立ちできるようになれば、利用者様を主体にすることは第一ですが、自分のペースで業務につけることも大きなメリットでもあります。
※訪問介護員として勤務する場合には、介護保険業務に従事するために制度上の決まりで介護職員初任者研修以上の資格取得が求められます。
一方、施設型の職場では365日24時間体制が基本なので、最近では日勤のみの正社員なども増えてきましたが、正社員を目指したり収入を上げていくためには、早番・日勤・遅番・夜勤という4つのシフト勤務に対応していく必要も出てきます。訪問介護も施設型の職場も双方にメリットやデメリットはありますので、ご自身の特性や家庭的な事情、目指したいキャリア形成や人生設計と照らし合わせながら、職場を見つけることをおすすめします。
介護職としてのキャリアアップ
介護職には、現場スタッフの他に管理職としての役割も存在します。ケアマネージャーや施設長などのポジションでは、職場全体の運営やスタッフの管理、利用者のケアプランの作成などを担当します。これらの職種では、リーダーシップやマネジメントスキルが求められ、経験を積むことでキャリアアップが可能です。
介護転職を検討する理由と準備
転職を成功させるためには、まず自身の動機や希望条件を明確にし、準備を行うことが重要です。
介護職への転職を考える際には、なぜ転職を希望するのか、そもそも現在の職場から転職する必要があるのか、その理由を明確にすることが重要です。
また、自分の希望する働き方や待遇、職場環境を整理し、優先順位をつけることで、転職活動を効果的に進めることができます。さらに、必要なスキルや資格の取得を計画し、実践的な準備を行うことも成功への鍵となります。以下では、転職を検討する際の具体的なステップについて詳しく解説します。
自己分析と希望条件、転職理由の明確化
介護職への転職を考える際には、まず自己分析重要です。自分がどのようなキャリアを築きたいのか、何を重視しているのか希望を明確にしていきましょう。具体的には、転職することで得たいスキルや経験、理想とする職場環境などを洗い出し、自分にとって最適な職場を選ぶための基準を設定します。自己分析で強みや転職理由を明確にすることで、面接時に自信を持ってその理由を伝えることができ、採用担当者に対して説得力のある自己PRを行うことが可能になります。
スキルアップを目指した理由と面接での伝え方
介護職への転職では、スキルアップが重要です。資格取得や研修を通じてスキルを高めることで、より専門的な業務に挑戦でき、現場での介護の質も向上します。面接では、スキルアップへの意欲や具体的な取り組みをアピールしましょう。取得した資格や受けた研修、その成果をどのように業務に活かしているかを具体的に伝えることで、成長意欲を採用担当者に効果的に示せます。
希望に合った介護求人の探し方
介護職への転職を成功させるためには、自分の希望に合った求人を見つけることが不可欠です。地域や条件別に求人情報を整理し、効率的な検索方法を理解することで、理想の職場に出会う確率が高まります。また、転職サイトを上手に活用することで、最新の求人情報をいち早くキャッチすることができます。以下では、具体的な求人の探し方について詳しく解説します。
地域別の求人情報
介護求人は地域によって異なる特徴があります。希望する勤務地を絞り込むことで、その地域に特化した求人情報を効果的に探すことが可能です。地域特有の職場環境について理解しておくことが重要です。例えば、同じ県内でもエリアによって、給与水準が高く福利厚生が充実している職場や地域密着型、多様な介護サービスを提供する施設など、求人内容にも特徴があります。自分のライフスタイルや希望に合った地域を選ぶことで、転職後の満足度を高めることができます。
介護転職を成功させる方法
介護職は未経験からでも挑戦できる職種で、意欲と適性があれば転職が可能です。ただし、成功には適切な準備と戦略が必要です。求人を探す際は、複数の転職サイトや転職エージェントを活用しましょう。これらを併用することで、自分に合った求人を効率的に見つけられます。
転職サイトの選び方
現在多くの介護転職サイトが存在します。大手サイトは豊富な求人情報を提供し、専門サイトは特定分野の求人に特化しています。それぞれの転職サイトの特徴を理解し自分に合ったサイトを選ぶことで、効果的な転職活動を行うことができます。
転職エージェントの選び方
介護職への転職では、介護業界に特化した転職エージェントを選ぶことが成功の鍵です。これらのエージェントは求人紹介だけでなく、プロフェッショナルなアドバイスを受けながらの効果的な作成履歴書作成や実際の面接を想定した面接対策など幅広い支援を提供します。特に介護職では、利用者とのコミュニケーション能力が重視されるため、模擬面接を通じ準備ができることは心強いです。業界特化型エージェントは最新情報に精通し、個々のニーズに合った求人を紹介してくれるのが特徴です。利用者の口コミや評判を参考にしたり、相談時に親身に対応してくれるかどうかや、自分の希望や目標を理解してくれるかどうかも重要なポイントです。体験相談などのサービスも利用し複数を比較して最適なエージェントを見つけましょう。
転職フェアの活用
転職フェアも、実際の転職活動において非常に有用なツールです。多くの企業が一堂に会し、直接企業の担当者と話す機会が得られます。これにより、企業の雰囲気や具体的な求人情報を直接確認することができ、応募する前に企業選びの材料を得ることができます。就職後の働き方や業務内容への相談、どんな職員が活躍しているのかなど、直接企業担当者に相談できる機会は多くないため活用することで不安を解消し転職活動が行えるでしょう。
介護転職での注意点
転職でのミスマッチを防ぐためには、求人票や勤務条件をしっかり確認することが重要です。給与や勤務時間、福利厚生、昇給・研修制度などを見落とさないよう注意しましょう。特に介護職では職場の人間関係も大切です。面接時に職場の雰囲気を質問したり、職場見学を行ったりして現場を確認しましょう。また、口コミやエージェントの情報も参考になります。事前に十分な情報収集と自己分析を行い、希望条件と求人内容が合っているか確認することが、成功の秘訣です。
介護職としての収入で生計を立てられるのか
介護職への転職を希望する方からの相談を受けると、ほぼ8割以上の方が「人のために仕事をしたい、人から喜ばれる仕事をしたい」などの仕事の意義に対してのモチベーションの高い方達です。
しかし、自分や家族を養うための収入面から目をそらすわけにはいきません。介護職の収入が一概に低いと言っているわけではありませんが、他の業界で活躍して役職やある程度の経験を積んできた方の収入を介護職として維持できるかというと、残念ながらほとんどのケースでは維持ができません。
もちろん、前職での経験や能力によって施設長や管理職に就任されることで、以前の職場よりも給与水準が高くなるケースもありますが、一介護職員として現場で働く職種への転職においては、他の業種の新人社員と同じように給与水準は低くなりがちです。
高収入を望むことができる夜勤専従の職種などもありますが、介護未経験の方をいきなり夜勤専従に就かせるような介護事業所様もいないと思いますし、もし仮に夜勤専従に就いても生活リズムや体調管理などの面からも勤務を継続していくこと自体のハードルは高くなるといえます。
湘南国際アカデミーが、独自に調査してまとめた介護職員の収入についての一覧表を以下に作成しましたので、これらの客観的な情報とご自身の条件や希望と照らし合わせながら検討してみましょう。
資格 | 月収(平均) | 昇進を期待できるポジション |
---|---|---|
無資格 | 約20万円 | 一般スタッフ |
初任者研修修了者 | 約22万円 | 介護職員、サブリーダー |
実務者研修修了者 | 約25万円 | 介護職員、サービス提供責任者、リーダー |
介護福祉士(国家資格) | 約27万円 | 専門性の高い介護職員、チームリーダー、施設長、ケアマネージャー |
経験別の介護転職戦略
年代や経験に応じた効果的な介護転職戦略を立てることも、成功率を高めることができます。
介護職への転職は、個々の年代や経験に応じてアプローチを変えることで、より効果的な結果を得ることができます。前項でも述べたように、前職での管理職や専門職としての経験など自分のキャリアステージや過去の経験を活かし、最適な転職戦略を立てることが成功への鍵となります。
私が担当している介護事業所様の中には、異業種からの転職者に対してなるべく収入を落とすことなく、介護職への転職を実現できるようにするために異業種での社会経験を一種の経験年数として、基本給などに加算する制度を採用している法人もあります。他業種の経験が全く身をなさないことはありませんので、転職を相談する際にキャリアコンサルタントや転職エージェントにもご自身の経歴をしっかりと伝えられるように準備をしておきましょう。
未経験者向けの介護転職の成功ポイント
未経験者が介護職に転職する際には、まず基本的な知識やスキルを身につけることが重要です。また、ボランティア活動やインターンシップを通じて実務経験を積むことも有効ですが、転職ということは収入を得続けることでもあります。
もし、介護職転職の現状や市場動向、ご自身の収入面、キャリア目標を総合的に検討して、本当に介護職への転職をすると決断するのであれば、まずは介護職員初任者研修などの資格を取得し、基礎的な介護技術を習得することをおすすめします。何事も形から入ることを推奨するわけではありませんが、応募時のアピールポイントだけでなく基本給や資格手当、待遇面での可能性を高めることができます。さらに、時間や費用を費やして市介護資格を取得したということは、自分のやる気や意欲をしっかりと伝えることのできる明確なエビデンスの裏付けともなります。そのようにご自身の考えや行動を裏付ける背景が存在するからこそ、面接時には具体的な動機や目標を明確に述べることにもつながり、採用担当者に好印象を与えることができます。
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介護の経験者が活かせる職種と条件選び
介護職としての経験をお持ちの方は、今までの経験を活かすことで、より専門性の高い職種や高収入の職場への転職が可能につながります。例えば、介護福祉士やケアマネージャーなどの専門職は、一定の経験と資格を持つことで応募できる求人が増えます。また、経験を活かしてサービス責任者などの管理やマネジメント、指導や社内研修の役割を担うことも可能です。さらに、働き方の条件設定も交渉できる場合もあり、希望する給与や勤務時間、勤務地などを明確にすることで、自分に合った職場を見つけやすくなります。介護業務の経験者は、自分の強みや実績を具体的にアピールすることで、より有利な条件での転職が実現できます。
ブランクがある方へのアドバイス
職歴にブランクがある方が介護職に転職する際には、ブランク期間中にどのようにスキルを維持・向上させてきたかをアピールすることが重要です。
具体的には、家庭の事情や自己啓発の活動など、ブランク期間中に取り組んだことを履歴書や面接で積極的に伝えることで、前向きな姿勢を示すことができます。また、ブランクをカバーするために、短期間のボランティア活動やアルバイトなどで実務経験を積むことも有効です。これにより、実際の介護業務に従事する際の自信とスキルを補完することができます。
また、職歴にブランクがある方の場合には応募書類の出来栄えによって面接に辿り着くか否かの問題にもなるため、書類作成はとても大事なポイントになります。応募書類の作成の際には、介護転職に精通したキャリアコンサルタントやエージェントの無料相談サービスなどを利用することをおすすめします。
介護転職を成功させるために|キャリアコンサルタントから一言
介護の教育機関で延べ2,000人以上の就労サポートに携わってきたキャリアコンサルタントの視点から、介護転職を成功させるためのアドバイスをお届けします。
介護職への転職を成功させるためには、現状の市場動向を理解し、自分自身の希望やスキルを明確にすることが重要です。転職活動を始める前に、本当に自分が転職を必要としているのか、自己分析や希望条件の整理、必要な資格の取得など、しっかりとした準備を行うことで、より良い転職先を見つけることが可能になります。
また、キャリアコンサルタントや転職エージェントなどの支援サービスを活用し、効果的な情報収集とサポートを受けることで、転職の成功率を高めることができます。
介護未経験者であっても、適切な準備と意欲があれば介護職への転職は十分に可能です。最後に、介護職は人の生活を支えるやりがいのある職種であり、自分のキャリアとライフスタイルに合った職場を見つけることで、充実した職業人生を送ることができます。
もし、介護転職お検討しているのでしたら、介護の教育機関である湘南国際アカデミーに気軽にご相談ください。
最新の介護職員初任者研修コース一覧はこちらから
湘南国際アカデミーでは、介護関連資格の教育・職業紹介にてキャリア相談・就職支援を行い、ケアする側もケアするという立場で「介護をする側のQOL向上」をコンセプトに、イベントや総合的なサポートに取り組み受講生や就労先である企業からの高い信頼を築いている。
その他、キャリアコンサルタントとしての経験や視点を活かして、様々な企業において、当校の「事業所内レベルアップ研修」を各企業に合わせた研修プログラムなどをプロデュースしている。