子育てが一段落して、これからの生活や自身のキャリアについて考える時間が増えた人もいるのではないでしょうか。「誰かの役に立つ仕事がしたい」と考えている人にこそ知ってもらいたいのが、介護施設である「ショートステイ」での働き方です。ショートステイでの仕事は未経験からでも挑戦しやすく、これまでの人生経験を活かせる場面も多くあります。
この記事では、ショートステイの基本的な概要や具体的な仕事内容、やりがい、そして自分に合った仕事探しのポイントなどを解説します。
ショートステイの概要
ショートステイは、介護の世界で重要な役割を担うサービスの一つです。まずは、その基本的な仕組みや種類について具体的に見ていきましょう。
ショートステイとは?
ショートステイとは、普段は自宅で在宅介護を受けながら生活している高齢者などが、短期間だけ施設に宿泊し、介護や生活上の支援を受けられる介護保険サービスのことです。正式には「短期入所生活介護」または「短期入所療養介護」と呼ばれます。
ショートステイの大きな役割は、利用者の家族の介護負担を軽減することです。例えば、介護者である家族が冠婚葬祭や出張などで一時的に家を空けなければならない場合や、心身の疲れを癒す休息(レスパイトケア)が必要な際に、利用者が安心して過ごせる場所を提供する役割を担います。
ちなみに、ショートステイに近い介護サービスには、数ヶ月単位で滞在できる「ミドルステイ」のほかに、「通い」「泊まり」「訪問」といったサービスを柔軟に組み合わせる「小規模多機能型居宅介護」などがあります。
ショートステイの利用対象者と利用期間
ショートステイを利用できるのは、原則として市区町村から介護保険の「要支援」または「要介護」の認定を受けた人です。年齢で言うと、65歳以上の人、または40歳以上65歳未満で特定の疾病がある人が対象となります。
利用できる期間は、一人ひとりのケアプランに基づいて決められますが、ショートステイを連続して利用できる日数は最大で30日までと定められています。
ショートステイの種類
ショートステイには、利用者の状態やニーズに応じて大きく2つの種類があります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。
短期入所生活介護(一般型)
短期入所生活介護は、日常生活の支援や機能訓練を中心にサービスを提供する、一般的なタイプのショートステイです。食事や入浴といった身体介護や身の回りの生活支援、レクリエーションなどを通じて、利用者の心身機能の維持と向上を図ることを目的としています。
短期入所療養介護(医療型)
短期入所療養介護は、医療的なケアを必要とする要介護度の高い高齢者を対象としたショートステイです。看護師による医療処置や医師の管理下でのリハビリテーションなどを提供します。このサービスを提供できるのは、療養病床を持つ病院や診療所、介護老人保健施設といった施設に限られます。
ショートステイ勤務の主な仕事内容
ショートステイで働く介護スタッフは、利用者が滞在期間を快適に過ごせるようサポートします。ここでは、主な仕事内容を紹介します。
介護業務
仕事の中心となるのは、利用者の日常生活をサポートする介護業務です。食事の際の配膳や食事介助、安全に配慮した入浴のサポート、衣服の着替えやトイレへの誘導や排泄の介助などを行います。また、床ずれを防ぐための体位変換や、定期的な健康状態のチェック、服薬の確認なども担当します。
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レクリエーション
多くのショートステイでは、利用者に楽しく過ごしてもらうためのレクリエーションを実施します。内容は、体操やゲームなどの軽い運動、カラオケや手芸といった趣味活動、季節の行事などさまざまです。これらの活動は、単なる楽しみの提供だけでなく、身体機能の維持や認知症予防、ほかの利用者とのコミュニケーションを促す大切な機会となります。
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送迎業務
利用者の自宅と施設の間を送迎するのも、介護スタッフの大切な仕事の一つです。専用車両の運転はもちろん、乗り降りの際の介助も行います。
施設によっては送迎専門のスタッフが配置されている場合もありますが、送迎は利用者の家族と顔を合わせる機会です。そのため、送迎業務は家族からの相談を受ける重要なコミュニケーションの場にもなります。
夜勤業務
ショートステイは宿泊を伴うサービスのため、夜勤業務が発生します。主な仕事は、夕食の介助から始まり、就寝の準備、定期的な巡回、おむつ交換などの排泄介助、必要に応じた体位変換などです。
日中に比べて職員の数が限られるため、緊急時の対応など、冷静な判断力と幅広い知識が求められます。プレッシャーもありますが、利用者が夜間安心して休める環境を守る、やりがいの大きい業務です。
ショートステイ勤務には資格が必要?
ショートステイの介護職は、資格がなくても働き始めることが可能です。そのため、未経験から始められる職場も多くなっています。
ただし、無資格の場合は単独での身体介護(利用者の身体に直接触れて行う介助)ができません。そのため、無資格の人はできる業務の範囲が限定されています。食事の配膳や清掃、レクリエーションの補助といった周辺業務が中心になることが多いでしょう。
もし、介護職として長く働き、仕事の幅を広げていきたいと考えるのであれば、資格の取得がおすすめです。介護の入門資格である「介護職員初任者研修」や、2024年度から介護に直接携わる無資格者に受講が義務付けられた「認知症介護基礎研修」などを取得すると、より専門的なケアに関われるようになります。
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ショートステイ勤務のやりがいと魅力
ショートステイの仕事には、他の介護施設とは少し違った、特有のやりがいや魅力があります。ここでは、働く上での主なメリットを紹介します。
幅広い経験を積める
ショートステイは利用者の入れ替わりが頻繁にあるため、多くの利用者と接する機会があります。要支援の方から要介護度の高い方まで、さまざまな心身状態や個性を持つ利用者と関わる中で、自然と観察力やコミュニケーション能力が磨かれます。
利用者の規模に応じて柔軟に働ける
ショートステイの施設は、大規模なものから、家庭的な雰囲気を大切にする小規模なものまでさまざまです。利用者数が比較的少ない施設では、一人ひとりの利用者にじっくりと向き合い、丁寧なケアを提供することに集中できます。
一方で、スタッフの人数が多い大規模な施設では、教育・研修制度が充実していることが多く、未経験からでも安心して仕事を始めやすいです。困ったときにも相談しやすく、チームでケアの質を高めていく経験を積むことができます。
ショートステイ勤務に向いている人の特徴と仕事探しのポイント
ここまでショートステイの仕事について詳しく見てきましたが、どのような人がこの仕事に向いているのでしょうか。また、実際に仕事を探す際にはどのような点に注目すれば良いのかを解説します。
ショートステイ勤務に向いている人
もちろんすべてに当てはまる必要はありませんが、以下のような特徴を持つ方は、ショートステイの仕事で力を発揮しやすいでしょう。
コミュニケーション力と観察力に強みがある人
ショートステイでは、初めて会う利用者やその家族と、限られた時間の中で信頼関係を築く必要があります。人と話すのが好きで、相手の気持ちを汲み取りながら対話できるコミュニケーション力は大きな強みになります。また、利用者の表情や動作、ふとした言動から体調の変化や心の状態を察知する観察力も重要です。
臨機応変な対応が得意な人
利用者の入れ替わりが多いこともあって、日々の業務は常に変化します。また、利用者の体調が急に変わったり、家族から緊急の依頼が入ったりと、想定外の状況が発生することも少なくありません。状況を素早く把握し、何が重要かを判断して優先順位をつけ、冷静に行動できる柔軟性と判断力は不可欠なスキルです。
仕事探しのポイント
ショートステイの求人を探す際には、いくつかのポイントを押さえておくことで、自分に合った職場を見つけやすくなります。
施設形態を調べる
まず確認したいのは、その施設が「短期入所生活介護(一般型)」なのか、「短期入所療養介護(医療型)」なのかという点です。前者は生活支援が中心ですが、後者は医療的ケアが求められるため、仕事内容や必要とされるスキルが異なります。これから身につけたいスキルなどを考え、どちらのタイプが自分に合っているかを検討すると良いでしょう。
給与や待遇の違いを確認する
ショートステイは、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、他の施設に併設されている場合が多いです。この併設先の施設の種類によって、給与水準や福利厚生などの待遇が異なります。例えば、一般的に特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人は、比較的安定した給与体系になっている傾向があります。
求人情報を見る際には、どのような施設に併設されているのかを確認しましょう。
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FAQ|ショートステイに関するよくある質問
ショートステイの仕事に興味を持った方や、これから介護の現場で働きたいと考えている方に向けて、よく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。働き方や必要な資格、やりがいについての理解を深め、自分に合った職場選びにお役立てください。
- Q1.ショートステイとはどのような介護サービスですか?
- A
ショートステイは、要介護者が一時的に施設に宿泊して介護を受けるサービスです。家族の都合や介護負担の軽減(レスパイトケア)を目的に利用され、生活支援や身体介護を中心に提供されます。
- Q2.ショートステイで働くには資格が必要ですか?
- A
- Q3.ショートステイ勤務のやりがいとは何ですか?
- A
多様な利用者と関わる中で観察力や対応力が磨かれ、直接「ありがとう」と感謝される機会も多く、人の役に立っている実感が得られます。短期滞在だからこそ、限られた時間の中で信頼関係を築くやりがいがあります。
- Q4.どんな人がショートステイに向いていますか?
- A
初対面の人とでもスムーズに関われるコミュニケーション力、変化に柔軟に対応できる判断力やフットワークの軽さがある方に向いています。観察力や細やかな気配りも大切な資質です。
- Q5.ショートステイの仕事探しで注目すべきポイントは?
- A
施設の種類(生活介護型 or 療養介護型)、併設先の違い(特養・老健など)、待遇や研修制度の有無を確認しましょう。自分がどんなケアに関わりたいかを考えて選ぶと、長く働ける職場が見つかります。
ショートステイの仕事で、新たなキャリアの一歩を踏み出そう
この記事では、ショートステイの仕事内容からやりがい、仕事探しのポイントまでを解説しました。ショートステイは、在宅で暮らす高齢者とその家族の生活を支える、社会にとってなくてはならない大切なサービスです。
また、利用者から「ありがとう」といった感謝の言葉を直接受け取る機会も多く、人の役に立っていることを日々実感できるでしょう。子育てなどで培ってきたコミュニケーション能力や気配りは、この仕事で必ず活かせるはずです。もし、誰かを支える仕事に興味があるのなら、ショートステイで働くことを選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。
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現在はキャリアアドバイザーとして、求職者の就労サポートや企業支援を担当。採用担当経験者としての豊富な経験を活かし、求職者の強みを引き出す面接対策にも定評がある。介護業界の発展に貢献するべく、求職者・企業双方の支援に尽力。
プライベートでは息子と共にボーイスカウト活動を再開し、奉仕活動を通じて心を磨くことを大切にしている。
