~なぜ、直ぐに辞めてしまうのか?介護人材不足の考え方と対応~
介護・医療業界で「採用難」や「人材不足」が叫ばれて久しくなります。
しかし、私たちが全国各地の介護事業所や医療法人の経営者・採用担当の方々とお話をする中で感じるのは、「採用できない」と同時に「採用した人が定着しない」ことへの悩みの深さです。
では、なぜ定着しないのでしょうか。どうすれば採用コストを無駄にせず、現場の戦力として育て、そして活躍してもらえるのでしょうか?
本コラムでは、私たちが長年にわたり現場と経営の両軸から蓄積してきた実践知をもとに、「採用・定着・育成」を一体的に捉える視点と具体策をご紹介していきます。
終身雇用は30年前に終わり|転職が当たり前の時代
終身雇用制度が崩壊した現在、介護業界のみならず多くの業種で転職が一つのキャリア戦略として認知されています。介護従事者も、自らのキャリアパスを自主的に考え、より良い職場を探す傾向が強くなっています。そのため、組織としてはスタッフの成長環境を整え、働きがいや将来性を感じてもらえる働き方を提供する必要があります。転職が当たり前の時代だからこそ、人材育成の継続や魅力的な働き方の提示が人材確保において欠かせないのです。
定着目標期間という発想|“定着”は測れるものにできる
採用を「投資」と考えるなら、かけたコストは回収できる見通しを持つべきです。
たとえば30万円かけて採用した人が半年で辞めてしまえば、十分な成果を得る前に損失だけが残ることになります。
私たちはこの構造を、あくまで比喩として「減価償却」に例えています。減価償却とは、設備などの価値を年数に応じて配分し、計画的に活用する会計の考え方です。
人材もモノではありませんが、「採用=成長への投資」と捉えれば、一定の期間でどう戦力化するかを考えることは自然な発想です。
実際、私たちはモノには必ず期限や耐用年数を設けるのに、人材には「ずっといてくれるはず」と淡い期待を持ちがちです。
だからこそ、人にこそ向き合うために「区切り=期間」の意識が必要です。
その具体策が「定着目標期間」です。
これを軸に、育成計画や給与設計、求人票、面接の伝え方までを設計すれば、採用活動は単なる補充ではなく、組織の成長戦略になります。
面接で「長く働けますか?」と聞く前に伝えるべきこと
定着期間のゴールを設定することは、組織側だけでなく、職員本人にとっても「何を目指せばよいか」を明確にするための指針になります。
例えば、「うちは“石の上にも三年”ではなく、“石の上にも一年”です」と伝えたらどうでしょう?
これは、当社が使っている表現の一つであり、「一年間頑張れば、どこの職場でも基本業務に対応出来る人材に育てますよ」というメッセージを込めています。
もちろん、そう伝えるには一定の育成計画が必要です。ですが、求職者にとっては「この職場なら成長できそう」という未来のイメージを描けることが何より重要です。
つまり、“いてくれるだけでありがたい”ではなく、“ここで私たちと一緒に成長してほしい”という期待を伝えることが、最初の動機形成の第一歩になります。
介護人材不足を解消する具体的な施策【全6回シリーズ+特別編】
ここでは、介護人材不足を解消するための全6回の施策と特別編について、その概要を紹介します。※詳細に関しては、各シリーズの詳細ページをご覧ください。
介護職員の採用と定着を成功させるには、事前に戦略をしっかりと立てることが求められます。
例えば、Web上で上位表示される記事の事例においても、面接時の対応や職場のブランドづくりに注力することで採用率を高めた事業所が数多く報告されています。
効果的な採用ツールや明確な定着目標期間の活用、外国人材の受け入れなど、多角的なアプローチで取り組むことが重要です。
このシリーズではそれらを順番に解説し、介護人材不足の解消や介護事業所の人材育成を含めた統合的なロードマップの作成、企業ブランディングの一助になりましたら幸いです。
尚、皆様からのご指摘やご質問は、私たちの商品やサービスの質の向上になりますので、是非お寄せください。
【第1回】介護人事考課目標|介護人材採用の“戦略”を練るコツは期間
介護現場では、最初の採用段階で定着させたい期間を想定しておくことが採用戦略を立てるうえで非常に有効です。例えば、最低1〜2年は働いてほしいという目標を掲げるだけでも、それに合った育成プランやフォロー体制を整備しやすくなります。期間を意識することで必要とする人材像が明確になり、面接段階でのすり合わせもしやすくなるため、早期離職を抑える効果が期待できます。
介護人材の定着を前提とした採用戦略「定着目標期間」とは
ゴールを決めるから評価ができる、評価をするから信頼関係が育まれます。ゴールを決めるポイントは?
続きはこちら⇒「【第1回】介護人事考課目標|介護人材採用の“戦略”を練るコツは期間」
【第2回】介護職の離職率は面接時の応対次第で大きく変わる
面接は求職者が組織に抱く印象を大きく左右する場です。応募者が感じる“この施設なら私を活かしてくれそう”という確信を得られれば、入職後の定着率が高くなります。実際に面接時のコミュニケーション次第で、複数の選択肢があった中であえてその施設を選ぶケースも少なくありません。こうした面接での応対力や情報の伝え方を高めることで、離職率の改善に直結する効果が期待できます。
面接時に確認すべきポイントと育成を前提とした対話
あまりの人材不足で「いてくれるだけでありがたい」なんてお決まりのセリフを使っていませんか?「いるだけでいいなら誰でもいいよ」と言いているようなものです。相手のパーソナルに向き合う姿勢になるにはどうしたらよいのか?
続きはこちら⇒「【第2回】介護職の離職率は面接時の応対次第で大きく変わる」
【第3回】介護士の採用を大きく変える採用戦術・採用マーケティング
現代の採用活動では、求人票の作成やSNSの活用など、マーケティングの考え方が欠かせません。今や給与や仕事内容の情報だけでなく、職場の雰囲気やキャリアアップ制度など、求職者が“ここで働きたい”と思える要素をいかに際立たせるかが重要です。また、介護現場への理解を深めてもらうためのオンラインツールや動画配信など、情報発信の多様化が採用にも大きく影響しています。

介護士の採用を成功させる求人票や採用ページの基本
求人票や採用ページの最適化はできていますか?自社で本当に求めたい人材像を描けていますか?
続きはこちら⇒※只今準備中「【第3回】介護士の採用を大きく変える採用戦術・採用マーケティング」
【第4回】採用力は営業力!「行動量」と「能力」が決め手
介護施設の採用は、営業と同様に行動量とニーズ把握能力が大きなポイントになります。求職者が求めている要望や不安を汲み取り、それに応じたアプローチを数多く実行することで、施設への好印象を効果的に築けるのです。あらゆる場面でのコミュニケーションを大切にし、“この施設なら安心して働ける”と応募者に感じてもらう工夫を積み上げていくことが成果につながります。
採用力を上げるには?営業とマーケティングの違い
営業とマーケティングを一緒にしていませんか?恐ろしいことに、いくら応募が集まっても採用力がゼロなら採用数もゼロです。営業の原理原則とは?
続きはこちら⇒※只今準備中「【第4回】採用力は営業力!「行動量」と「能力」が決め手」
【第5回】介護職が辞める理由・離職からブランド戦略が始まる
高い離職率が課題とされる介護業界では、辞めたスタッフの声を分析することが組織改善の大きな鍵となります。実際に離職者の多くは、職場の人間関係や評価制度の不透明さなど、環境要因を理由に挙げるケースが少なくありません。こうした“改善すべき点”を明らかにし、それを組織のブランド戦略に生かすことで、スタッフや利用者にも選ばれる施設へと進化できます。
離職した介護人材は同じ地域で循環するのを忘れないで
離職を怖がらないでください。転職大航海時代を生き抜く企業ブランド力向上のポイントは?
続きはこちら⇒※只今準備中「【第5回】介護職が辞める理由・離職からブランド戦略が始まる」
【第6回】外国人介護士の採用・教育・成長が次世代の人材戦略
今後ますます需要が高まることが予測される介護職において、外国人材の活用は不可欠な選択肢となりつつあります。特定技能や技能実習制度など、多様な在留資格を活用することで人手不足の解消が期待できますが、そのためには受け入れ体制や日本語教育の整備が重要になります。彼らが安心して働ける仕組みを作り、組織の多様性を高めることで、利用者の満足度向上にもつなげていくことが可能です。
外国人介護士管理者がこれからの介護人材のキーマン
外国人介護士の採用は当たり前。これからは外国人管理者・経営者の時代がすぐそこまで来ています。
続きはこちら⇒※只今準備中「【第6回】外国人介護士の採用・教育・成長が次世代の人材戦略」
【特別編】全シリーズの総まとめ|人材不足解消をサポート<無料DLあり>
これまでご紹介した全6回の施策を一挙に振り返ると、採用から定着、そして離職者の意見を活用したブランド戦略や、外国人介護士の受け入れ・育成準備など、複数の取り組みを組み合わせることが重要であるとわかります。特に、組織全体でスタッフの育成方針や評価制度を見直すことが人材不足解消の根幹となるでしょう。まとめ資料や成功事例の無料ダウンロードを活用し、すぐに実践できるノウハウを得ていただければ幸いです。
教育導入・支援サービス活用であなたの会社も介護人材不足を改善
続きはこちら⇒「【特別編】全シリーズの総まとめ|人材不足解消をサポート<無料DLあり>」
ベンチマークになる企業を見つけよう|目標設定と行動量アップに効果的
他社の成功事例や取り組みを参考にすることで、自社の目標設定や行動量の基準を明確化する手掛かりとなります。
人材不足を解消している施設には、必ずといってよいほど明確な目標と実行プランが存在します。特に採用数や離職率、スタッフの定着年数など、具体的な数値目標を掲げることでチーム全体の意識を合わせやすくなります。また、その成功事例をベンチマークすることで、自施設の課題や不足している部分を客観的に把握でき、解決へのヒントを得られるでしょう。
企業こそ目標設定が必要
事業規模が小さい施設でも、企業全体として“どれだけの人員が必要で、いつまでに達成するか”という指標を持つことは不可欠です。これは採用担当者だけでなく、現場のスタッフや管理職含め、組織全体が同じ方向を向くための土台になります。各種KPIを設定し、達成状況を定期的に振り返ることで、対策の精度が高まり、人材不足の解消へと近づくことができます。
ベンチマーク企業は3段階で考える
目指すべき企業を複数設定し、到達難易度に応じて「A・B・C」の3段階に分ける方法があります。これにより、現実的な目標と挑戦的な目標のバランスがとれ、計画の柔軟な運用が可能になります。
- A:長期的に目指したい理想的な企業(例:3年以上の到達を想定)
- B:1〜3年以内で達成を目指す現実的な中期目標
- C:1年以内に手が届く短期的な到達目標
なお、ベンチマークの指標には、Webの流入数や検索順位、求人票の完成度などを活用すると、数値的な比較がしやすくなります。
目標設定(期限)があるから行動し企業も人も経済も成長する
期限を切った目標は、日々の行動を加速させる原動力です。スタッフ一人ひとりが短期的なタスクから長期的なビジョンまで、時間軸を意識して取り組むことで、施設全体の成長スピードも上がります。結果として、介護業界全体が活性化し、地域の経済や社会にもプラスの影響を及ぼす仕組みづくりが進むでしょう。
介護職動向&意識マンスリーレポートも参考にしてください
介護業界に関する調査データやレポートは数年前に作成されたものが主流であり、最新の情報を得ることが難しいのが現状です。
そこで、湘南国際アカデミーでは、独自調査で毎月最新の情報をお届けできるように「介護職動向&意識マンスリーレポート」を発行しております。是非、参考にしてください。
こうした情報を活用することで、現在の就業環境や市場ニーズをタイムリーに正しく把握し、採用戦術や処遇改善のヒントにもなることから、多くの介護・医療法人様にご好評をいただいております。
FAQ|介護人材不足に関するよくある質問
介護人材不足に関して、事業所の皆様から多く寄せられる疑問や不安に対して、湘南国際アカデミーが実際の現場での支援経験をもとに、分かりやすくお答えします。採用から定着、人材育成までのヒントとして、ぜひご活用ください。
- Q1.定着率の改善にはどのようなアプローチが有効ですか?
- A
「定着目標期間」の設定が効果的です。1年などの期間を区切ることで、育成計画や面接での伝え方が明確になり、求職者も自分の成長ビジョンを描きやすくなります。育成ロードマップを整備し、「1年で基本業務をこなせる力がつく」といったメッセージを具体的に伝えましょう。
- Q2.面接時に伝えるべき最重要ポイントは何ですか?
- A
キャリアの見通しや教育サポート体制など、応募者が「成長できる職場」と感じられる情報提供が重要です。「一年間頑張れば、どこの職場でも基本業務に対応出来る人材になれますよ」というような分かりやすいフレーズを用い、育成に対する覚悟と支援姿勢を示すことで、入職動機を高められます。
- Q3.採用がうまくいかない場合、見直すべき点は?
- A
求人票や採用ページに、求める人材像や職場の魅力が明確に打ち出されているかを確認してください。また、SNSや動画を活用して、職場の雰囲気やスタッフの声を発信することも効果的です。採用は“営業”の視点を取り入れることが成功のカギとなります。
- Q4.外国人介護士の採用に不安がありますが、サポートはありますか?
- A
湘南国際アカデミーでは、外国人材の日本語教育・介護技術研修・生活支援など、登録支援機関として、受け入れから定着までを一貫してサポートしています。特定技能制度などを活用した実績も多数ございますので、安心してご相談ください。
- Q5.小規模事業所でも取り組める人材戦略はありますか?
- A
はい、規模に関わらず「目標設定」と「定期振り返り」を基本に、行動量を増やすことが効果的です。まずは1年以内に達成可能な短期目標を定め、ベンチマーク企業の成功事例を参考にすると具体的な改善が図れます。
まとめ|人材不足対策はお任せください。
介護・医療法人の人材不足を根本から解決するには、教育と採用の両面からの支援が欠かせません。
湘南国際アカデミーでは、専門研修やキャリアサポートを通じて、現場で長く活躍できる人材の育成を支援しています。
全国の介護事業所様へのサポートを行っておりますので、エリアや事業規模など関わりなくお気軽にご相談下さい。
無料の提携事業所登録で、人材育成と採用支援を強化
無料の提携登録をしていただくことで、各種介護資格講座や研修等の割引やセミナー優先案内、介護人材の動向データなど、多くの特典をご利用いただけます。提携登録に際して費用は一切かかりません。ぜひこの機会にご検討ください。
続きはこちら⇒「【第1回】介護人事考課目標|介護人材採用“戦略”のポイントは目標期間」
父親が在宅介護を必要としたため、帰国。その後は介護の資格を取得し、訪問入浴に従事。数年間、事業コンサルティング・マーケティング業界にて営業職を経験し、2011年に株式会社アメイジュにて湘南国際アカデミーを立ち上げる。これまでの卒業生はのべ43,000名以上。
株式会社アメイジュ代表取締役社長、NPO法人湘南国際アカデミー代表理事、介護福祉業界の人材採用支援、コンサルティング、マーケティングサポートを手掛ける。業界全体の活性化に貢献できるよう、日々尽力している。
