
江島一孝(介護福祉士)
この記事の監修者
介護福祉士、実習指導者、介護支援専門員として10年以上の経験を持ち、湘南国際アカデミーで介護職員初任者研修や実務者研修の講師、介護福祉士国家試験の対策テキスト執筆を担当。
介護士としてのキャリアを考えている方のために、給料の実態や年収アップのポイントを分かりやすく解説します。介護士は、高齢化が進む日本で欠かせない存在ですが、具体的な給与体系は広く知られていないのが現状です。
ここでは、介護士の給料や各種手当、地域差や資格による収入の違いなどをまとめます。これから介護業界に就職・転職を考えている方や、現在働いている方のキャリア形成にお役立てください。
介護士の給料の平均と内訳
介護業界で働く際には、給料の仕組みを理解しておくことが大切です。以下では、介護士の平均給与と、基本給・手当・賞与など具体的な内訳を見ていきましょう。
日本全体の平均給料

日本全体の介護士の平均給料を知ることは、自分の給与水準を客観的に把握するうえで重要です。たとえば、厚生労働省(※1)のデータによれば、2022年時点での介護士の平均月収は約24万円です。
自分の給料がこの平均と比べてどの程度かを確認し、キャリアアップや給料交渉の指標にしましょう。平均給料を知ることで、今の待遇が適正かどうかを冷静に判断できます。
※1:厚生労働省「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」などが参考となります。
基本給と各種手当

介護士の収入は、主に「基本給」と「各種手当」で構成されています。基本給は経験年数や保有資格、スキルなどで変動し、経験の浅い新人介護士の場合は低めに設定される傾向があります。
そこに夜勤手当や住宅手当、交通費などが上乗せされることで、最終的な月収や年収が決まります。夜勤手当は高額なことが多く、夜勤回数が増えるほど給料も増える仕組みです。湘南国際アカデミーの介護職員初任者研修を修了した受講生も、実務者研修などを重ねることで基本給が引き上げられ、各種手当の条件も充実してきているとの話をよく聞きます。
賞与と昇給制度

多くの介護現場では、年に2回の賞与や定期的な昇給制度を導入しています。賞与が生活費の不足分を補うケースもあるため、介護士にとっては収入の安定に大きく寄与します。
昇給制度がしっかりしている職場なら、経験を積むほど給料が上がるためモチベーションも維持しやすいでしょう。賞与や昇給の有無や回数は、転職や就職活動の際に必ずチェックしておきたいポイントです。
介護士の給料を左右する要因と地域差
介護士の給料は、経験年数・スキルレベル・地域差・勤務先の種類など複数の要素で変わります。ここでは、それぞれがどのように年収へ影響を与えるか詳しく見ていきましょう。
経験年数とスキルレベル

経験が豊富で専門性の高い介護士ほど、高い給料を得やすい傾向にあります。たとえば、認知症ケアやリハビリに精通していると重宝され、基本給や手当が上積みされるケースが多いです。
逆に、経験年数が浅いほど給料は低めになりがちですが、資格取得や研修受講を通じてスキルを高めれば、早期に給料アップが見込めるでしょう。
地域差と施設種類

介護士の給料は、都市部か地方か、また介護施設の種類によって大きく変わります。都市部では物価や人材需要の影響で給料が高めに設定される一方、地方は比較的低めですが、近年では地方都市でも人材不足が深刻化し、賃上げに取り組む施設が増えつつあります。
さらに、特別養護老人ホームや有料老人ホームなど施設形態によっても待遇が異なり、高級老人ホームなどは給料がやや高めに設定される傾向があります。
地域別の年収ランキング
一般的に、都市部では年収が400万円を超える施設も珍しくありませんが、地方都市では300万円台前半のことも多いです。ただし、最近は地方でも給与水準の改善が進んでおり、施設によっては都市部と差が少なくなってきています。
転職を考える方は、希望地域の給料相場を事前に調べ、実際に求人情報などで比較することをおすすめします。
勤務先による給料の違い

勤務先の種類や規模、運営方針によって給与や手当の水準は大きく変わります。大都市にある大規模施設は給料が高めで安定しやすく、地方の小規模施設はやや低めになるケースが多いです。
一方、特別養護老人ホームや介護老人保健施設など公共性の高い施設は、自治体からの支援を受けているため、給与体系が安定している場合が少なくありません。自分の希望や生活費、将来設計に合わせて勤務先を検討してみましょう。
介護職員処遇改善加算による給与手当の違い

介護職員処遇改善加算は、国(厚生労働省)の施策により介護職員の賃金改善を支援する制度です。加算区分Ⅰ~Ⅴまであり、施設が条件を満たすと月額数万円相当が介護士の給与に反映されます。
キャリアアップ制度や研修の充実度などの要件をクリアしている施設ほど高い加算区分が適用されるため、就職・転職時にチェックしておくと良いでしょう。
※以下の月額は、介護職員1人当たりの金額です。
- 加算Ⅰ:月額37,000円相当
- 加算Ⅱ:月額27,000円相当
- 加算Ⅲ:月額15,000円相当
- 加算Ⅳ:月額13,500円相当
- 加算Ⅴ:月額12,000円相当
給料アップのためのキャリア戦略
介護士として収入を上げたいなら、資格取得やスキルアップ、適切な職場選び、交渉スキルの強化が有力な手段です。ここでは具体的な年収アップの方法を紹介します。
年収アップのためのポイント

資格取得は給料アップへの近道です。介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネージャー)など上位資格を取得すると手当が増える可能性が高まります。
また、リーダーシップやマネジメント能力を身につけると、役職手当や昇格のチャンスが広がり、結果的に年収アップにつながるでしょう。
資格取得やスキルアップ

介護福祉士やケアマネージャーの資格を持つと、高度な専門性が評価され、給料や手当が増える傾向にあります。認知症ケア専門士や福祉用具専門相談員といった資格も、現場のニーズに合わせたスキルアップとして有効です。
湘南国際アカデミーでは、実務者研修や各種講座を通して多角的な学びをサポートしており、受講生のキャリアアップに寄与しています。
転職活動と適切な職場選び

転職は待遇改善を狙う有効な手段です。特養や有料老人ホームなど施設形態や地域の相場を確認し、夜勤や処遇改善加算の状況、昇給制度などを見比べましょう。
求人情報の段階で、給料や手当、福利厚生などを入念にチェックすることが肝心です。転職エージェントや専門求人サイトを活用し、自分が理想とする労働条件を整理しておくとスムーズに進められます。
交渉スキルの向上

給料交渉の場面では、これまでの実績や保有資格、スキルなどを具体的にアピールすることが重要です。相場や他施設の待遇を事前に調査し、雇用主に納得してもらえる根拠を提示しましょう。
交渉が苦手な場合は、面接対策のセミナーや専門家のアドバイスを受けるのも効果的です。湘南国際アカデミーでは、キャリア形成について相談できる機会を設けておりますので、ぜひご活用ください。
介護士としての給料とライフプラン
介護士の給料を考えるうえで、生活費とのバランスや将来の資産形成も見逃せません。十分な収入が得られないと、日常のストレスや経済的負担が大きくなり、モチベーションの低下につながります。
生活費とのバランス

介護士の給料と家賃、光熱費、交通費などの生活コストを比べ、無理のない家計管理を心掛けることが大切です。余裕があれば貯蓄や投資に回すことで、将来への安心感も高まります。
都市部で働く場合は生活費が高くなりやすいため、地方への転職や職場選択で生活水準を保つという選択肢もあります。
給料管理と資産形成

給料を管理し、長期的な視点で資産形成を行うことは、介護士として安定した生活を送るうえで重要です。iDeCoやNISAなどの制度を活用し、少額からでもコツコツ積み立てていくと将来的な経済的基盤を強固にできる可能性が広がります。
節約や家計の見直しをしつつ、無理のない範囲で資産形成に回すことで、少しでもゆとりあるライフプランを描ける可能性は高まります。なお、資産形成とはいっても投資にはリスクが伴うため、自身の判断で行い、必要に応じて専門家に相談することも大事です。
FAQ:介護士の給料に関するよくある質問
- Q1.介護士の平均年収はどのくらいですか?
- A
厚生労働省の調査などによると、2022年時点での介護士の平均月収は約24万円、年収は300万〜350万円前後が目安とされています。ただし、地域や施設によって大きく変動します。
- Q2.介護職員処遇改善加算とは何ですか?
- A
介護士の賃金改善を目的とした国の制度です。要件を満たした事業所が加算を受け、その一部が介護士の給料に反映されます。加算区分Ⅰ~Ⅴまであり、研修制度やキャリアパスが整っている事業所ほど受給額が高くなります。
- Q3.どの資格を取得すれば給料が上がりますか?
- A
代表的なものに介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネージャー)があります。これらの資格を取得することで手当が上乗せされたり、管理職を目指せるなど給与アップにつながる可能性が高いです。
- Q4.転職を考えていますが、何から始めると良いでしょうか?
- A
まずは求人情報サイトや転職エージェントで相場を確認し、自分の希望条件を明確にしておきましょう。地域や施設形態、夜勤の有無、処遇改善加算の状況など、比較検討するポイントを整理するとスムーズです。
湘南国際アカデミーでは、専任のキャリアコンサルタントや介護福祉士が介護職の就職・転職サポートを行っております。お気軽にお問い合わせください⇒【就職・転職サポート】
- Q5.昇給や賞与が少なく、収入が伸び悩む場合の対策は?
- A
資格取得やスキルアップ、交渉スキルの向上、あるいは転職活動など複数の方法を検討してください。職場選びを見直すだけでも収入アップにつながる可能性があります。
お気軽にお問い合わせください⇒【就職・転職サポート】
介護士の給料に関するまとめと展望
介護士の給料は、経験年数・スキル・地域・施設種類など多角的な要素で決まります。資格取得やキャリアアップに努めれば、着実に収入を増やせる可能性があるでしょう。特に介護福祉士やケアマネージャーなどの資格は給料アップに直結しやすく、長期的な職業安定にも役立ちます。
また、転職を検討する際は、給料や手当に加え、施設の規模や処遇改善加算の有無なども比較検討しましょう。高齢化が進む日本では、介護士の需要がさらに高まる見込みです。今後は、国や自治体による賃金引き上げ施策なども進展が期待されるため、自身のスキルを磨きながら、最適な働き方やライフプランを見つけていくことが大切です。
その他、介護事業所や医療機関などにおいて当校の「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
