介護現場で外国人スタッフと一緒に働く機会は、この数年で一気に増えました。特定技能や技能実習、EPA(経済連携協定)に加え、2027年4月には新たな「育成就労制度」も本格的にスタートする予定です。人手不足が続くなかで、外国人材の受け入れは今後さらに広がっていくとみられます。
その一方で、現場からは「指示の伝え方が難しい」「教える側のスキルに個人差がある」といった声も聞かれます。今回は、外国人スタッフと共に働く介護現場で、日本人介護職員に今後どのような役割やスキルが求められるのか、そしてそれを裏付ける資格について解説します。
介護現場の外国人材受け入れは今後も拡大していく見込み
厚生労働省が2025年5月9日に公表した資料によると、介護関係職種の有効求人倍率は2025年3月時点で3.97倍と、全職業平均の1.16倍を大きく上回っています。地域差も大きく、最も高い地域では7倍を超える水準です。また同資料では、介護職員の必要数は2026年度に約240万人(2022年度比で約25万人増)、2040年度には約272万人(同約57万人増)にのぼると推計されています。
こうした需給ギャップを埋める担い手のひとつが外国人介護人材です。特定技能・技能実習・EPAなど複数の制度が並行して運用されており、2027年4月からは技能実習に代わる新制度「育成就労」も始まる予定です(育成就労制度の詳細は介護技能実習生の指導方法|日本語・OJT・定着支援の実務ガイドもあわせてご覧ください)。今後、外国人スタッフと机を並べて働く、あるいは新人として指導する立場になる介護職員は確実に増えていきます。
詳細不明な部分として、育成就労制度の具体的な運用細則や訪問系サービスへの適用範囲については、2026年9月時点でも国の検討会・省令改正が続いており、確定していない事項があります。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公表資料をご確認ください。
現場でよくある「教える側」の悩みとその背景
外国人スタッフと働く現場でよく挙がる悩みには、次のようなものがあります。
- 専門用語や介護記録の言い回しが伝わりにくい
- 「なぜその手順が必要か」の背景まで説明できていない
- 指導係によって教え方にばらつきがあり、定着率に差が出る
- 文化・生活習慣の違いから生じる誤解に、とっさに対応しづらい
これらの多くは、外国人スタッフ側だけの課題ではなく、「教える側」の指導スキルや、業務の根拠を言語化する力に起因することが少なくありません。逆にいえば、指導する側が体系立てた知識と伝え方を身につけることで、現場の負担は大きく軽減できます。

介護福祉士/介護技能実習評価試験評価者
【監修者コメント】
私は特別養護老人ホームで10年間、研修受け入れ担当として年間100名以上の研修生を指導してきました。
その経験から言えるのは、外国人スタッフに限らず「新人が伸びるかどうかは、教える側が業務の目的・根拠をどれだけ言葉にできるかで決まる」ということです。
介護技能実習評価試験の評価者としても、単に手順を覚えているかだけでなく、なぜその介助が必要かを理解できているかを重視して評価しています。実務者研修で学ぶ「介護過程」や「医療的ケア」の知識は、外国人スタッフに手順の意味を説明する土台にもなります。
介護技能実習評価試験の制度そのものについては、外国人技能実習機構の公式ページ(介護職種の基準について|外国人技能実習機構)で詳しい基準が確認できます。
指導力の土台になる資格・研修を比較
「教える力」は感覚だけに頼らず、資格や研修を通じて体系的に身につけることができます。代表的なものを比較しました。
| 資格・研修 | 主な学習内容 | 指導力とのつながり | 取得の目安 |
|---|---|---|---|
| 介護職員初任者研修 | 介護の基本、生活支援技術 | 自分自身の基礎固め。教える前提となる知識を整理できる | 約1〜4ヶ月 |
| 実務者研修 | 医療的ケア、介護過程、たん吸引等 | 手順の「根拠」を説明できるようになり、後輩指導の土台になる | 約6ヶ月〜(保有資格により短縮可) |
| 介護福祉士(国家資格) | 実務者研修の内容に加え、実技・知識の国家試験レベル | チームのリーダーとして指導計画を立てる立場に | 実務3年以上+実務者研修修了等 |
| 介護技能実習評価試験(評価者) | 技能実習生の到達度を客観的に評価する視点 | 「何ができれば合格か」を明確に説明する力が身につく | 一定の実務経験・要件あり(実施団体の公表基準による) |
特に実務者研修は、初任者研修よりも医療的ケアや介護過程を体系的に学ぶため、「なぜこの介助が必要か」を言語化する力を養いやすい研修です。外国人スタッフに限らず、新人指導やチームリーダーを任される職員にとって、実務者研修は指導力の土台づくりに直結します。
外国人スタッフと働くうえでのチェックリスト
現場ですぐに使える、指導・コミュニケーションのチェックポイントをまとめました。
- 専門用語を使うときは、やさしい日本語や図・写真で補足しているか
- 手順だけでなく「なぜそうするのか」の理由をセットで伝えているか
- 一度に多くの情報を詰め込みすぎていないか(1回1テーマを意識)
- 質問しやすい雰囲気づくりができているか
- 指導内容を記録し、担当者間で共有できているか
- 文化・宗教・生活習慣の違いについて、事前に確認・配慮しているか
こうした指導スキルは、日本人の新人スタッフや実習生にも共通して役立つものです。教える対象が誰であっても、根拠を言語化し、相手の理解度に合わせて伝える力は、これからの介護現場でますます重要になっていきます。
FAQ|外国人スタッフと働く介護現場の指導力
- Q1.外国人スタッフへの指導で、まず何を意識すればよいですか?
- A
手順を教えるだけでなく、「なぜその手順が必要か」という根拠をセットで伝えることが大切です。専門用語はやさしい日本語や図・写真で補足し、一度に多くの情報を詰め込みすぎないようにしましょう。
- Q2.実務者研修は指導力の向上に役立ちますか?
- A
役立ちます。実務者研修では医療的ケアや介護過程を体系的に学ぶため、「なぜこの介助が必要か」を言語化する力が養われます。この力は、外国人スタッフに限らず新人指導全般の土台になります。
- Q3.2027年4月に始まる育成就労制度は、技能実習と何が違いますか?
- A
育成就労制度は技能実習に代わる新制度として2027年4月に本格スタートする予定です。ただし具体的な運用細則や訪問系サービスへの適用範囲は、2026年9月時点でも国の検討会・省令改正が続いており未確定の部分があります。最新情報は出入国在留管理庁・厚生労働省の公表資料でご確認ください。
- Q4.介護技能実習評価試験の評価者にはどうすればなれますか?
- A
一定の実務経験・要件があり、具体的な基準は実施団体が公表しています。外国人技能実習機構や一般社団法人シルバーサービス振興会の公式ページで、介護職種の基準や評価試験制度の詳細を確認できます。
- Q5.言葉の壁がある外国人スタッフには、どう教えればよいですか?
- A
専門用語をやさしい日本語や図・写真で補足し、1回1テーマを意識して伝えます。あわせて、文化・宗教・生活習慣の違いを事前に確認・配慮し、質問しやすい雰囲気をつくることも重要です。
まとめ:指導力は資格取得の過程でも磨ける
外国人スタッフと共に働く場面が増えるいま、日本人介護職員に求められているのは、語学力そのものよりも「業務の根拠を分かりやすく伝える力」です。この力は、実務者研修や介護福祉士の学習過程で扱う「介護過程」「医療的ケア」の知識を通じて、着実に身につけることができます。将来的にチームリーダーや実習指導的な役割を担いたい方は、まず実務者研修から検討してみてはいかがでしょうか。
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あわせて読みたい:介護人材不足の現状・原因・対策を解説
出典・参照元
- 厚生労働省 第1回社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会 資料5「介護人材確保の現状について」(令和7年5月9日公表)
- 外国人技能実習機構「介護職種の基準について」
- 一般社団法人シルバーサービス振興会「介護技能実習評価試験とは」
- 湘南国際アカデミー「介護技能実習生の指導方法|日本語・OJT・定着支援の実務ガイド」(自社関連記事)
本記事は2026年9月17日時点の公開情報にもとづいて作成しています。育成就労制度の運用細則など一部制度は検討・改正が続いており、内容は今後変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省・出入国在留管理庁等の公式発表をご確認ください。
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湘南国際アカデミーでは初任者研修・実務者研修・介護福祉士受験対策の講師を務めるほか、受験対策テキストの執筆も担当。
介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ支援、事業所向けスキルアップ研修のプロデュースなど、人材確保・育成・定着に向けた幅広い活動を展開している。






