
江島一孝(介護福祉士)
この記事の監修者
介護福祉士、実習指導者、介護支援専門員として10年以上の経験を持ち、湘南国際アカデミーで介護職員初任者研修や実務者研修の講師、介護福祉士国家試験の対策テキスト執筆を担当。
2026年から導入が検討されている「パート合格制度」は、介護福祉士国家試験の受験科目をA・B・Cの3パートに分け、それぞれで合格ラインを達成したパートだけ部分合格として認める仕組みです。一度に全科目を合格しなくても良いため、学習負担を軽減できる点が注目されています。
高齢化の進行で深刻化する介護人材不足の対策としても期待が寄せられ、外国人を含む幅広い受験者が段階的に資格取得を目指しやすいメリットがあります。本記事では、この新制度の背景や試験パートの区分、再受験方法などを丁寧に解説します。新しい介護福祉士試験の制度を理解し、自分に合った勉強法やキャリアを検討するうえで、ぜひお役立てください。
【本記事の参考・引用元】
令和6年9月24日「介護福祉士国家試験パート合格の導入の在り方について」
厚生労働省「介護福祉士国家試験」関連資料
当記事は最新の情報に基づき作成しておりますが、実際の制度は今後変更される可能性があります。最新情報は必ず厚生労働省や指定試験機関の公式サイトをご確認ください。
介護福祉士国家試験のパート合格とは
まずはパート合格の全体像を把握することが大切です。パート合格制度では、従来のように一度で全ての科目を合格する必要がありません。13科目をA・B・Cの3パートに分けて実施し、パートごとに合否を判定する仕組みが特徴です。
合格パートは2年間程度有効とされ、次年度以降は不合格パートだけを再受験できる見込みです。厚生労働省が主導しているこの検討会では、受験者の負担や学習の効率化を考慮した制度設計が議論されています。外国人受験者や介護職で働きながら学ぶ人にとっては、大きな追い風になると期待されています。
パート合格の定義と意義
パート合格とは、介護福祉士国家試験を複数の科目群に分割し、それぞれで合格基準を満たせば部分的に合格を確保できる制度です。得点不足で全科目不合格…というケースを防ぎ、学習を段階的に積み上げやすくするのが狙いです。これにより、再受験時でも「どこが弱点なのか」が明確になり、途中であきらめるリスクを減らせる意義があります。
働きながら学びにくい現状
介護施設等でフルタイム勤務しながら、全13科目に及ぶ試験対策を行うのは時間的にも大きな負担です。また、外国人受験者の場合は日本語学習も同時に必要なケースが多く、学習しやすい環境の整備が急務となっています。
パート合格の試験構成と合格基準
新制度では13科目を大まかにA・B・Cの3パートに分けます。Aパートは介護理念や制度関係、Bパートは身体構造や医療的ケアなど専門性の高い分野、Cパートは介護過程や総合的な事例問題といった応用領域という構成が想定されています。合格ラインは従来通り6割程度が目安になりそうですが、パートごとに得点率をクリアすれば、その合格が2年間有効です。
試験結果の通知もパート単位になるため、自分がどのパートで得点できたかを即座に把握しやすい点がメリットです。
合格基準はこれまでどおり厳格を維持
- 全科目の総得点で6割程度(難易度補正あり)の基準
- 各パートごとにも合否判定を設定
介護福祉士としての知識や技能の水準を確保しながら、段階的合格を認める制度設計が目指されています。
試験日当日のイメージ
- 午前:Aパート
- 午後:Bパート・Cパート(同時刻開始)
BパートまたはCパートのみ受験の場合は、試験終了後に早めに退出できるなど、受験者の負担軽減も考慮されています。
13科目の3分割方式と試験科目の内容
現行の介護福祉士試験では、多岐にわたる分野を一度に学ぶ必要がありました。今後はAパート・Bパート・Cパートのように3つに区分されるため、試験対策もしやすくなると期待されています。科目群が明確になることで、自分が苦手なパートに集中できるほか、段階的な理解が進むメリットがあります。
Aパート対策:介護の理念・制度・生活支援技術の理解など
Aパートでは、介護保険制度や介護理念、生活支援技術の基礎などが中心です。介護現場での実践に直結する知識が多いので、まずはここをしっかり学ぶことで利用者との人間関係にも良い影響が出るでしょう。湘南国際アカデミーの受験対策講座でも、基礎から丁寧に解説しています(※参考:当校カリキュラム)。
Bパート対策:身体構造と疾病理解・認知症の理解・障害の理解・医療的ケアなど
Bパートは専門的な領域が集約され、身体構造や疾病のメカニズム、障害特性、認知症ケアなど幅広いテーマを学ぶ必要があります。出題数も多いため、過去問を活用しながら効率よく要点をまとめるのが重要です。難易度が高い科目群ですが、段階的に習得すれば確実に得点につながります。
Cパート対策:実践的支援の概要・介護過程・総合問題(事例問題)など
Cパートでは、事例問題を通じた総合的な応用力が問われます。介護過程やコミュニケーション技術、利用者の状態把握など、介護福祉士試験の実践面を左右する要素が多く含まれるのが特徴です。知識だけでなく、ケーススタディを通じた理解が合否を左右します。
湘南国際アカデミーのオリジナルサポート
湘南国際アカデミーでは、これまでの実績を活かし、独自の実践的なカリキュラムを展開しています。特にパート合格制度の導入を見越して、Aパート・Bパート・Cパートそれぞれに合わせた段階的な学習プログラムを整備中です。
- 講義+演習の融合型レッスン
- オンライン学習ツールを活用した復習システム
- 実務者研修との連動で効果的な受験勉強サポート
初回受験から不合格パートの再受験まで、学習の抜け漏れがないよう個別フォローに力を入れています。受講生の皆さまが効率的に合格を勝ち取れるよう、全力でサポートいたします。
介護福祉士国家試験のパート合格制度の背景と利点
高齢者数が急増する日本では、介護人材不足が深刻な問題です。厚生労働省は、この状況を改善するためにパート合格制度を検討し、介護業界への担い手確保を目指しています。特に、外国人受験者や転職組など多忙な方にも挑戦しやすい仕組みとして期待が高まっています。
介護人材不足への対応策
試験をパートごとに合格できるようにすることで、実務者研修などを受けながら段階的に学習でき、最終的な資格取得へつながる可能性を高めます。国試としての難易度は維持しつつ、合否判定を細分化することで受験者数の増加が見込まれています。
受験者の負担軽減と多様な選択肢
従来方式では不合格となった場合、全科目を再受験しなければならず、大きな負担とプレッシャーがありました。パート合格制度では、合格パートを免除扱いにできるため、再受験のモチベーションを維持しやすい点が注目されています。働きながらでも試験のチャンスを得やすく、多様な受験ルートを確保できるのが大きな利点です。
パート合格による外国人受験者への配慮とメリット
日本語能力に不安がある外国人受験者にとって、一度に大量の試験科目を学ぶのは負担が大きいのが現状です。パート合格制度によって知識習得を段階化できれば、コミュニケーション技術や専門用語の理解も少しずつ習得しやすくなります。
働きながら資格取得を目指す支援
介護現場でフルタイムやパート勤務をする介護職員が、時間をうまくやりくりしながら資格取得に挑戦できるようになるのも新制度のメリットです。学習をパートごとに分けることで、仕事と勉強の両立がしやすくなり、離職率低下にもつながると期待されています。
以下の関連記事も読まれています
介護福祉士国家試験パート合格のメリットとデメリット
パート合格には多くのメリットがある一方、試験が複雑化するなどのデメリットも指摘されています。ここでは両面を整理し、冷静に制度を捉える助けとしてください。
メリット:パート合格の可能性と有効性
パートごとに合格を積み上げることで、学習範囲を小分けにして計画を立てやすくなります。特に、仕事や家庭の事情で一度に多くの時間を割けない人にとっては大きな救済策となるでしょう。継続的にモチベーションを保てることで、中途退学や不合格による学習断念を防ぐ効果が期待されています。
合格パートを持ち越しできる有効期限は2年間
パート合格で得た合格パートは、原則2年間の有効期限が設けられる見込みです。この仕組みにより、翌年は残りのパートに集中できるメリットがあります。勉強範囲をスリム化でき、学習効率や得点アップにつなげやすいのが魅力です。
デメリット:試験の複雑化と合格基準低下の懸念
一方、パートごとに合否を管理するため、受験者や運営側の手続きが煩雑になる可能性があります。また、部分的な合格を重ねることで「資格の評価基準が下がるのでは」という懸念も一部では聞かれます。ただし、合格ラインそのものは従来と同等に保たれる見込みで、制度設計次第で評価基準の維持が図られるでしょう。
介護福祉士国家試験パート合格のための準備と勉強法
パート合格制度を最大限に活用するには、どのような学習計画と勉強法が求められるでしょうか。
新制度を活かすには、パート単位で学習計画を立てる工夫が必要です。まずはどのパートが自分にとって難関かを把握し、試験日までの学習時間を効率的に配分することが鍵となります。
初回受験はまとめて受験して全パートの合否を確認
初年度はすべてのパートにチャレンジし、総合力を試すことになります。もし全パート合格ならば、その年で無事に介護福祉士としての道が開けます。
効率的な学習スケジュールの作成
各パートに必要な時間をあらかじめ見積もり、目標日を設定することで、無理なく勉強を進められます。例えば、Aパートを重点的に勉強する期間、Bパートを集中的に対策する期間と分割して計画を立てると、学習漏れを防ぎやすくなります。自分の生活リズムや仕事のシフトに合わせて柔軟に調整し、進捗状況を定期的に確認することが重要です。
過去問活用とポイント学習の重要性
介護福祉士試験では、過去問を繰り返し解くことでよく出題されるポイントを把握できます。苦手な分野がパートAに多いならAの過去問を重点的に、BやCに苦手があればそちらを重点的に…といった形で学習計画を微調整し、確実に得点力を上げるよう心がけましょう。
パート合格試験後の流れと次回試験への準備
パート合格を獲得しても、一部のパートが不合格の場合は次の試験に備える必要があります。ただし、合格パートは免除されるため、再受験の際は苦手パートを強化すれば効率的です。
不合格パートのみ再受験
特定のパートで不合格となった場合は、翌年以降はそのパートのみに集中して学習することが可能です。これは働きながら資格取得を目指す方にとって大きなメリットであり、科目の学習負担が分散されることでモチベーションを維持しやすくなります。
パート合格の試験科目に向けた計画作成
次回試験では、合格したパート以外の科目に集中して再挑戦できます。自分の弱点を明確にし、再受験を見据えて学習を再構築しましょう。特に実務者研修や演習を取り入れながら理解を深めれば、合格率をさらに高められます。
万が一再受験になった場合の備え
うまくいかなかったパートがあれば、失敗の原因を分析し、理解不足の分野を重点的に補強していきましょう。次回試験では合格パートが免除されるため、勉強の集中度が増し、より短期で合格につなげられる可能性があります。
以下の関連記事も読まれています
介護福祉士国家試験パート合格に役立つサポートツール
合格への道のりをスムーズにするには、便利なツールを賢く活用することがポイントです。コミュニケーション技術など現場に活かせる知識も含め、総合的にレベルアップを図りましょう。
【無料必見】科目ごとや弱い科目などを選択できるWeb過去問題集
湘南国際アカデミーでは、介護福祉士を受験をされる方のために無料で利用できる「介護福祉士受かるんです・Web過去問題集」を提供しております。一問一答形式の解答解説付きで、自分が正解・不正解をした理由を把握し、自分の苦手分野やパート別、年度別に問題を選び、重点的に学習することで効率よく得点力を養成でる内容に構成されています。タイマー機能もあるため一問ずつの時間管理や進捗、スコアが可視化される機能もあるため、全国の介護福祉士合格者から愛用されている学習ツールです。
模擬試験と問題集の有効活用
模擬試験や問題集は、実際の介護福祉士国家試験に近い形式で演習できるのが強みです。本番さながらの時間配分や心構えを体験できるため、得点力だけでなくメンタル面の準備にも効果があります。頻出分野を把握したら、そこを優先して学習しましょう。
オンライン講座や学習アプリの導入
湘南国際アカデミーをはじめ、オンライン講座や学習アプリを提供する教育機関も増えています。自宅や職場など、好きな場所で動画解説を視聴でき、短時間でもまとまった学習が進められます。試験科目ごとの区分けもわかりやすく、スキマ時間を活用する社会人に適した方法です。
湘南国際アカデミーのオンライン教材やテキストは「介護福祉士・受かるんですシリーズ」をご覧ください。
パート合格制度に関するよくある質問(Q&A)
- Q2025年度(2026年1月実施)の第38回試験で、過去に不合格だった科目は免除されますか?
- A
2024年度(2025年1月実施)の第37回以前の試験はパート制度が導入されていないため、科目免除は適用されません。2026年のパート合格制度はすべての受験者が対象ですが、制度導入後の試験に合格したパートのみ再受験時に免除が認められます。
- Q試験範囲の大幅な変更はあるのでしょうか?
- A
現時点で科目の大枠や出題基準が大きく変わる予定は公表されていません。ただし、細部の出題順や出題数の調整は行われる可能性があります。正式な情報は厚生労働省や試験機関からの続報を必ずご確認ください。
まとめ|パート合格が適用される介護福祉士国家試験への準備
パート合格制度は、介護福祉士国家試験の学習負担を分散し、再受験のハードルを下げる大きな革新となるかもしれません。忙しい社会人や外国人受験者など、多様な背景を持つ人が安心して受験に取り組める制度設計が進められています。
一方、資格の評価基準維持や試験運営の複雑化といった懸念もありますが、正しい知識と計画的な学習があれば合格への道は開けるでしょう。早めに制度の最新情報を収集し、自分に合った学習スタイルで準備を進めてください。
本記事のおさらい
- 導入予定:2026年(令和8年)1月実施の第38回試験から
- メリット:不合格パートのみ再受験可能で、学習負担を分散
- 合格基準:従来同様、総得点の6割程度+各パート判定で質を維持
- 有効期限:合格パートを持ち越しできる有効期限は2年間
今後も厚生労働省や指定試験機関の公式発表を随時チェックしつつ、ぜひ湘南国際アカデミーの介護福祉士受験対策講座やサポートプログラムや公式LINEサポートを活用して、介護福祉士資格取得を目指してみてください。私たちは、「学習しやすい」かつ「合格につながる」実践的な学びの場を通じて、皆さまを応援いたします。
介護福祉士国家試験の受験要件や申込み手続き、試験当日の留意点、介護福祉士取得後のキャリアパスについて
「介護福祉士国家試験のすべてを徹底解説」
試験科目の特色や要点、効果的な受験勉強法に関する情報
「介護福祉士国家試験の試験科目の特色や要点を徹底解説!」
その他、介護事業所や医療機関などにおいて当校の「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
