変化の激しい時代だからこそ、社会に必要とされ続ける専門職で働きたい。そんな思いから、介護の仕事を新たなキャリアとして考えている人もいるのではないでしょうか。
介護施設は利用者に行う介護サービスの内容や人数の規模などによって幅広い種類に分けられます。なかでも特別養護老人ホームは、介護を必要とする高齢者が安心して暮らせる場を提供することを重視する施設です。
しかし、「実際はどのような仕事をするの?」「働くには資格が必要なの?」「他の介護施設との違いは?」と疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
この記事では、特別養護老人ホームの特徴や役割や、必要な資格、具体的な仕事などを解説します。
特別養護老人ホームの概要
はじめに、特別養護老人ホームの特徴と他の介護施設との違いを見ていきましょう。
特別養護老人ホームの特徴
特別養護老人ホーム(特養)は、要介護3以上の人が入居対象で、終身利用ができる公的な介護施設です。入居対象者は、ほとんどの動作で誰かの介護を必要としている人となります。24時間365日体制で専門的な介護サービスを提供し、医療的ケアにも対応している点が特徴といえます。
公的な施設であるため、利用者が支払う費用は比較的少ないです。そのため、入居希望者が多く、待機が発生する施設も少なくありません。
特別養護老人ホームは働く介護職員にとって、医療的ケアを含む幅広い知識やスキルを身につけられる環境です。また、介護職だけでなく看護職やリハビリ職など多職種と連携する経験も豊富に得られるでしょう。
他の介護施設との違い
特別養護老人ホームは、他の介護施設と比較して、主に要介護度が高い人たちを受け入れているという点で異なります。
例えば、一般的なデイサービスや有料老人ホームに比べて、特別養護老人ホームは医療的なケアも含む高度な介護を必要とする入居者を受け入れています。そのため、重度の認知症や身体的な障がいを持つ人が多数入所しており、利用者一人ひとりに合わせた専門的なケアを提供します。
また、似た名称である養護老人ホームとは、施設の目的や利用対象によって明確に異なります。養護老人ホームは、生活支援を中心に行う公的施設で、主に経済的に困窮している高齢者を対象としています。医療的ケアよりも日常生活のサポートに重点が置かれており、入所条件も所得に応じた制限があります。
そのほかに、介護付き有料老人ホームでも特別養護老人ホームと同じようなサービスが提供されています。この2つの違いは運営形態です。
特別養護老人ホームは、介護保険法に基づいて設置される公的な施設です。有料老人ホームは、民間企業や医療法人などが運営する私的な施設となっています。
また、サービス付き高齢者住宅(サ高住)は、安否確認や生活相談などの基本サービスが付いた賃貸住宅で、高齢者が自立した生活を送ることを支援します。特別養護老人ホームは手厚い介護を行うことに重きをおいているため、行う支援の内容がことなります。
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特別養護老人ホームで働くための必要資格はある?
特別養護老人ホームで働くために、必ずしも最初から専門資格が必要というわけではありません。介護職として無資格で入職し、まずは身体介護以外の補助業務から始めて、働きながら資格を取得していくケースも多く見られます。
ただし、介護業務に携わる場合は「認知症介護基礎研修」の受講が必須です。2024年度からは原則として、入職から1年以内にこの研修を修了することが求められています。
また、働きながらのスキルアップを見据えて、早い段階で取得しておきたいのが「介護職員初任者研修」です。介護の基本的な知識や技術を学べる入門資格で、未経験から安心して介護業務に携われるようになります。
さらに、キャリアアップを考えるなら、「介護福祉士実務者研修」の受講も視野に入れると良いでしょう。この資格は国家資格「介護福祉士」の受験資格にもつながるため、将来的なキャリア形成に役立ちます。
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特別養護老人ホームでの仕事内容や働き方
特別養護老人ホームでの働き方は多岐にわたり、職種ごとに求められるスキルや役割が異なります。
主な職種と役割
特別養護老人ホームには厚生労働省によって配置が定められている職種があります。各職種の仕事内容や役割を解説します。
施設長
施設の運営管理を行います。職員の指導や予算管理など、施設全体を統括します。
医師
回診・医療処置、健康診断などの利用者の健康管理や急変時の対応などを行います。必要に応じて他医療機関との連携も担います。
介護職員
食事や入浴の介助、口腔ケアなどの身体介護を主に行います。日常生活全般を支える重要な役割です。
看護職員
体調確認やバイタル測定などの利用者の健康管理を行います。医師の指示に基づく医療的ケアも担当します。
生活相談員
生活相談員は、利用者や利用者家族からの生活に関する相談を受け付ける、施設の窓口役を担います。入退所手続きや他機関との調整も行います。
機能訓練指導員
寝返りや移動など日常生活動作を支援するリハビリテーションを行います。身体機能の維持・回復を目的とした訓練を計画します。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者の身体状態の維持・向上のためのケアプランを作成します。各職種と連携しながら支援を調整します。
栄養士・管理栄養士
利用者一人ひとりに合わせた献立の作成や調理などを行います。栄養状態の把握や食事形態の工夫も重要な業務です。
ユニットリーダー
同じ施設で働く介護職員のシフト作成などマネジメント業務を担います。現場のまとめ役としてチームケアの質向上に努めます。
このほか、介護報酬の請求業務や受付、電話対応を行う事務員、利用者の食事の調理や提供をする調理員なども働いています。
介護職員の仕事内容について
特別養護老人ホームでの仕事内容は幅広く、介護、医療ケア、生活支援など多岐にわたります。入居者が安心して生活を送るためには、日常生活の補助や医療ケアが欠かせず、そのためにはさまざまなサポートが必要です。
・食事介助
・入浴介助
・排泄介助
・着替えや移動、移乗の介助
・レクリエーション
・健康管理
・看取り看護
・利用者家族への報告
・掃除や洗濯
これらに加え、医療ケアに関しては、介護職員が行う範囲として服薬介助(利用者が薬を飲みやすいように準備や声かけを行うことなど)が含まれます。
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介護職員の勤務時間やシフトについて
特別養護老人ホームでは24時間体制で利用者のケアを行います。そのため、夜間や早朝も含めたシフト制を敷いている施設がほとんどです。施設によって、早番と遅番の2交代制、早番、遅番、夜勤の3交代制、朝番、日勤、遅番、夜勤といった4交代制などのシフトがあります。
ちなみに、勤務する時間帯で担当する業務の内容は異なります。例えば、朝番では朝食の補助や起床介助、日中の活動支援、遅番では夕食の補助や就寝準備の介助などが含まれ、夜勤では入居者の夜間の見守りなどを行います。
FAQ|特別養護老人ホームに関するよくある質問
特別養護老人ホームは、要介護度の高い高齢者が安心して生活を送るための公的介護施設です。この記事をご覧の方が抱えるであろう疑問や不安を解消するため、よくある質問をまとめました。これから介護職を目指す方や、働く場所として特養を検討している方にも役立つ内容となっています。
- Q1.特別養護老人ホームに入るにはどんな条件が必要ですか?
- A
原則として「要介護3以上」と認定された方が入居の対象となります。要介護度が高く、日常生活のほとんどに介助が必要な方が優先されるため、要介護1・2の方は原則対象外ですが、特例的なケースで認められることもあります。
- Q2.特別養護老人ホームと他の介護施設との違いは何ですか?
- A
主な違いは、入居者の要介護度とサービスの内容です。特別養護老人ホームでは、医療的ケアを含めた24時間体制の手厚い介護が提供される一方、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は、比較的自立した生活ができる方が対象です。また、特養は公的施設であるため、費用負担が比較的低く抑えられている点も特徴です。
- Q3.特養で働くには資格が必要ですか?
- A
無資格でも働くことは可能ですが、介護業務に従事するには「認知症介護基礎研修」の修了が必須です(入職から1年以内)。また、「介護職員初任者研修」や「介護福祉士実務者研修」を修了していると、より専門的な介護に対応でき、キャリアアップにもつながります。
- Q4.特別養護老人ホームの介護職の仕事内容はどんなものですか?
- A
食事・入浴・排泄の介助や移動支援、レクリエーションの企画・実施、健康状態の把握、家族への報告など多岐にわたります。医療的ケア(服薬の介助や体調管理)にも関わるため、専門知識や連携力が求められます。
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- Q5.特養での勤務時間やシフトはどうなっていますか?
- A
特別養護老人ホームは24時間体制での運営のため、シフト制が基本です。早番・日勤・遅番・夜勤などがあり、勤務時間帯に応じて担当する業務も異なります。例:朝番は起床介助、夜勤は見守りや夜間対応など。
特別養護老人ホームの特徴を理解して、働きたい職場を探そう
特別養護老人ホームは、要介護度の高い利用者を24時間体制で支える現場であり、介護の専門知識やスキルを深く学べる環境です。多職種と連携するチームケアに携わることで、実践的な経験を積むことができるため、介護職として成長したい方にとって魅力的な職場です。無資格からのチャレンジも可能で、働きながらスキルアップできるのも特養の大きな特徴です。
湘南国際アカデミーでは、介護職員初任者研修や実務者研修など、特別養護老人ホームでの勤務に必要な資格取得をサポートしています。
まずは求人情報をチェックしたり、資格取得についての情報収集から始めてみましょう。ご興味のある方は、湘南国際アカデミーの資料請求や無料相談をご活用ください。あなたに最適な学びがきっと見つかります。
その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
