介護の現場では、知識やスキルを証明する資格が幅広く存在しています。介護資格の取得は、実施する介護の質を向上させたり、キャリアアップの可能性を広げたり、勤務先で資格手当が付いたりと、いくつかのメリットがあります。
また、一部の介護業務は資格がなければ行うことができないため、介護業界でキャリアアップを目指す人にとって、資格取得は欠かせない要素となっています。この記事では、代表的な介護資格とその取得方法について解説します。
介護職で代表的な3つの資格
介護職には多くの資格が存在しますが、特に知られている資格があります。ここでは、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士の3つについて紹介します。
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)
介護職員初任者研修は、介護職に就いて最初に取得することが多い入門的な民間資格です。スクールで一定のカリキュラムを受講し、試験に合格することで取得できます。
介護職員初任者研修の資格を取得すると、介護の基礎知識やスキルがあることを証明できます。取得するのに必要な条件はなく、誰でも取得を目指せます。
初任者研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、介護職員としての専門知識や技術をより深めるための研修です。介護職員初任者研修と違って原則試験はなく、用意されたカリキュラムを修了することで取得できます。介護職員初任者研修よりも実践的で高度なカリキュラムが特徴です。カリキュラムには、医療的ケアや認知症ケア、介護過程の展開などの専門的な内容が含まれており、介護の質を向上させるのに役立ちます。
介護福祉士実務者研修の受講に必要な条件はなく、誰でも取得できますが、介護職員初任者研修を修了していると、一部の科目の学習が免除されます。
実務者研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
介護福祉士
介護福祉士は、介護職の中で唯一の国家資格です。介護福祉士の資格を持つとより高度な介護サービスの提供が可能になり、介護施設でのリーダー的な役割を担うことができます。
国家試験を受けるためには、いくつかの条件を満たさなければなりません。介護福祉士の受験資格を満たす方法は、実務経験ルート、福祉系高校ルート、養成施設ルート、EPAルートの4つがあります。ただしEPAルートで受験できるのはインドネシア、フィリピン、ベトナムいずれかの国籍を持つ人のみです。
ルート名 | 具体的な条件 |
---|---|
実務経験ルート | 介護の実務経験が3年以上あり、なおかつ介護福祉士実務者研修を修了していること または介護の実務経験が3年以上あり、なおかつ介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の2つを修了していること |
福祉系高校ルート | 指定された福祉系高校を卒業し、9カ月以上の実務経験を積んでいること |
養成施設ルート | 専門学校や短期大学などの介護福祉士養成施設に通い、卒業の資格を得ていること |
介護福祉士に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
介護資格の取得にかかる費用相場
介護資格の取得には、一定の費用がかかります。ここからは先述した3つの介護資格の取得にかかる費用相場を解説します。
介護職員初任者研修の場合
介護職員初任者研修の受講費用の相場は、平均的に5万円から10万円前後です。この費用は講義や実習、テキスト代などを含みます。
ハローワークなどが実施する助成金制度を活用すると、受講費用の一部が補助されます。取得を促すため、受講料の一部を負担してくれる制度を設けている介護事業者もあります。
介護福祉士実務者研修の場合
介護福祉士実務者研修の受講費用の相場は、数万円から20万円程度と少し幅があります。受講費用は、既に持っている資格の有無や、通うスクールの受講料によって変動します。
介護福祉士の場合
介護福祉士の資格取得にかかる費用は、試験を受けるために満たす条件のルートによって大きく異なります。
実務経験ルートの場合、資格取得にかかる費用相場は8万円から20万円前後です。費用相場は実務者研修の修了有無によって変動します。
福祉系高校ルートの場合は指定の高校に通うための学費が費用になります。
養成施設ルートの場合、専門学校や大学に通うための学費が主な費用となります。
また、ルート別の費用とは別に、介護福祉士試験の受験費用と資格登録にかかる費用があります。具体的には、受験手数料が18,380円(振込手数料別)、登録免許税が9,000円、登録手数料が3,320円(※)となっています。
※2025年4月現在。
介護現場で働く人が取得するその他の資格
ここまで介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修、介護福祉士の3つの資格を紹介しました。しかし、介護の現場で働く人が取得を目指している資格は、まだまだたくさんあります。
いずれも資格を取得することで、より高度な介護サービスの提供や、特定の分野での専門知識を活かした業務が可能になります。
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、介護福祉士の上位資格として位置づけられている資格です。資格を取得することで、介護福祉士よりも対応できる利用者や環境の幅が広がります。
この資格を取得するためには、介護福祉士としての実務経験が5年以上あることが主な条件となります。
ケアマネージャー(介護支援専門員)
ケアマネージャー(介護支援専門員)はケアプランの作成を行う人のための資格です。介護支援専門員実務研修を受講後、試験に合格することで取得できます。ただし、試験を受けるには、一定の業務を5年以上かつ900日以上経験している必要があります。
ケアマネージャーの役割はサービス利用者(介護が必要な高齢者や障がい者)の生活の質を向上させることです。医療や介護、福祉サービスを適切に組み合わせ、総合的な支援を行います。また、利用者の家族や他の介護職員、医療従事者との連携も重要な業務の一つです。
ケアマネジャー(介護支援専門員)に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
重度訪問介護従業者養成研修
重度訪問介護従業者養成研修は、重度の肢体不自由や知的障がい、精神障がいのある人を支援するための資格です。自治体が主催する研修を修了することで取得できます。試験はなく、受講に必要な条件もありません。
研修では、重度障がい者の特性やコミュニケーション技術、緊急時の対応など、実践的な知識と技術を学びます。
重度訪問介護従業者養成研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修は、認知症ケアの基礎知識を習得するための研修です。試験はなく、カリキュラム修了で資格を取得できます。受講に特別な条件はなく、介護施設などに従事していれば誰でも受講可能です。研修では、認知症の基礎知識や認知症ケアでのコミュニケーション方法、介護技術を学びます。
2024年4月から、介護の現場で働く人はこの認知症介護基礎研修の受講が義務化されました。新入職員が無資格の場合は、入職してから1年以内に研修を受講することになっています。
認知症介護基礎研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
認知症介護実践者研修
認知症介護実践者研修は、認知症に関する医学的知識や心理的理解、支援方法を学ぶ研修です。認知症介護基礎研修よりも実践的な内容で構成されています。
研修は各自治体が主催しており、カリキュラムの修了で資格を取得できます。ただし、受講には認知症介護の実務経験が2年以上必要です。
認知症介護実践者研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士を取得すると認知症に関する専門的な知識と技術を有していることを証明できます。
資格取得には試験の合格が必要で、受験するには試験を受ける年の3月31日から過去10年間以内に認知症ケアの実務経験が3年以上必要です。
認知症ケア専門士は、認知症の人々への高度なケアを提供するだけでなく、他の介護職員への指導や、家族への支援なども行います。
認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修は、認知症介護実践者研修の上位資格です。介護施設で認知症介護を指導できるリーダーを目指す人のための資格で、最新の認知症ケアの知見やチームマネジメント、人材育成を学びます。
研修は各自治体が実施していて、試験はありません。研修を受けるには認知症実践者研修の修了から1年以上経過していることと、認知症の介護業務に5年以上携わった経験などの条件を満たす必要があります。
認知症介護実践リーダー研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
医療介護福祉士
医療介護福祉士は、医療介護の知識を備えていることを証明する資格です。ただし、この資格は現在、資格取得に必要な講座の開催が終了しており、今後新たに取得することはできません。
介護資格を取得してキャリアアップを目指そう
今回は介護現場で働く人のための資格を紹介しました。介護資格は幅広い種類がありますが、資格ごとに難易度や取得条件が異なります。したがってステップアップしながら資格取得を目指す人が多いです。
資格取得は単に知識やスキルの証明だけでなく、試験勉強や研修で学んだ内容を通じて自身の成長にもつながります。
自身の目標や関心のある分野に合わせて資格取得を進めていきましょう。
その他、介護事業所や医療機関などにおいて当校の「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
