ICF(国際生活機能分類)とは、「できないこと」だけでなく「できること」「環境が整えばできること」まで含めて人の生活を捉える考え方です。
介護やリハビリの現場では、利用者の状態を多面的に理解し、より適切な支援につなげるための“共通言語”として活用されています。
本記事では、ICFの基本概念から6分類、ICIDHとの違い、現場での活用方法、具体事例までをわかりやすく解説します。
ICFとは|国際生活機能分類って何?
ICFはWHO(世界保健機関)が2001年に採択した国際的な分類であり、健康状態と生活機能、背景因子(環境・個人)を包括的に捉える枠組みとして世界的に活用されています。介護ではアセスメントや計画作成、モニタリングの質を高める土台になります。
※参考:WHO「International Classification of Functioning, Disability and Health(ICF)」
ICFは、病名や障害名だけで利用者を説明するのではなく、その人の生活の成り立ちを多面的に整理する枠組みです。介護現場では、介助量の多さだけでなく「何ができて」「何があればできるか」まで言語化できる点が強みです。
【簡潔に一目でわかる】ICF
- ICFは、WHO(世界保健機関)が定めた国際的な分類であり、人の健康状態や生活機能を「6つの視点」で整理する枠組みです。従来は、病気や障害の「できないこと」に焦点が当てられがちでした。
- しかしICFでは、以下のことを含めて、その人の生活全体を捉えます。
- できること
- 環境が整えばできること
- 社会との関わり
- 👉 つまり、「人の状態は環境との関係で変わる」と考えるのがICFの本質です。
👉 ICFの大きな特徴は、これらの要素が一方向ではなく相互に影響し合うことです。
例えば、筋力低下(心身機能)があると活動量が減り、外出(参加)が減少します。
さらに外出機会が減ることで筋力が低下するという悪循環が生まれます。
ICFは、このような関係性を分解して考えることで、どこに介入すれば生活を改善できるかを明確にする枠組みです。
ICFとICIDH(国際障害分類)の違い
以下の表にあるように、ICIDHが「障害(マイナス面)」を中心に捉えやすかったのに対し、ICFは中立的な表現で、生活機能を相互作用モデルとして理解し、環境要因も重視する点が大きな転換です。
| 項目 | ICIDH | ICF |
|---|---|---|
| 視点 | 障害中心 | 生活全体 |
| 評価 | マイナス重視 | 中立 |
| 構造 | 一方向 | 相互作用 |
ICIDHは障害を段階的に整理する考え方として役立ちましたが、どうしても「できないこと」「欠けていること」に焦点が当たりやすい構造でした。その結果、本人の強みや、環境を整えることで改善できる余地が見えにくくなることがあります。
ICFは、生活機能を中立的な言葉で扱い、状態は固定ではなく変化し得るものとして捉えます。介護では、現状の介助度だけで判断せず、手すり設置や福祉用具、サービス導入などで活動や参加が変わる可能性を最初から設計に入れられます。
最大の違いは「相互作用」です。健康状態、生活機能、背景因子は一方向の因果ではなく影響し合います。例えば外出回数が減ると筋力低下が進み、さらに外出が減るという循環が起きますが、ICFはこの循環をほどく視点を与えてくれます。
ICFの構成要素(健康状態・生活機能モデル・背景因子)
ICFは「健康状態」を土台に、「生活機能(心身機能・身体構造/活動/参加)」と「背景因子(環境因子/個人因子)」が相互に影響し合うモデルとして全体像を捉えます。
ICFを理解するコツは、6要素を別々に暗記するのではなく、相互作用として読むことです。介護現場では、利用者の状態が日々変わるため、どこが変化の起点になっているかを見抜けると支援の優先順位が定まります。
| 分類 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 心身機能 | 体や精神の働き | 筋力・認知機能 |
| 身体構造 | 身体の構造 | 骨・関節 |
| 活動 | 日常生活の動作 | 歩行・食事 |
| 参加 | 社会との関わり | 外出・地域活動 |
| 環境因子 | 周囲の環境 | 手すり・家族支援 |
| 個人因子 | 本人の特性 | 性格・価値観 |
ICFを理解するうえで重要なのは、これらを個別に覚えるのではなく、関係性として捉えることです。
例えば「痛みがある」場合、心身機能の問題として扱うだけでなく、痛みによって活動量が落ち、参加が減り、気分の落ち込みが強まり、さらに活動が減るという連鎖が起きます。ICFは、この連鎖を分解して介入先を複数持てるようにする枠組みです。
現場での使い方としては、まず6要素に情報を配置し、次に矢印を言葉で補います。何が活動を押し下げ、何が参加を押し上げるのかが言えると、ケアの選択肢が増え、本人の望む生活目標に近づけます。
健康状態
健康状態は、疾患名だけでなく、症状が生活にどう影響しているかまで把握することが重要です。
例えば心不全であれば、息切れが出る動作や浮腫のタイミング、服薬状況などを整理します。
これにより、活動や参加の制限が体調によるものか、環境や心理によるものかを判断しやすくなります。
心身機能・身体構造
心身機能は身体や精神の働き、身体構造は体の形を指します。重要なのは、その評価を活動や参加につなげて考えることです。
例えば「筋力低下」だけでなく、どの動作に影響しているかまで具体化すると、支援方法が明確になります。
また、保たれている機能(強み)もあわせて整理することが大切です。
活動
活動は、日常生活動作を「どの程度・どんな条件でできるか」で捉えます。
ポイントは、「実際にしていること」と「能力としてできること」を分けることです。
具体的に記録することで、介助が必要な理由や改善の余地が見えてきます。
参加
参加は、社会との関わりや役割を指します。
活動ができても参加が回復しない場合、不安や環境など別の要因が影響していることがあります。
👉 本人が「何をしたいか」に結びつけて考えることが重要です。
環境因子
環境因子は、住環境や家族、制度など外部の影響です。
環境は、生活を阻害にも促進にもする要因です。例えば段差は阻害、手すりは促進になります。
👉 環境を調整することで、生活は大きく改善します。
個人因子
個人因子は、価値観や生活歴、意欲など本人の背景です。
支援を考える際は、意思決定に影響する要素に絞って整理することがポイントです。
本人の希望に沿った支援は、継続しやすく成果にもつながります。
ICFの評価方法とコードの基本構造
ICFでは、利用者の状態をより正確に把握するために、「分類コード」と「評価点」を組み合わせて表現します。
分類コードは「何を評価しているか」を示し、評価点は「どの程度の状態か」を示します。
分類コードの考え方
ICFの分類コードは、アルファベットと数字で構成されています。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| b | 心身機能 |
| s | 身体構造 |
| d | 活動・参加 |
| e | 活動・参加 |
このあとに続く数字は、内容を段階的に細かくしたものです。
例えば「d450」は以下のように分かれています。
- d:活動・参加
- 4:移動
- 45:歩行に関する動作
- 450:歩く(歩行)
👉 数字が増えるほど、より具体的な内容になります。
評価点(修飾子)の考え方
ICFでは、状態の程度を数値で表します。
| 評価点 | 状態 |
|---|---|
| 0 | 問題なし |
| 1 | 軽度の問題 |
| 2 | 中等度の問題 |
| 3 | 重度の問題 |
| 4 | 完全な問題 |
例えば、「歩行に中等度の問題がある」場合は
👉 d450.2 のように表現されます。
評価のポイント(実務で重要)
ICFでは、単に「できる・できない」ではなく、以下のように分けて考えることが特徴です。
- 実際に生活でできている状態(パフォーマンス)
- 本来持っている能力(キャパシティ)
例えば、手すりがあれば歩ける場合と、何も使わず歩ける場合では評価が変わります。
ICFを介護現場で使うメリットと導入のコツ
ICFを活用すると、利用者の状態を「生活全体」で捉えられるようになり、支援の方向性が明確になります。
例えば、単に「歩けない」と捉えるのではなく、筋力・環境・心理面など複数の要因に分けて考えられるため、より具体的な支援につなげることができます。
また、ICFは多職種連携にも大きな効果があります。
職種ごとに異なりがちな視点や言葉をそろえることで、「何が問題で、どこに介入するか」をチームで共有しやすくなります。
導入のコツ
ICFを現場で活用する際は、最初から完璧に使いこなそうとしないことが重要です。
まずは、利用者の情報を6分類に分けて整理するだけでも十分効果があります。会議や記録で同じ枠組みを使うことで、徐々に共通理解が生まれていきます。
慣れてきたら、必要に応じて評価点やコードを取り入れることで、より詳細な分析やモニタリングが可能になります。
👉 「まずはシンプルに使う」ことが、定着のポイントです。
介護現場におけるICFの具体的な活用事例
【ケース:80代女性・歩行不安】
ICFで整理すると以下のようになります。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 心身機能 | 下肢筋力低下 |
| 活動 | 屋内歩行は可能 |
| 参加 | 外出機会の減少 |
| 環境因子 | 段差・手すりなし |
| 個人因子 | 転倒への不安 |
ここのケースでは、一見すると「筋力低下」が主な原因のように見えます。
しかしICFの視点で整理すると、環境や心理面も大きく影響していることが分かります。
例えば、手すりがないことで移動に不安が生まれ、さらに転倒への恐怖から外出を控えるようになっています。
改善アプローチ
- 手すり設置(環境調整)
- デイサービス利用(社会参加の促進)
- 安心できる声かけ(心理的支援)
👉 このようにICFを活用すると、身体機能だけでなく、環境や心理面も含めた支援が考えられるようになります。せるのが特徴です。

介護福祉士
ケアマネジャー
【監修者コメント】
ICFの視点を持つことで、「なぜできないのか」だけでなく「どうすればできるか」を考えられるようになります。
介護現場では、環境調整や関わり方を変えるだけで利用者の行動が大きく変わるケースも多く、ICFは実践に直結する重要な考え方です。
介護福祉士国家試験にも出題されるICFの重要性
ICFは厚生労働省の介護福祉士国家試験においても重要な概念として出題基準にも位置付けられています。
※参考:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験 試験科目別出題基準 」
ICFは介護の基本概念として頻出で、相互作用モデル・環境因子の位置付けなどが問われやすい領域です。
国家試験では、ICFを「生活の全体像を捉える共通言語」として理解できているかが問われます。単語を覚えるだけではなく、なぜICFが必要になったのか、どの視点が転換点なのかを押さえると得点しやすくなります。
特に間違えやすいのは、障害を本人の問題として単線で捉える選択肢です。ICFは環境との相互作用を前提にするため、「環境整備で改善し得る」「参加は活動とは別に制約され得る」といった考え方が正解の方向になります。
また、活動と参加、環境因子と個人因子の例示問題も頻出です。用語の定義を丸暗記するより、具体場面に当てはめて判断できる状態にしておくと、ひっかけにも強くなります。
過去の国家試験に出題された問題例
例題として、ICFの障害の捉え方に関する設問を想定します。選択肢に「障害は心身機能の低下によって一方的に決まる」といった単線因果が含まれていたら、ICFの考え方とは合いません。ICFは環境や個人因子も含めて相互作用で捉えるためです。
ICFの6要素を問う問題では、環境因子と個人因子が背景因子である点がポイントになります。環境因子の例は手すり、段差、家族支援、制度、周囲の態度などで、個人因子の例は価値観、意欲、生活歴、対処スタイルなどです。混同しやすいので、外部か内部かで切り分けると判断しやすくなります。
活動と参加の問題では、活動が課題の実行、参加が社会的な関わりや役割への関与であることを押さえます。さらにICFは中立表現を重視するため、マイナス面を述べるときは「制限」「制約」といった表現になる傾向があります。こうした言葉づかいも選択肢の見分け材料になります。
FAQ|ICFに関するよくある質問
- Q1.ICFの6項目は暗記する必要がありますか?
- A
書籍やネットの情報を調べることですぐに確認ができるため、必ず暗記しなければならないとは言えません。ただし、ICFの項目が頭に入っていると、その人の生活全体をとらえやすくなりますので、言葉を丸暗記というよりは、どのような項目があるかを押さえておくことをおすすめします。
また、なぜICFができたのか、その背景を理解することで暗記ではなく論理的に理解することで覚えることも大切です。
- Q2.ICFの視点を介護の現場で活かすにはどうしたらよいですか?
- A
ICFの視点、考え方を学ぶと、その人の生活全体をみる視点が養われるため、介護の現場ですぐに活かせるはずです。さらに職場のチーム全体としてもICFの理解を深めると介護職同士だけでなく他職種間での連携がスムーズになる効果も得やすいです。利用者の情報収集をする際に、 ICFに沿った書式を活用することもおすすめです。

介護福祉士
ケアマネジャー
【監修者コメント】
ICFは知識として覚えるだけでなく、実際の現場で使えるようになることが重要です。
ICFを体系的に学ぶことで理解が深まり、支援の質や利用者との関わり方にも大きな変化が生まれます。
まとめ|ICFの活用で介護現場が変わる
ICFは、利用者の状態を「生活全体」で捉え、より適切な支援につなげるための考え方です。
心身機能だけでなく、活動・参加・環境・個人因子まで含めて整理することで、介護の質は大きく向上します。
まずは6分類で整理し、「なぜできないのか」「どうすればできるのか」を考えることが第一歩です。
ICFは理解するだけでなく、実際に使えることが重要です。
特に介護福祉士国家試験や実務では必須の知識となります。
湘南国際アカデミーでは、初任者研修、実務者研修、介護福祉士国家試験対策講座を通して、ICFを基礎から実践レベルまで学べます。
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その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
また、湘南国際アカデミーが発行する「介護業界マンスリーレポート」の企画・監修にも関わり、介護事業所の人材課題や育成ニーズについて、継続的に現場情報の収集・分析を行っている。






