介護福祉士を目指す上で必要不可欠な「実務者研修」。この資格を取得することで、国家資格の受験資格を満たし、就職やキャリアアップに有利になるなど、多くのメリットがあります。
また、実務者研修を修了すると、喀痰吸引や経管栄養といった医療的ケアへの対応力が向上し、サービス提供責任者としての活躍も可能になります。この記事では、実務者研修の重要性や具体的なメリット、受講を検討する際のポイントについて分かりやすく解説します。これから介護の現場で専門性を高めたいと考えている方は、ぜひ最後までお読みください!
江島一孝(介護福祉士)
この記事の監修者
介護福祉士、実習指導者、介護支援専門員として10年以上の経験を持ち、湘南国際アカデミーで介護職員初任者研修や実務者研修の講師、介護福祉士国家試験の対策テキスト執筆を担当。
実務者研修の概要
介護福祉士実務者研修は、介護職員初任者研修の上位資格に位置づけられる研修で、介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験するために必須の資格です。この研修を修了することで、介護の専門知識と技術を体系的に学べるだけでなく、医療的ケアへの対応力やチームマネジメント能力も向上します。資格取得後は就職やキャリアアップにおいて大きなアドバンテージとなります。
実務者研修の受講には経験・資格ともに問われなませんが、学ぶ内容は経験者向けとなります。
項目 | 詳細 |
---|---|
対象者 | 介護職員初任者研修修了者、無資格者(受講条件は特にありません) |
研修時間 | 450時間(保有資格に応じて一部科目が免除される場合あり) |
学べる内容 | 基本的な介護技術、生活支援技術、コミュニケーションスキル、医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養など) |
受講期間 | 基本的な介護技術、生活支援技術、コミュニケーションスキル、医療的ケア(喀痰吸引・経管栄養など) |
修了後の進路 | 介護福祉士国家試験の受験資格取得、サービス提供責任者への就任、医療的ケアの実践 |
・介護福祉士実務者研修とは
└介護福祉士実務者研修の詳しいカリキュラムや受講科目、受講料などを解説
実務者研修のメリット4選
実務者研修には、介護福祉士を目指す人にとって欠かせない多くのメリットがあります。
この資格を取得することで、国家資格の受験資格を得られるだけでなく、仕事の幅が広がり、キャリアアップや就職活動にも大きな利点が生まれます。さらに、医療的ケアの知識と技術を習得することで、より専門性の高い介護サービスを提供できるようになります。以下では、具体的なメリットを4つに絞り、それぞれのポイントを詳しく解説します。
メリット1:国家試験の受験資格を取得
介護福祉士国家試験を実務経験ルートで受験する場合に、実務経験3年以上+介護福祉士実務者研修修了が受験要件の1つになっています。この要件は、介護福祉士の専門性を高め、現場での即戦力となる人材を育成するために定められています。
実務経験ルートで介護福祉士の国家試験を受験する方は、実務経験3年を待たずに早めに介護福祉士実務者研修を受けておくことで、受験準備がスムーズになるだけでなく、試験対策にも役立つ知識を習得できる点が大きなメリットです。
介護の知識と技術をさらに深めることができる上に、介護福祉士の国家試験受験資格の1つを満たすことができるということは、大きなメリットと言えます。
必要条件 | 実務者研修の役割 |
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実務経験3年以上 | 実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験するための最低条件。経験の中で得たスキルを補完・向上するために実務者研修が必須です。 |
実務者研修終了 | 介護福祉士の受験要件として義務化されており、基礎的な介護技術から医療的ケアまで幅広く学ぶことで、試験に必要な知識を身につけます。 |
医療的ケアの習得 | 喀痰吸引や経管栄養といった医療行為を学ぶカリキュラムが組み込まれており、試験後も現場で役立つスキルを身につけることができます。 |
介護福祉士実務者研修は修了するためには、無資格の方の場合には450時間、介護資格をもっていたとしても最短で50時間は必要です。※保有資格によって受講科目の一部免除があるため、必要な受講時間数が異なります。
実務者研修の受講スケジュールや受講期間によって、職場やご家庭で日程調整も必要となりますので、介護福祉士国家試験が間近に迫った状態で受講しようとすると間に合わなくなることがあります。
いずれ介護福祉士を受験しようと思っている方は、早めの介護福祉士実務者研修の受講をおすすめします。
実務者研修が介護福祉士の受験準備に役立つポイント
- 国家試験の基礎知識が身につく
実務者研修のカリキュラムから、介護福祉士国家試験の問題が出題されます。これにより、試験対策が効率的に進められます。 - 試験合格率の向上につながる
実務者研修を修了している受験者は、試験合格率が高い傾向にあります。基礎から応用までの知識が試験本番で役立ちます。※2024年1月に実施された第36回介護福祉士国家試験の合格率は、全国平均で82.8%。 - 学び直しや基礎固めの機会
無資格や初任者研修修了者が実務者研修を受講することで、介護の知識を再確認し、実務に直結したスキルを体系的に学べます。
メリット2:できる仕事の幅が広がる
介護福祉士実務者研修修了後に、実地研修を受けることにより、喀痰吸引(たん吸引)などの一部医療行為も可能となります。
そのため介護士としてもアピールポイントを増やすこともできます。
たん吸引や経管栄養などをするためには、当然医師や看護師などの医療資格が必要ですが、制度の変革に伴い、介護福祉士でも行えるようになりました。
このように一部医療行為をするために新たに知識を増やしていけるというのも、介護福祉士実務者研修のメリットであると考えることもできるでしょう。
また、介護福祉士実務者研修を修了すると、サービス提供責任者として活躍の場も広がります。
サービス提供責任者は、訪問介護サービス事業所で利用者さんとヘルパーをつなぎ、訪問介護計画書の作成、ヘルパーの指導などマネジメント業務を行います。
2019年度からは、実務経験があっても介護職員初任者研修のみの資格では、サービス提供責任者の役割を担うことができなくなったため、介護福祉士実務者研修を修了している介護職へのニーズは高まっています。
メリット3:キャリアアップの可能性
介護福祉士実務者研修を修了することで、介護業界でのキャリアアップの可能性が大きく広がります。
特に、訪問介護の現場ではサービス提供責任者やチームリーダーとしての役割が期待され、管理職へのステップアップも現実のものとなります。また、医療的ケアのスキルを身につけることで、より専門性の高い介護職としての評価が高まり、昇給や待遇面での向上も見込まれます。介護福祉士を目指す方にとって、実務者研修はキャリア形成の重要な第一歩といえるでしょう。
キャリアステージ | 実務者研修の役割 |
---|---|
初任者研修修了後のステップ | 基礎的な介護スキルを応用し、医療的ケアやマネジメントスキルの習得を目指す。現場での信頼度向上。 |
サービス提供責任者への昇格 | 訪問介護計画の作成、ヘルパー指導、利用者との調整役など、管理職に近いポジションで活躍を期待できる。 |
介護福祉士国家資格取得後 | 国家資格を基に、施設長やケアマネージャーなどへのさらなるキャリアアップを期待できる |
介護福祉士実務者研修の修了者に対しては、施設長など施設のトップに立つ人たちも好印象を感じているようです。
介護という仕事に対して、より高い意欲を持っているのだなというアピールにもなりますから、そんなことが仕事への評価にもつながってもらえるかもしれません。
実務者研修がキャリア形成に与える影響
- 管理職としてのスキルアップ
実務者研修では、訪問介護計画書の作成やチーム運営など、管理職に必要な知識が学べます。これにより、現場でリーダーシップを発揮する機会が増え、昇進につながります。 - 給与面での優遇
厚生労働省の調査によると、実務者研修修了者は無資格者や初任者研修修了者よりも平均給与が高い傾向にあります。キャリアアップによる収入面の向上は大きな魅力です。 - 専門性の高いポジションに進出
医療的ケアを習得することで、介護職としてより専門的な役割を担い、現場での存在感を高められます。
資格 | 月収(平均) | 昇進を期待できるポジション |
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無資格 | 約20万円 | 一般スタッフ |
初任者研修修了者 | 約22万円 | 介護職員、サブリーダー |
実務者研修修了者 | 約25万円 | 介護職員、サービス提供責任者、リーダー |
介護福祉士(国家資格) | 約27万円 | 専門性の高い介護職員、チームリーダー、施設長、ケアマネージャー |
需要が高く引く手あまたとも言われる介護業界ではありますが、その中でより必要とされる介護士になっていくためには、介護福祉士実務者研修でより専門的な知識・技術を学ぶことが重要と言えるでしょう。
メリット4:就職や転職に有利
実務者研修を修了することで、介護業界での就職や転職が格段に有利になります。介護施設や訪問介護事業所では、実務者研修を修了しているスタッフが高く評価される傾向にあります。
特に、介護福祉士国家資格へのステップアップを見据えた取り組みや、医療的ケアのスキルを習得している点が、採用担当者にとって大きなアピールポイントとなります。また、サービス提供責任者として活躍できる資格を持つことは、即戦力として求められる場面を増やし、求人選択肢を広げる大きなメリットといえるでしょう。
直接介護の入門的資格としては、「介護職員初任者研修」というものがあります。先にも述べましたが、介護福祉士実務者研修は、この介護職員初任者研修の上位資格です。
上位資格として捉えられるため、就職においても有利になることがあります。また収入面(給料)においても無資格者・介護職員初任者研修よりも高い傾向であることが、過去の厚労省の調査結果から分かっています。
転職市場でのニーズが高まる背景
近年、介護業界では質の高いサービスが求められるようになり、実務者研修修了者へのニーズが急増しています。特に、訪問介護分野では法改正により、サービス提供責任者として働ける人材が不足しており、求人票にも「実務者研修修了者歓迎」と明記されるケースが増えています。このように、実務者研修を修了していることが就職・転職で有利に働く理由は明らかです。
就職・転職での成功例
実務者研修を修了した受講者の多くが、修了後にキャリアアップや好条件の職場への転職を実現しています。たとえば、訪問介護の責任者として採用され、管理業務に携わることで、給与アップと仕事のやりがいを両立させた事例も少なくありません。
江島一孝(介護福祉士)
入居者様・利用者様のためにという思いがキャリア形成を豊かにする
もちろん就職・転職のために資格を取得するということだけではなく、入居者様・利用者様により良いサービスを提供させていただくために、資格を取得するという考えを持つことが、結果的にご自身のキャリア形成を豊かにすることも忘れないでください。
A
介護福祉士実務者研修を受講するためにはスクーリング(通学)が必要です。湘南国際アカデミーの場合、月に2回程度のペースで全8回ご通学いただきます。
A
介護福祉士実務者研修の修了証明書には現在有効期限はありません。
A
介護職員初任者研修を取得後に介護福祉士実務者研修を受講する場合、全450時間の内130時間が免除されます。
湘南国際アカデミーの介護職員実務者研修
湘南国際アカデミーの介護職員実務者研修は、働きながら無理なく修了できるようにスケジュールが組まれています。
また介護福祉士国家試験を想定した内容が課題に組み込まれているので、自然と試験勉強にもつながります!
希望する方には無料の就職・転職サポートも行っています。お仕事を紹介するだけでなく履歴書の書き方、面接練習などしっかりサポートさせていただきます。
湘南国際アカデミーでは、無料説明会を開催しておりますので、学校見学を兼ねてお気軽にご来校ください。
私たちがあなたのスキルアップ・キャリアップをサポートいたします!
▼現在受講可能なコースの確認、説明会予約はこちらから
【経歴】
元ユニットリーダー研修指導者。10年在籍した介護老人福祉施設の現場では、研修受け入れ担当者として、年間100名以上の研修生の指導にあたる。湘南国際アカデミーでは、介護職員初任者研修や実務者研修、介護福祉士国家試験受験対策講座の講師や介護福祉士受験対策テキストの執筆などを担当する傍ら、ケアする側もケアするという立場で、介護をする側のQOL向上のためのイベントや総合的なサポートを手掛けている。
その他、介護事業所や医療機関などにおいて当校の「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
【所持資格】
介護福祉士、介護福祉士実習指導者、介護支援専門員、福祉用具専門相談員
講師:江島 一孝