江島一孝(介護福祉士)
この記事の監修者
介護福祉士、実習指導者、介護支援専門員として10年以上の経験を持ち、湘南国際アカデミーで介護職員初任者研修や実務者研修の講師、介護福祉士国家試験の対策テキスト執筆を担当。
介護福祉士とケアマネージャーの違いをご存知でしょうか?
介護業界において、介護福祉士とケアマネージャーはそれぞれ重要な役割を果たしていますが、多くの人々はその違いや具体的な役割について十分に理解していないことが多々ります。
この記事では、介護福祉士とケアマネージャーの違いについて詳しく解説し、介護福祉士やケアマネージャーの資格を将来的に取得しようとしている方にとって有益な情報になりましたら幸いです。
ご不明な点等がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
介護福祉士とケアマネージャーの違い
介護福祉士とケアマネージャーは介護業界で重要な役割を果たしますが、それぞれの役割や資格には大きな違いがあります。
介護福祉士は主に直接的な介護業務を担当し、ケアマネージャーは介護サービスの計画や調整を行います。
このように、両者の役割や資格にはさまざまな違いがありますので、それらについて分かりやすく説明していきます。
試験の受験資格が違う
介護福祉士とケアマネージャーの試験の受験資格には違いがあります。
両者の職務内容や求められるスキルが異なるため、それぞれの試験の受験資格も異なっています。
介護福祉士の場合
通常は養成施設の修了や実務経験ルートでの受験においては介護職としての「3年以上(かつ540日以上)の実務経験を満たすこと」+「介護福祉士実務者研修の修了」が必要です。
ケアマネージャーの場合
ケアマネージャー(正式名:介護支援専門員)の試験を受けるには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
・該当する国家資格等に基づく業務に5年以上(かつ900日以上)従事すること。
・相談援助業務に5年以上(かつ900日以上)従事すること。
また、ケアマネージャー(介護支援専門員)を無資格の状態から受験を目指すためには、介護福祉士などの国家資格等を取得し、5年以上(かつ900日以上)の実務経験を積む必要があります。そのため、無資格で介護業務が未経験の状態から、ケアマネージャーになるには最短でも8年かかります。
介護福祉士国家試験の実務経験の要件は3年以上(かつ540日以上の勤務)であるのに対して、ケアマネージャーの受験資格を満たす難易度は高いと言えます。
介護福祉士からケアマネージャーになるには、介護福祉士になってからの実務経験が5年以上求められます。
このため、両者の試験の受験資格を明確に理解し、どちらを目指すのか又は両方の資格取得を目指すのか、現在保持している資格を鑑みてどちらの資格を先に取得したいのかなどを検討することも重要です。
自分のキャリアプランに合わせて、必要な経験や資格を積み上げることで、最適なキャリアアップを目指していきましょう。
江島一孝(介護福祉士)
ケアマネジャーを目指すことができるその他の国家資格に関しては、医師や看護師、薬剤師、介護福祉士、社会福祉士、歯科衛生士などがあります。
介護福祉士とケアマネージャーの合格率の違い
介護福祉士とケアマネージャーの試験の合格率もそれぞれ異なり、それぞれの資格取得の難易度を測る指標となります。
どちらの資格を目指すのか、あるいはどちらの資格から目指すのか、現実的な目標設定を行うことはとても大事です。
介護福祉士の試験合格率
介護福祉士の試験合格率は、他の関連資格と比較しても高い傾向にあります。これは試験内容が実務経験に基づいたものであり、介護現場での経験が重視されていることも理由の一つです。
また、実務経験ルートで介護福祉士を受験する場合には、介護福祉士実務者研修の修了が必須となっており、介護福祉士国家試験の出題範囲は全て実務者研修で学ぶカリキュラムの中から出題されるため、実務者研修を修了すること自体が介護福祉士国家試験の受験対策に直結していることも、合格率を引き上げている要因とも言えます。
実際に、2024年1月に実施された介護福祉士国家試験の合格率は過去最高の82.8%に達しています。この数字は他の国家資格の平均合格率と比較しても高い合格率であることが認識されています。
また、最近では外国人介護職員が介護福祉士国家試験を受験することが多くなってきており、従来の日本人介護職員を対象とした出題範囲や問題の難易度が見直されてきているとも言われています。
ケアマネージャーの試験合格率
ケアマネージャーの試験合格率は、比較的低い傾向で推移しています。ケアマネージャーの試験は高度な専門知識を問われるため、その難易度が受験者にとって大変高いものとなっています。
例えば、2023年度(第26回)のケアマネージャー試験(正式名称は「介護支援専門員実務研修受講試験」)の合格率は、21.0%でした。
他の介護資格に比べても低い合格率であるといえます。
こうした状況を踏まえると、ケアマネージャーの試験に合格するにはしっかりとした準備が必要不可欠です。
試験対策としては、専門知識の理解を深めるだけでなく、過去の試験問題を解くことや模擬試験を実施することが推奨されます。こうした準備を積み重ねることで、試験本番での成果を最大限に引き出すことができるでしょう。
介護福祉士とケアマネージャーの仕事内容の違い
介護の現場では、介護福祉士とケアマネージャーの役割は異なりますが、それぞれ重要な位置を占めています。ここでは、両者の具体的な仕事内容と、それがどのように異なるのかを詳しく見ていきます。
まず、介護福祉士の役割と仕事内容について説明します。その後、ケアマネージャーの役割と仕事内容を解説していきます。
両者の違いを明確に理解することで、あなたの今後のキャリアプランの参考にしていただけたら幸いです。
介護福祉士の役割と仕事内容
介護福祉士は直接的な介護サービスを提供する重要な役割を担っています。
介護福祉士は利用者の日常生活の支援を行い、身体介助から生活援助まで幅広い業務に従事しています。
例えば、身体介助には入浴介助、食事介助、排泄介助などが含まれ、生活援助には掃除や買い物などのサポートが含まれます。
介護福祉士は、利用者の生活の質を向上(QOLの向上)させるために欠かせない役割を果たしています。
利用者の身体的、精神的なケアを通じて、介護サービス利用者が自立した生活を送ることができるように支援します。
また、介護福祉士は日々の介護業務を通じて利用者だけでなく、その家族や介護者、地域コミュニティとも連携し、包括的な活動や支援をすることで、地域福祉の向上にも寄与しています。
ケアマネージャーの役割と仕事内容
ケアマネージャーは、介護を必要とする利用者一人ひとりのケアプランを作成し、ニーズに合わせた適切な介護サービスを提供するための調整役でもあります。
介護福祉士が直接介護を提供する一方で、ケアマネージャーは利用者の状況を把握し、その人に最適な介護サービスを選定し、様々なサービス提供事業者との連携を図ります。これにより、利用者の生活の質を高め、介護サービス全体の質も向上させることが可能となります。
例えば、新たに介護が必要となった高齢者の場合、ケアマネージャーはまずその人の健康状態や生活環境、家族の支援状況などを確認します。その上で、訪問介護やデイサービス、施設型の介護サービス、福祉用具の利用など、利用者にとって最適な介護サービスを組み合わせたケアプランを作成します。このケアプランに基づいて、サービス提供事業者と連携し、計画的な支援を実施していきます。
さらに、ケアマネージャーは利用者の生活全般に関わる幅広いサポートを提供します。例えば、食事や入浴の介助、薬の管理、医療機関との連絡調整、福祉機器の導入など、日常生活の様々な場面での支援を行います。また、定期的な訪問や連絡を通じて、利用者の状況を常にチェックし、必要に応じてケアプランの見直しや変更を行います。
このようにケアマネージャーの役割は非常に重要であり、利用者一人一人に適した介護サービスを提供するために欠かせない存在です。利用者の生活の質を向上させるとともに、介護サービス全体の質を高めるために、ケアマネージャーは日々奮闘しているとも言えます。
介護福祉士とケアマネージャーの給与の現状
介護福祉士とケアマネージャーはどちらも介護業界で重要な役割を果たしていますが、給与や待遇に関してはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは、その違いについて詳しく解説します。
※従事している介護サービスの種別や勤務形態(常勤・非常勤・夜勤の有無)、役職の有無もあるため、一概に給与と待遇の違いを明確にすることができない点はご留意ください。また、本記事は給与や待遇の違いで介護福祉士やケアマネージャーのどちらの資格が優れているかなどを評価するものではありません。
介護福祉士の給与と待遇
介護福祉士の給与と待遇は、他の職業に比べてやや低めに設定されていると言われています。しかしながら、介護業界は慢性的な労働力不足に直面しており、労働条件の改善が求められています。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、介護福祉士の給与は、常勤の平均月収が331,690円でした。
労働条件としては、日々の業務が肉体的にも精神的にも負担が大きい一方、給与水準はその努力に見合っていないと感じることも少なくありません。
【引用:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」】
このような現状に対して、介護福祉士の待遇改善が強く求められています。具体的には、給与の引き上げや福利厚生の充実、働きやすい環境の整備などが考えられます。特に、労働条件の向上は、介護福祉士のモチベーションや業界全体の質の向上に繋がる重要な要素です。
介護福祉士として働く人々は高齢者やその家族にとって貴重な存在であり、その努力や貢献に見合った報酬と待遇を受けることが、介護業界全体の健全な発展に寄与するでしょう。今後も介護福祉士の処遇改善に向けた取り組みが期待されています。
ケアマネージャーの給与と待遇
ケアマネージャーは介護サービスの計画や調整を担当するため、高い専門知識と調整力が求められます。
厚生労働省の「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、ケアマネージャー(介護支援専門員)の給与は、常勤の平均月収が376,240円でした。
【引用:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」】
介護福祉士の給与と比較すると、ケアマネージャーの給与は比較的高目に設定されているとも言えますが、従事している役割や責任なども異なるため一概に比較することは難しいです。しかし、既に介護福祉士や看護師、社会福祉士などの資格を取得している方からするとキャリアアップを目指す上で、ケアマネージャーは非常に魅力的なキャリア形成の選択肢とも言えます。他の資格と同様に専門知識やスキルの向上が求められるため、業務に対する高いモチベーションも魅力的な職種とも言えます。ケアマネージャーとしてステップアップすることで、自身のキャリアパスの可能性を広げることにもつながるでしょう。
介護福祉士とケアマネージャーの介護現場での関係性
介護現場で働く介護福祉士とケアマネージャーは、互いに補完し合いながら高齢者や障がい者の支援を行っています。ここでは、両者の関係性について詳しく解説します。介護現場では、介護福祉士とケアマネージャーの協力が欠かせません。介護福祉士は直接的な介護提供を行い、ケアマネージャーはケアプランの作成と連携調整を担います。これにより、利用者のQOL(生活の質)向上が実現されます。
介護現場での協力関係
介護福祉士とケアマネージャーは、介護現場での効果的な協力関係を築くことが重要です。それぞれの専門知識と経験を活かして、一緒に働くことで利用者に最適な介護サービスを提供できるからです。例えば、介護福祉士が日々の介護業務で利用者の体調や行動の変化を観察し、それをケアマネージャーと情報共有することで、適切なケアプランの作成や修正、最適な介護サービスの提供につながります。
このように、介護福祉士とケアマネージャーの協力関係は、利用者に対する最良の介護サービスを提供する上で非常に大切な要素となります。連携と情報共有の徹底によって、利用者の生活の質の向上にもつながります。
チームでの連携が利用者の生活を支える
介護現場では、チームでの連携が非常に重要です。介護福祉士やケアマネージャーなど様々な専門家が協力することで、利用者の多様なニーズに対応でき、質の高い介護サービスを提供することができるからです。チームで情報が共有され、各専門家が自分の役割を十分に発揮できる環境が整うことで、サービスの質の向上が期待できるのです。
具体的には、定期的なミーティングや情報共有の仕組みを設けることで、利用者の状態や対応方針についての共通理解を深めることができます。
こういった環境やプロセスを実現することで、各専門家が持つ知識と経験を最大限に活かし実践することが、利用者一人ひとりに最適なケアの提供を可能とし、介護サービス全体の質を高めるためのチーム連携を確立していくことにつながります。
介護福祉士とケアマネージャーの違い | まとめと総括
介護福祉士とケアマネージャーは、介護分野で重要な役割を果たしていますが、これまでの内容を総括し、両者の違いについてまとめます。
まず、介護福祉士とケアマネージャーは試験の受験資格が異なります。
介護福祉士は一定の実務経験や養成施設での修了が必要であり、実際の介護業務を多く担当します。一方、ケアマネージャーは、介護計画の策定やサービスの調整を行います。
給与と待遇についても多少の違いがありましたが、両者は介護現場で協力し合いながらチームとして連携し、利用者に最適なケアを提供するという共通の目標があることも学びました。
それぞれの資格の特性や役割を理解することで、今後のスキルアップに向けて少しでも参考にして頂けたなら幸いです。
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介護福祉士やケアマネージャー、他の介護資格に関連する情報を知ることで、ご自身の日々の業務に活かすことができます。
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