特定技能1号(介護)で働く外国人介護士は、原則として通算5年で在留期限を迎えます。
しかし、第38回介護福祉士国家試験(2026年1月実施)以降は、介護福祉士のパート合格制度により、次の条件を満たすことで、最長1年間(通算6年まで)の在留継続が可能となりました。
その条件は最終年度の国家試験で、
- 国家試験を全パート受験している
- 1パート以上合格している
- 総得点が「合格基準点の8割以上」である
- 翌年度も受験する意思がある
- 所属機関が学習計画を作成し支援する
というものです。これは、施設にとって「帰国予定だった人材をもう1年確保できる可能性がある」重要な運用変更です。
本記事では、介護施設の運営者・管理者・教育担当者の方向けに、延長の要件、手続き、実務対応、そして合格率を高める具体策までわかりやすく整理します。
※本記事は、厚生労働省公式ホームページ「介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で 「特定技能1号」の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について」の情報と公表資料を参照して作成しています。
1.なぜ在留延長措置が導入されたのか
介護分野では、2040年に向けて大幅な人材不足が見込まれています。
一方で、介護福祉士国家試験の受験者数は減少傾向にあります。
特に外国人介護士は、
- 日本語の読解力
- 専門用語の理解
- 就労と学習の両立
といった課題を抱えています。
従来は、5年目の国家試験で不合格となれば、原則帰国でした。
しかし実際には、
- 合格基準まであと数点
- 1つのパートは十分合格水準
- 日本語読解が弱点
という「合格可能性の高い人材」も少なくありません。
このような背景から、国家試験にパート合格制度が導入され、それと連動する形で、特定技能1号(介護)の在留継続措置が整理されました。
2.介護福祉士国家試験のパート合格制度とは
第38回介護福祉士国家試験から、複数のパート(科目群)に分けて判定されます。一定の合格水準に達したパートは、翌々年まで受験免除となります。
ただし重要なのは、パート合格=介護福祉士資格取得ではないという点です。全パート合格して初めて国家試験合格となります。
パート合格はあくまで「一部合格」であり、配置基準や報酬算定上の介護福祉士には該当しません。
パート合格制度の詳細は、以下の関連記事をご覧ください
3.在留延長が認められる具体的要件
本人が満たす要件
特定技能1号として通算5年に達する前の最終年度に実施される国家試験において、以下を満たす必要があります。
- 全パート受験していること
- 1パート以上合格していること
- 総得点が合格基準点の8割以上であること
- 翌年度も国家試験を受験する意思があること
ここで注意すべきは、「8割以上」は満点の8割ではなく、合格基準点の8割以上という点です。
例えば、合格基準点が75点であれば、 75 × 80% = 60点以上が目安となります。
つまり、延長対象となるのは「合格に極めて近い水準」に達している人材です。
※上記要件は、厚生労働省が公表している特定技能(介護分野)の在留期間延長に関する運用資料に基づくものです。詳細は公式資料をご確認ください。厚生労働省資料:「パート合格による介護分野の特定技能外国人の在留期間延長について」
所属機関(施設側)の要件
延長には、施設側の対応も不可欠です。
- 引き続き雇用する意思があること
- 支援責任者が本人と面談し、学習を振り返ること
- 翌年度合格を目指す学習計画を作成すること
- 国家試験対策講座や研修受講予定を計画に明示すること
この学習計画は、厚生労働省に提出する必要があります。
在留延長が認められる要件【一覧表】
以下は、法人として必ず押さえるべき延長要件です。
| 区分 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 受験 | 全パート受験 | 一部受験は不可 |
| 合格 | 1パート以上合格 | 資格取得ではない |
| 得点 | 合格基準点の8割以上 | 満点基準ではない |
| 本人 | 翌年度受験の誓約 | 合格時は資格変更 |
| 法人 | 学習計画作成・提出 | 面談記録が重要 |
4.手続きの流れと注意点
国家試験の合否だけでなく、「全パート受験しているか」「1パート以上合格しているか」「総得点が合格基準点の8割以上に達しているか」を必ず確認します。
延長対象となるかどうかは、この3点の充足が前提です。あわせて、翌年度の再受験意思についても本人に確認しておくことが重要です。
延長要件を満たしている場合、所属機関は厚生労働省へ確認依頼書と学習計画等を提出します。
学習計画には、翌年度合格に向けた具体的な対策(国家試験対策講座の受講予定、日本語学習計画、面談実施状況など)を明記する必要があります。提出期限は原則、受験年の4月末日までです。
厚生労働省による確認後、要件を満たしていると判断された場合、「結果確認通知書」が発行されます。
これは在留延長手続きの前提資料となる重要書類ですが、この通知書自体が在留更新を保証するものではありません。
結果確認通知書を添えて、出入国在留管理庁へ在留期間更新許可申請を行います。
最終的な在留期間更新の可否は入管が判断します。許可が下りた場合、最長1年間(通算6年まで)の在留継続が可能となります。
⚠ 手続き上の注意点
提出書類や様式は随時更新されるため、申請前に厚生労働省公式ページで最新版をご確認ください。
提出期限は原則「受験年の4月末日まで」です。
在留期間更新の最終判断は出入国在留管理庁が行います。
結果確認通知書は更新を保証するものではありません。
5.「8割水準」に届くかは日本語力で決まる
在留延長要件である「合格基準点の8割以上」に到達するには、総得点の底上げが不可欠です。その鍵となるのが、日本語力です。
湘南国際アカデミーが公表したプレスリリース「外国人介護人材の国家資格合格率 71.2%達成(2025年4月25日)」によると、
- 日本語学習を早期に開始した受講生ほど合格率が高い
- 日本語レベルが高い受講生(具体的にはN2以上)ほど国家試験合格率が向上する
という傾向が明確に示されています。
特に、
- 入国前からの日本語教育
- 介護専門用語の体系的学習
- 試験問題の読解トレーニング
を行った受講生では、合格率が大きく向上しています。
介護福祉士国家試験では、言い換え問題や事例読解、長文選択肢問題が多く出題されます。
現場では「知識不足」よりも「読解不足」による失点が目立ちます。
在留延長制度は「合格可能性が高い人材」に与えられる措置です。
早期から日本語教育を行い、計画的に読解力を強化している法人ほど、延長要件を満たす確率は高まります。
これは教育論ではなく、制度を活かすための実務戦略として取り入れることで効果が期待できます。
6.施設運営者が今から準備すべきこと
この制度は、5年目直前に慌てて対策するものではありません。
延長対象となる「8割水準」に到達するには、計画的な学習が不可欠です。
- 4年目以前からの国家試験対策開始
- 日本語読解力の底上げ
- 面談記録・学習履歴の整備
- 学習計画の標準化
属人的な支援ではなく、法人としての育成モデルを構築することが重要です。
7.湘南国際アカデミーができる法人向け支援
湘南国際アカデミーでは、外国人介護士の国家試験合格と在留延長対応を見据えた支援を行っています。
介護福祉士国家試験対策(パート対応型)
- パート別弱点分析
- 模擬試験と振り返り設計
- 合格基準8割水準を目指す得点戦略
介護日本語教育(夜間オンライン対応)
- 試験問題読解力の強化
- 専門用語の定着
- 言い換え表現の理解
総得点を底上げするには、日本語理解力の向上が不可欠です。
法人向け学習計画運用サポート
- 学習計画作成支援
- 面談フォーマット提供
- 進捗管理モデルの提案
教育担当者の負担を軽減しながら、制度要件を満たす体制づくりを支援します。
FAQ|介護福祉士パート合格制度による特定技能1号(介護)の在留延長Q&A
- Q1.介護福祉士国家試験が不合格でも在留延長はできますか?
- A
最終年度に全パート受験し、1パート以上合格し、総得点が合格基準点の8割以上などの要件を満たした場合、最長1年間(通算6年まで)の在留継続が可能です。
- Q2.「合格基準点の8割以上」とは満点の8割ですか?
- A
満点の8割ではありません。その年度の合格基準点の8割以上を指します。年度ごとに基準点が異なるため、必ず確認が必要です。
- Q3.施設(所属機関)はどのような対応が必要ですか?
- A
支援責任者が面談を行い、翌年度合格を目指す学習計画を作成します。確認依頼書、試験結果の写し、在留カード写し、学習計画を厚生労働省へ提出します。提出期限は原則受験年の4月末日までです。
- Q4.結果確認通知書が出れば必ず在留更新できますか?
- A
最終的な在留期間更新許可の判断は出入国在留管理庁が行います。通知書は更新を保証するものではありません。
- Q5.延長期間中に合格した場合はどうなりますか?
- A
速やかに在留資格「介護」への変更申請を行います。
- Q6.延長期間中に再度不合格だった場合はどうなりますか?
- A
誓約内容に基づき、原則として帰国となります。
まとめ
介護福祉士パート合格制度により、
- 全パート受験
- 1パート以上合格
- 合格基準点の8割以上
を満たせば、特定技能1号(介護)の外国人介護士は最長1年間の在留延長が可能です。
ただし、
- 自動延長ではない
- 学習計画の提出が必要
- 入管審査がある
という点を理解する必要があります。この制度は、「偶然の延長」ではなく、「計画的育成」を前提とした仕組みです。
外国人介護人材を短期戦力で終わらせるのか、介護福祉士として長期定着させるのか。その分岐点が、今まさに制度として示されています。
湘南国際アカデミーでは、法人と連携しながら、国家試験対策から在留延長対応まで丁寧にサポートしてまいりますので、ご不明な点などございましたらお気軽にお問い合わせください。
【当記事の執筆参考資料】
厚生労働省資料:「介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)による介護分野で「特定技能1号」の在留資格をもって本邦に在留する外国人の通算在留期間の延長に関する措置について 」
厚生労働省資料:「パート合格による介護分野の特定技能外国人の在留期間延長について」
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その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
また、湘南国際アカデミーが発行する「介護業界マンスリーレポート」の企画・監修にも関わり、介護事業所の人材課題や育成ニーズについて、継続的に現場情報の収集・分析を行っている。


