介護業界では慢性的な人手不足が続き、外国人労働者の採用・定着が事業運営の重要テーマになっています。一方で、在留資格の選定や手続き、教育・生活支援、文化差への対応など、国内採用とは異なる論点も多くあります。
本記事では、介護分野における外国人労働者の現状を整理したうえで、採用メリット・リスク、代表的な在留資格の違い、採用の流れ、事例、受け入れ時の注意点までを体系的に解説します。自施設に合う制度・運用を選び、安定的な人材確保と定着につなげるための実務的な判断材料としてご活用ください。
1. 介護業界における外国人労働者の現状
外国人介護人材の必要性が高まる背景には、日本の人口構造の変化と、現場で顕在化している採用難があります。まずは社会状況と受け入れの現状を解説します。
日本の超高齢社会と深刻化する人手不足
高齢化が進むほど介護需要は増えますが、支える側の生産年齢人口は減少しており、介護の採用難は景気の波ではなく構造課題になっています。現場では欠員を前提にシフトを組む状態が続き、残業や業務負担が増えて離職が起きるという悪循環に陥りやすくなります。
有効求人倍率などの指標でも、介護職は全職種平均より高い水準で推移しやすく、採用しても定着しないと人員が積み上がりません。特に地方、夜勤要員、経験者の確保は難度が高く、従来の求人媒体だけでは母集団を作れないケースが増えています。
人手不足が深刻化すると、サービス提供量の制限、受け入れ停止、ひいては閉鎖や倒産リスクにもつながります。採用は人事課題であると同時に、事業継続リスクを下げるための経営課題として扱う必要があります。
増え続ける外国人介護職の活躍と受け入れ状況
医療・福祉領域で働く外国人は増加傾向にあり、介護現場でも「いるのが当たり前」になりつつあります。採用の選択肢として現実味が増したことで、施設側は受け入れ前提の教育体制や評価制度を整える段階に入っています。
受け入れの主なルートは、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能の4つです。どれを選ぶかで、候補者の背景、求められる教育の厚み、在留期間、支援体制が変わり、採用後の運用が大きく変化します。
また、訪問系サービスへの従事は制度運用上の重要論点で、対象範囲や要件が制度ごとに整理されています。自施設が担うサービス種別によって、受け入れ可能な在留資格が絞られることがあるため、採用前に業務設計まで含めて確認しておくことが重要です。
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2. 外国人労働者を介護職として雇用するメリット
外国人採用は単なる人数確保にとどまらず、職場の活性化や組織づくりにも波及します。得られる効果を具体的に解説します。
人材不足の解消と現場の活性化
外国人を採用対象に含めることで、応募の母集団が拡大し、特に確保しづらいポジションを補完しやすくなります。地方や夜勤などで採用が難しい場合でも、条件設計と支援体制が整うと採用成功率が上がるケースがあります。
また、目的意識が明確で、就労継続への意欲が高い人材が多いことも特徴です。転職が簡単ではないからという理由だけでなく、国家資格取得やキャリアアップを目標に据えている場合、学習と実務の両面で伸びやすい傾向があります。
受け入れを進める過程で、教え方を統一する必要が出てきます。結果として、マニュアル整備、チェックリスト化、申し送りの定型化、ICT活用などが進み、業務の属人化が減って現場が回りやすくなることがあります。これは外国人職員のためだけでなく、全職員の負担軽減に直結します。
多様性の促進とチームワーク強化
多文化環境では、曖昧な指示や暗黙のルールが通じにくいため、説明が明確になります。結果として、報連相の質が上がり、ミスの芽が早い段階で共有されるなど、安全面の改善につながることがあります。
相互理解が進むと、個人の弱点を補い合う動きが生まれ、チームワークが強化されます。例えば、日本語がまだ不安な職員には記録のテンプレートを用意し、代わりにケアの丁寧さや観察力を生かしてもらう、といった役割設計が可能になります。
利用者や家族の不安を減らすには、事前説明と見える化が重要です。誰がどの業務を担当し、指導者がついているかを共有できると安心材料になり、結果として施設への信頼や満足度向上につながる可能性があります。
3. 外国人労働者を介護職で雇用するデメリット・リスク
採用前にリスクを把握し、受け入れ設計で軽減することが定着の鍵です。代表的な課題を「現場運用」と「制度・コスト」に分けて解説します。
コミュニケーション・文化の違いへの対策と現場運用のコツ
介護現場の日本語は、日常会話より難易度が高い場面が多くあります。申し送り、記録、事故報告、医療連携の用語は、聞き取りや漢字が壁になりやすく、情報の抜け漏れが事故につながるリスクもあります。
文化差では、察する前提のコミュニケーション、遠回しな注意、年功序列の空気感などが誤解を生みやすいポイントです。例えば「これ、お願いできる?」という依頼が優先度の高い指示として伝わらず、結果的に遅れてしまうといったことが起こります。
対策は、やさしい日本語で短く言うこと、指示を具体化して優先順位と期限をセットで伝えることが基本です。OJTは段階表を作り、メンターを固定し、定期面談で困りごとを言語化できる場を作ると定着が進みます。あわせて、利用者・家族への事前説明、差別やハラスメントを許さない仕組みづくりも施設側の責務です。
在留手続き・研修などのコスト負担
外国人雇用では、在留資格の申請・更新、各種届出、書類保管などの実務が発生します。特定技能では支援計画の作成や実施、定期届出などもあり、担当者の理解不足があると手戻りが増えやすくなります。
費用面では、監理団体や登録支援機関の費用、紹介手数料、日本語教育・介護技術研修、教材費、国家試験対策、住居支援などが積み上がります。安く見せた採用計画は後で破綻しやすいため、初年度にかかる費用と、更新まで含めたランニングを分けて見積もることが重要です。
さらに見落とされがちなのが、現場の教育工数です。教える時間を確保できないと、成長が遅れて双方が疲弊します。採用人数に応じて教育担当の持ち時間を確保し、教育を業務として評価する設計がないと、定着以前に受け入れが続かなくなります。
4. 外国人労働者が介護職で取得可能な在留資格
外国人介護人材の採用は、どの在留資格で受け入れるかにより、就労範囲・期間・支援義務が大きく変わります。以下に、主要4制度の特徴を比較します。
4-1.在留資格「介護」
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を前提とするため、専門性に裏付けられた就労が可能です。更新回数の制限がなく、長期就労につながりやすい点が、施設側にとって大きなメリットになります。
取得ルートとしては、介護福祉士養成施設を卒業して資格を得る流れや、実務経験を積み国家試験に合格する流れがあり、いずれも学習支援が鍵です。採用時点で「介護」でなくても、将来的に移行を見据えたキャリア設計ができます。
施設側は、国家資格取得支援を福利厚生ではなく経営施策として位置づけると効果が出やすいです。合格後の役割付与や賃金テーブルを明確にすることで、学習の動機が強化され、定着と戦力化の両方が進みます。
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4-2.特定技能1号
特定技能1号は、人手不足分野で一定の技能を持つ人材を即戦力として受け入れる制度です。介護分野では、介護技能評価試験、日本語試験、介護日本語評価試験などの要件があり、一定の基礎力を前提に採用しやすい特徴があります。
在留期間は原則として通算5年が上限のため、長期雇用を考えるなら、在留資格「介護」への移行を視野に入れた設計が重要です。採用時から介護福祉士国家試験対策を始め、学習時間の確保と段階的な業務拡大を組み合わせると、本人の将来像と施設の人員計画が一致しやすくなります。
特定技能では支援義務が発生し、登録支援機関の活用も選択肢になります。丸投げではなく、施設側が現場情報を共有し、支援計画が実態に沿って回るように管理することが、定着とコンプライアンスの両面で重要です。
4-3.技能実習
技能実習は技能移転を目的とした制度で、介護職種でも受け入れが行われています。段階は1号から始まり2号、3号へと進み、最長年数の枠があります。実習計画の作成や監理団体の関与など、運用面の特徴が明確です。
介護分野では、学習と実務を並行して進める設計が必要で、特に日本語の伸びが定着と安全の土台になります。日本語水準の目安を踏まえ、記録や申し送りなど、現場で求められる言語領域に絞ってトレーニングすると成長が早まります。
技能実習は制度上の制約があるため、長期雇用の主軸にするより、特定技能への移行や、介護福祉士取得による在留資格「介護」への到達可能性を含めてキャリアを設計することが現実的です。施設側も、移行時に必要な書類や要件を早めに把握しておくと、離職ではなく制度移行として継続雇用につなげやすくなります。
4-4.EPA(経済連携協定)
EPAは、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどから介護福祉士候補者を受け入れ、就労しながら介護福祉士国家試験合格を目指す枠組みです。斡旋主体があり、受け入れ施設には研修実施など育成面での責務が求められます。
特徴は、労働力確保というより育成色が強い点です。学習支援が不足すると、試験不合格で将来が分かれてしまい、施設側も本人もダメージが大きくなります。
成功させるには、介護過程の理解、日本語、介護福祉士試験対策を計画的に積み上げることが重要です。学習時間を勤務の中でどう確保するか、指導者を誰にするか、教材と進捗管理をどう整えるかまで作り込むと、合格後の在留資格「介護」による長期就労へつながりやすくなります。
5. 外国人介護人材採用の流れと手続き
採用活動は「募集・選考」「在留手続き」「入職後の受け入れ設計」を一連で組み立てる必要があります。ここでは、代表的な流れを押さえます。
求人募集から面接までの準備
まず決めるべきは、採用ターゲットです。在留資格の種類、国内在住か海外在住か、介護経験の有無、日本語力の目安、夜勤可否などを具体化し、職務要件として言語化します。ここが曖昧だと、入職後に任せられない業務が増え、現場の不満につながります。
面接では、就労可能な在留資格と期限、勤務可能時間、夜勤の条件、学習意欲、支援ニーズを確認します。特に、本人が将来どの在留資格を目指すのかを聞くと、学習計画や定着の見通しが立ちやすくなります。
労働条件は書面で明示し、評価基準も統一します。可能であれば現場見学やトライアルを設定し、教える側の負荷を含めて受け入れ可否を判断します。人事、現場リーダー、教育担当の役割分担を事前に決め、連携の窓口を一本化しておくと、入職後の混乱を減らせます。
在留資格認定証明書の申請と許可取得
海外在住者の場合は、一般的に在留資格認定証明書の交付申請を行い、交付後に査証取得、入国、就労開始という流れになります。手続きには一定の期間が必要なため、採用計画は余裕を持って組むことが重要です。
国内在住者の場合は、在留資格変更許可申請が中心になります。いずれの場合も、雇用契約内容と在留資格の整合性が重要で、業務内容が制度上認められる範囲かどうかを事前に確認しておく必要があります。
雇用後は、外国人雇用状況の届出など、事後の届出も発生します。特定技能では支援計画や定期的な届出が絡むため、実務担当者がスケジュール管理できる体制を作り、チェックリストで漏れを防ぐ運用が有効です。
6. 外国人介護職の採用事例
制度選択や支援設計のイメージを具体化するため、よくある成功パターンを事例として紹介します。ここでは、移行制度を活用して戦力化した例と、育成型で国家資格まで到達させた例を紹介します。
事例1:技能実習&特定技能の段階的育成で3年以内に戦力化した施設
背景
地方の介護事業所が人手不足解消を目的に、初めて外国人介護職を採用。母国はフィリピン。
最初は技能実習制度を活用し、入国後すぐに現場配属ではなく、介護職員初任者研修と介護日本語を体系化して実施。
支援設計
- 入職前:受け入れ前研修(介護基礎用語・日本文化理解・安全教育)
- 入職後:OJT+記録/申し送りの習熟ステップを段階化
- 1年目:基礎生活支援・清掃・食事補助中心(介護職員初任者研修を取得)
- 2年目:移乗・体位変換・レクリエーション支援へ段階的移行
- 3年目:特定技能資格取得を視野に専門講座受講
成果
- 2年目後半から夜勤参加が可能になり、人員安定化に寄与
- 日本語能力N4→N3へ合格(事業所内の会話・記録能力向上)
- 3年目に特定技能資格を取得し、正職員として定着
ポイント
☑ 生活支援・日本語研修をスタート時点で計画化
☑ 一気に戦力化させようとせず段階目標を明確化
☑ 目に見える成長曲線を掲示し、チームで共有
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事例2:オンライン日本語+介護講座で国家資格取得まで導いた育成型モデル
背景
都市部に展開する介護法人様から、採用した外国人を長期戦力に育てたいと湘南国際アカデミーにご相談いただき日本及び介護教育を導入。出身はベトナム。
支援設計
- 採用時点で「将来の介護福祉士受験」をゴールに設定
- 湘南国際アカデミーの独自カリキュラムで日本語(JLPT N3/N2レベル)を段階的に学習
- 選択式通信講座+オンラインでの夜間オンライン日本語講座・実務者研修を支援
- 湘南国際アカデミーの介護福祉士受験対策講座(対面で参加できない際には動画視聴)
成果
- 日本語能力試験N3・N2取得後、介護福祉士国家試験受験へ進展
- 受験勉強の過程でケアプランの考え方・制度理解が深まり、介護現場での判断力が向上
- 合格後は現場リーダー候補として育成計画に位置づけ
ポイント
☑ 長期(1〜3年)の育成計画を採用時から共有
☑ 外国人×日本人ミックスで学びの場を設計
☑ 湘南国際アカデミーの学習管理+生活支援ノウハウを活かした継続支援
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7. 外国人介護人材受け入れ時の注意点
採用の成否は「入職後の定着」で決まります。離職やトラブルを防ぐために、教育・生活・組織の三面から受け入れ体制を整えます。
受け入れで最も差が出るのは、入職後の90日です。この期間に、仕事の理解不足、生活の不安、相談できない孤立が重なると、早期離職につながりやすくなります。
日本語教育・生活支援の重要性
日本語は日常会話ができても、介護記録や申し送り、事故報告の文章が書けないと業務の幅が広がりません。継続学習の仕組みとして、学習時間、教材、eラーニング、目標設定を用意し、到達目標を可視化することが重要です。特に専門用語は、用語集や一問一答形式の教材を使うと習得が早まります。
生活支援は、住居、口座開設、携帯、交通、行政手続き、医療受診など、来日直後に集中して発生します。ここが整わないと仕事に集中できず、欠勤や離職の原因になります。施設が全てを抱え込むのではなく、案内資料や手続きチェックリストを整え、必要時に同伴支援する形にすると負担をコントロールできます。
相談窓口とメンタルケアも欠かせません。困りごとは言語化できないまま蓄積しやすいため、定期的な1対1面談を設け、仕事と生活の両面で状況を確認します。早期に小さな不安を拾うことが、結果的に大きなトラブルを防ぎます。
受け入れ施設内の連携と文化理解
受け入れを現場任せにしないために、責任者を明確にし、人事、教育、現場リーダーが連携する体制を作ります。メンターの配置、定期面談、評価基準の統一を行うと、教える内容がばらつかず、本人も成長の道筋を理解しやすくなります。
文化理解は、外国人職員に日本のやり方を一方的に合わせさせることではありません。双方が誤解しやすい点を共有し、指示の出し方、注意の伝え方、相談の仕方をルール化することが実務的です。文化理解研修や受け入れオリエンテーションを実施し、現場の共通言語を作ります。
利用者・家族への説明も重要です。担当範囲や指導体制を伝え、不安を可視化して解消します。同時に、差別やハラスメントを許さない方針を明確にし、職員を守る仕組みを整えます。マニュアルやチェックリストで情報共有を標準化すると、受け入れ人数が増えても運用が崩れにくくなります。
FAQ|介護外国人労働者に関するよくある質問
- Q1.外国人介護職員の採用でよくある課題と対策は何ですか?
- A
よくある課題は次の通りです。
- 言語の壁:介護用語や記録の記述など、日常会話以上の日本語力が必要。
- 文化の違い:曖昧な指示や暗黙の了解が通じず、業務ミスにつながることも。
- 制度理解・手続き負担:在留手続き、支援計画の作成、教育工数がかかる。
対策としては、
- やさしい日本語・マニュアル化による教育支援
- 定期面談やメンタルケア体制の整備
- 日本語教育支援(例:湘南国際アカデミーの夜間オンライン日本語講座)
これらを組み合わせ、段階的な育成と職場全体での受け入れ体制が鍵になります。
- Q2.外国人介護士の定着率を上げるには、何をすべきですか?
- A
定着支援のために重要なポイントは以下です。
- 日本語・介護技術の継続教育:学習時間や教材、評価の見える化が必要。
- 生活支援:住居、銀行口座、医療など来日時の支援体制を整える。
- 職場内の役割明確化と文化理解研修:指導体制、評価基準の統一が定着を後押し。
湘南国際アカデミーでは、介護福祉士国家試験合格を目指す育成型プ
まとめ|外国人労働者を介護職で採用し事業安定化につなげる
介護業界で外国人労働者を採用することは、人材不足解消だけでなく、職場の活性化・標準化・多様性推進にもつながります。制度理解と実務設計を整えた上で、教育・生活・文化支援を包括的に設計することが、採用成功と定着の鍵となります。
湘南国際アカデミーでは、外国人介護士の採用・育成・国家資格取得までを一貫して支援する体制を整えています。外国人採用を検討されている法人様や個人の皆様は、お気軽にお問い合わせ・資料請求ください。
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その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
また、湘南国際アカデミーが発行する「介護業界マンスリーレポート」の企画・監修にも関わり、介護事業所の人材課題や育成ニーズについて、継続的に現場情報の収集・分析を行っている。



