介護の現場では、高齢者や要介護者の生活を支えるために大きく「生活援助」と「身体介護」という二つの業務があります。このうち、身体に直接触れて行う要介護者のサポートが身体介護であり、比較的専門的なスキルと資格が求められます。では具体的に、どのような資格が必要なのでしょうか。
この記事では、身体介護の具体的なケア内容から将来のキャリアアップに活かせる資格の種類、取得方法などを解説します。
身体介護とは
まずは、身体介護について説明します。
身体介護とは、利用者の身体に触れる移乗・入浴・排泄のケアなどを中心に行う介護です。技術的にも専門性が高いのが特徴で、利用者の健康状態を正確に把握しつつ、身体への負担を最小限に抑えながら介護する工夫が求められます。
一方で、生活援助は掃除や洗濯、調理といった家事全般が主な業務となり、身体に直接触れる場面は少なくなります。身体介護を行う場合には、事故防止や衛生管理が重要視されるため、基本的な知識と技術が備わっていることが求められます。一方、生活援助が中心の場面では、日常生活の継続をサポートする観点が大切です。
二つの違いを理解することは、介護利用者とのトラブル防止にもつながります。
身体介護で行う主なケアの種類
身体介護には、利用者の身体に直接関わるケアが数多く存在します。それぞれの基本的なポイントを押さえておきましょう。
移乗介助・体位変換・歩行支援
移乗介助とは、ベッドから車椅子などへの移乗を安全に行うケアを指します。体位変換は床ずれの予防を目的に行うケアで、一定時間ごとに姿勢を変えて血行を促進し、皮膚や筋肉への負担を軽減します。歩行支援は介護を必要とする人が歩行器や手すりを使用しながらゆっくりと移動するサポートを行うケアで、利用者のペースに合わせつつ転倒しないよう補助することが大切です。
入浴介助・清拭
入浴介助は、利用者が安全に浴槽へ移動できるよう配慮しながら行う介護です。利用者のプライバシーを尊重しつつ、お湯の温度と浴室の温度差にも注意を払いながら身体を清潔に保ちます。入浴が難しい場合には利用者の体を拭き、皮膚トラブルや感染症の発生を予防します。
排泄介助と感染症対策
排泄介助ではおむつ交換やトイレ誘導などの支援を行います。ケアの際は利用者の尊厳を守ることが最優先です。排泄物は感染症リスクが高いため、手袋やエプロンを着用して衛生面に十分配慮しながら行います。利用者の体調変化を把握しながら排泄の頻度の変化などに気づくことも、身体介護を行う人の重要な役割です。
食事介助・口腔ケア
嚥下障害(※)がある利用者には、食事のケアを行います。具体的には食べ物の大きさや柔らかさを調整したり、飲み込みやすい姿勢を確保したりします。食後の口腔ケアは虫歯や肺炎を予防するために行います。
※嚥下障害(えんげしょうがい):食べ物を飲み込みにくくなったり、むせやすくなったりしている状態のこと。
身体介護を行う人が取得している主な資格
身体介護に役立つ資格は複数あり、習得することでできる業務範囲やキャリアパスが広がります。資格の特徴や取得のポイントを見ていきましょう。
認知症介護基礎研修
認知症介護基礎研修とは、認知症への理解を深め、必要な基礎知識と技術を習得するための研修です。認知症の症状理解や対応の基礎、ケア技術などを学びます。認知症の人をサポートするための知識を身につけて、実際にサポートできるようになることが、学習の目的です。
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介護職員初任者研修
介護職員初任者研修では、介護の基本知識や技術を約130時間のカリキュラムで体系的に学ぶことができます。安心かつ安全なケアの提供方法やコミュニケーション技術など、実務で必要となる基礎をしっかり理解できる点が特徴です。修了後は訪問介護で身体介護を行えるようになるため、無資格の人が介護職として働くために習得が推奨される資格の一つと言えます。
初任者研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
介護福祉士実務者研修
介護福祉士実務者研修は、初任者研修よりも専門的な知識と技術を習得できる資格です。医療的ケア(たんの吸引や経管栄養)などの技術も学べるため、資格を習得すればより高度な介護サービスの提供ができるようになります。
実務者研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
介護福祉士
介護福祉士は、介護系資格の中で唯一の国家資格です。取得すると利用者の介助や支援に加え、現場スタッフの指導や管理業務も担えるようになります。また、訪問介護のサービス提供責任者や施設のリーダーとしても活躍できます。キャリアアップを目指す多くの介護職員が取得する代表的な資格の一つです。
なお、資格を取得するには国家試験に合格する必要があり、受験するには一定期間の実務経験などの条件が設けられています。
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認知症介護実践リーダー研修
認知症介護実践リーダー研修とは、認知症介護のリーダーを育成して、認知症介護の質の向上を目的としている資格です。近年増加している認知症高齢者に特化したケアを学ぶ研修となっています。症状や行動の理解から、個々の利用者に合わせた対応方法を学ぶため、認知症ケアの専門性を高められます。
認知症介護実践リーダー研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、要介護者のケアプランを作成する役割を担えるようになる資格です。試験の受験資格は、指定業務を5年以上かつ900日以上経験することで得られるため、初心者というよりは介護福祉士などで経験を積んだ人がステップアップを目的に習得を目指すケースが多いです。ケアマネジャーの資格を取得することで、マネジメント力や総合的な調整力が身につき、職場内外でのキャリアパスがより広がります。
ケアマネジャー(介護支援専門員)に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
身体介護に必要な資格を取得するための学習方法と支援制度
身体介護に必要な資格を取得するためには、資格講座や通信講座、市区町村が行う研修など、さまざまな学習方法があります。費用や時間などの制約と照らし合わせながら、自分に合った学習方法を選びましょう。
資格取得に向けた学習方法は、通学制のスクールに通う方法や仕事や育児と両立しやすい通信講座などが一般的です。自治体によっては、介護人材確保のために研修費用や受験料の一部を助成する制度もあります。事前に確認しておくと良いでしょう。
オンライン学習を取り入れた講座も増えているため、学びやすい環境を選ぶのがスムーズな習得への近道です。こうした多様な選択肢を検討しながら、自分の生活スタイルや学習ペースに合う方法を取り入れてみましょう。
無資格の人が介護でできること・できないこと
介護の世界は資格が必須のイメージがありますが、実は無資格であっても取り組める業務は存在します。ただし、できる業務の範囲に限りがあるため、どのような業務ができるのかを把握しておきましょう。
無資格でもできる業務としては、掃除や洗濯、食事の準備などの生活援助が挙げられます。また、施設内であれば有資格者職員の指導を受けながら身体介護を部分的に手伝うことも可能です。しかし、訪問介護での身体介護は原則として資格が必要となり、無資格のままではできません。
さらに2024年4月からは、無資格者が介護業務に携わる場合には、「認知症介護基礎研修」を受講することが義務化されました。150分程度の研修で認知症に対する基本的な理解やケアのポイントを学び、サービスの質の向上を目指します。
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FAQ|身体介護資格に関するよくある質問
- Q1.身体介護を行うために必要な資格は何ですか?
- A
身体介護を行うには、介護職員初任者研修の修了が基本的な要件です。さらに、介護福祉士実務者研修や介護福祉士といった上位資格を取得することで、提供できるサービスの幅が広がり、訪問介護や医療的ケアにも対応できるようになります。
- Q2.無資格でも介護の仕事はできますか?
- A
無資格でも、生活援助(掃除、洗濯、調理など)の業務であれば可能です。ただし、訪問介護における身体介護は資格が必要です。2024年4月以降は、介護職に従事する無資格者には「認知症介護基礎研修」の受講が義務化されました。
- Q3.身体介護の資格はどこで取得できますか?
- A
- Q4.働きながらでも資格を取ることはできますか?
- A
はい、可能です。通信制の講座や夜間・週末対応のスクールを選べば、仕事や家庭と両立しながら学ぶことができます。湘南国際アカデミーでもライフスタイルに合わせた柔軟なカリキュラムを用意しています。
- Q5.身体介護のスキルアップに役立つ資格はありますか?
- A
介護福祉士や認知症介護実践リーダー研修、ケアマネジャーなどの資格が該当します。いずれも実務経験を活かしてスキルアップできる資格で、現場の中核人材として活躍するための一歩となります。
身体介護ができる資格を取得してスキルアップを目指そう
身体介護は、高齢社会が進む日本においてますます重要な役割を担っています。未経験の方でも、段階的に資格を取得していくことで、安全かつ質の高いケアを提供できるようになります。
湘南国際アカデミーでは、介護の現場で求められる実践力を重視したカリキュラムと、受講生一人ひとりに寄り添ったサポート体制を整えています。資格取得後の就職支援も含め、安心してキャリアを築ける環境が整っています。
身体介護の知識とスキルを身につけ、自分の可能性を広げたい方は、まずは資料請求やお問い合わせからスタートしてみてください。資格取得の第一歩を、湘南国際アカデミーと一緒に踏み出しましょう。
その他、介護事業所や医療機関などにおいて当校の「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。
