要支援1・2と認定された方が「身体介護を受けられるのか」「訪問介護は使えるのか」と疑問に感じるケースは少なくありません。結論からお伝えすると、要支援の方は原則として介護保険給付の訪問介護(身体介護)を利用できません。代わりに、市町村が主体となって提供する「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の訪問型サービスを活用することになります。この記事では、制度の違い・総合事業で受けられる具体的なサービス内容・利用回数と費用の目安・身体介護が必要なときの対処法までをわかりやすく解説します。
要支援は原則「訪問介護(介護保険の給付)」の対象外
介護保険の「訪問介護(ホームヘルプ)」は原則として要介護1〜5が対象で、要支援1・2は給付としての訪問介護を利用できません。要支援は「介護がまったく不要」という意味ではなく、制度上は「生活の一部に手助けがあれば自立を維持しやすい段階」と整理されているため、長期的な身体介護を中心に組み立てる訪問介護(給付)の枠ではなく、介護予防の枠組みで支える設計になっています。
事業者のホームページなどで「訪問介護」という言葉を見かけても、要支援の方向けには総合事業の訪問型サービスを提供しているケースが多く、同じ事業所でも契約の制度枠が異なることがあります。まず「今の家族に何が必要か」を整理することが、適切な支援を見つける第一歩です。

介護福祉士
訪問介護のサービス提供責任者として働いていた頃、「要支援なのに身体介護をお願いできないの?」という声をご家族から何度も受けました。
訪問介護と総合事業の違いを知らないまま探すと、必要な支援に辿り着けず転倒や体調悪化につながるケースもあります。
まず制度の入口を正しく理解することが最も大切です。(参照:厚生労働省「介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン」)
以下の関連記事も読まれています
訪問介護と総合事業の違い
要支援の方が混同しやすいのが「介護保険の訪問介護」と「総合事業の訪問型サービス」です。目的・対象・サービス内容の3点で整理すると違いが明確になります。
| 比較項目 | 介護保険の訪問介護 | 総合事業の訪問型サービス |
|---|---|---|
| 対象者 | 要介護1〜5 | 要支援1・2・事業対象者 |
| 主な目的 | 自立支援 | 介護予防 |
| 身体介護 | 中心的に対応 | 限定的(自治体・類型による) |
| 生活援助 | 対応可 | 中心的に対応 |
| 担い手 | 訪問介護員(有資格者) | 介護事業者・NPO・ボランティア等 |
| 料金基準 | 国が統一基準を設定 | 自治体が独自に設定 |
見た目はどちらも「家に人が来て支援する」サービスですが、制度のゴールが違うため提供されやすい内容も変わります。要支援で希望が通らないと感じるときは、サービスが悪いのではなく制度の目的が異なることが原因になっているケースが多いです。
訪問介護のサービス内容について詳しくはこちら
要支援で使える「介護予防・日常生活支援総合事業」とは
総合事業は、市町村が地域の実情に合わせて「必要な支え方」を組み立てる仕組みです。担い手も介護事業者だけに限らず、NPOや住民組織などが関わることがあり、生活の困りごとに幅広く対応しやすいのが特徴です。
対象者は要支援1・2の認定を受けた方が中心ですが、要介護認定を受けていなくても自治体が実施する基本チェックリストで「事業対象者」と判定されれば利用できる場合があります。要介護認定には1か月程度かかりますが、チェックリストは数日で結果が出るため、急いでいる場合に有効な入口です。
なお、自治体ごとにサービスの名称・回数の上限・料金・提供できる範囲が異なります。地域包括支援センターで「自分の地域ではどうか」を確認することが最短ルートです。
総合事業で受けられる訪問型サービスの種類
総合事業の訪問型サービスは、担い手・内容・期間などが異なる複数の類型があります。どれが適切かは、生活の困りごとの性質と本人の回復可能性、家族支援の状況で変わります。
| 類型 | 担い手 | 主な内容 | 身体介護 | 料金目安 |
|---|---|---|---|---|
| 現行相当サービス | 訪問介護事業者 | 身体介護・生活援助 | 一部対応可 | 予防給付と同水準 |
| サービスA(基準緩和型) | 雇用労働者(基準緩和) | 掃除・洗濯・調理・買い物等の生活援助 | 原則なし | 国基準を下回る設定 |
| サービスB(住民主体型) | 住民ボランティア | 買い物・掃除・ゴミ出し等 | なし | 無料〜実費程度 |
| サービスC(短期集中予防) | 保健師・専門職 | 3〜6か月の機能改善・生活指導 | なし | 利用者負担なし |
| サービスD(移動支援) | 住民ボランティア | 通所型サービス等への送迎・外出支援 | なし | 無料〜実費程度 |
転倒リスクが高い・認知機能の低下がある・退院直後で状態が変化しやすいといった場合は、専門性と連携力のある現行相当サービスが選ばれやすいです。ゴミ出しや買い物など限定的な困りごとは、地域資源(サービスB・D)を活用したほうが継続しやすいこともあります。
要支援1・2の利用回数と費用の目安
要支援1と要支援2では、1か月あたりの支給限度額が異なります。以下はおおよその目安です。実際の自己負担額や利用できる回数は自治体の設定や所得区分によって変わるため、詳細は地域包括支援センターまたはケアマネジャーに確認してください。
| 区分 | 支給限度額(月) | 訪問型サービスの頻度目安 | 自己負担額の目安(1割) |
|---|---|---|---|
| 要支援1 | 50,320円 | 週1〜2回程度 | 約5,032円/月 |
| 要支援2 | 105,310円 | 週2〜3回程度 | 約10,531円/月 |
支給限度額の範囲内であれば、費用の1割(所得によっては2〜3割)が自己負担となります。限度額を超えた分のサービス費用は全額自己負担になるため、ケアプランを作成する際に「どのサービスに何回使うか」をケアマネジャーと一緒に整理することが重要です。
要支援での身体介護はどこまで対応されるか
要支援の支援は「介護予防」「自分でできることを増やす」視点が中心で、訪問型サービスでは生活援助が中心になりやすい一方、状況により身体に関わるサポートが一部含まれることもあります。線引きは自治体や事業者の運用・ケアプランで変わるため整理が必要です。
| 区分 | 主な支援内容の例 | 要支援での対応 |
|---|---|---|
| 身体介護 | 入浴介助・排泄介助・オムツ交換・移乗介助・体位変換・歩行介助・食事介助・更衣介助 | 原則限定的。現行相当サービスで一部対応の場合あり |
| 生活援助 | 掃除・洗濯・調理・買い物・ゴミ出し・薬の受け取り | 総合事業の中心。サービスA・Bで対応しやすい |
| 見守り的援助 | 転倒リスクがある動作の見守り・声かけ・手順の整理 | 対応可能なケースが多い |
身体介護に見える困りごとでも、原因が環境や道具にある場合があります。浴室の段差・手すり不足・衣類の選び方・動作手順の整理などを整えると介助量が減り、総合事業の生活援助と短期集中支援で回るケースも少なくありません。
なお、たんの吸引・点滴管理・注射などの医療行為は、一般的に訪問介護や総合事業の訪問型サービスでは行えません。医療的ケアが必要な場合は、訪問看護との連携が前提になります。

介護福祉士
ケアプランを作る立場から見ると、身体介護の必要性は「何が危険か」を具体的に言語化することで伝わりやすくなります。
「入浴が怖い」ではなく「浴槽をまたぐ際にふらつきがあり転倒リスクが高い」と伝えると、総合事業の中で対応できる支援かどうかの判断が格段にしやすくなります。
訪問型サービスを利用するまでの流れ
総合事業の訪問型サービスは、いきなり事業者と契約するのではなく、相談・対象者確認・ケアプラン作成を経て利用開始となるのが一般的です。
①相談・申請:最初の相談先は地域包括支援センターです。要支援認定を申請するか、基本チェックリストで事業対象者の判定を受けるかは、困りごとの重さ・急ぎ度・今後の見通しで変わります。生活が回らない状態なら、待つ間の支援策も含めて同時に相談することが重要です。
②ケアプラン作成:要支援で総合事業を利用する場合、介護予防ケアマネジメントにより支援内容・頻度・目標をケアプランとして整理します。目標が曖昧だと支援が単なる代行になりやすく、改善にもつながりにくくなります。
③事業者選定・利用開始:ケアプランが固まったら事業者を選定し契約してサービス開始となります。開始後はモニタリングで目標に近づいているか確認し、転倒や入院などで状態が変わったときは早めに再評価・調整することが大切です。
📋 相談時に伝えると判断がスムーズになる情報
① 現在困っている動作(例:浴槽をまたぐのが怖い・トイレへの移動に時間がかかる)
② 介助が必要な頻度(毎日か・週何回か)
③ 同居家族の状況(就労中か・介護できる時間帯はいつか)
④ 現在の主治医の見解(状態の見通し・今後の変化の可能性)
訪問介護のサービス内容についてはこちら
よくある質問(FAQ)
- Q1.要支援1と要支援2では、受けられる身体介護の範囲は違いますか?
- A
要支援1・2ともに介護保険給付としての訪問介護(身体介護)は原則対象外です。ただし支給限度額が要支援1(月50,320円)と要支援2(月105,310円)で異なるため、ケアプランに組み込めるサービス量が変わります。必要な支援量と認定区分が合わない場合は、地域包括支援センターに相談のうえ区分変更の検討も視野に入れてください。
- Q2.総合事業で入浴介助を受けることはできますか?
- A
総合事業の訪問型サービスでは、入浴介助(身体介護)は限定的になりやすいのが実情です。現行相当サービスでは一部対応できる場合がありますが、自治体・事業者の運用によって大きく異なります。入浴介助が必要な場合は、介護保険の「訪問入浴」(要支援1・2でも利用可)との組み合わせも有効な選択肢です。
- Q3.要支援で身体介護が必要になったら、要介護に区分変更できますか?
- A
区分変更は「状態が変化した」と認められる場合に申請できます。転倒・骨折・入院後の体力低下など、明らかに状態が悪化した場合は申請しやすい状況です。主治医意見書や認定調査で実態が正確に伝わるよう、できない動作・危険な場面・介助の必要性を具体的に準備して臨むことが重要です。
- Q4.総合事業のサービスを受けるには要介護認定が必要ですか?
- A
必須ではありません。要支援1・2の認定がなくても、地域包括支援センターで「基本チェックリスト」に該当すると判定された場合(事業対象者)も総合事業を利用できます。要介護認定には1か月程度かかりますが、チェックリストは数日で結果が出るため、急いでいる場合は有効な入口です。
- Q5.同居家族がいると訪問型サービスは利用できませんか?
- A
同居家族がいても利用できる場合があります。家族が就労している・介護が困難な健康状態である・本人の安全確保上必要であるなど、合理的な理由がある場合はサービスとして認められることが多いです。実情を地域包括支援センターやケアマネジャーに正直に伝えることが、適切な支援量につながります。
どうしても身体介護が必要なときの3つの対処法
総合事業の範囲だけでは身体介護ニーズを満たしにくい場合があります。その際は状態に応じて以下の3つの方向で検討し、必要な支援を途切れさせないことが重要です。
①要介護認定の見直しを検討する
転倒や骨折・入院後の体力低下などでADLが落ち、移乗・排泄・入浴で継続的な介助が必要になってきた場合は、区分変更申請を検討します。認知症症状が進み見守りが常時必要な場合も同様です。見直しで大切なのは、主治医意見書や認定調査で状態が正確に伝わるように準備すること。できない場面だけでなく「できるが危険」「時間がかかる」「見守りが必要」といった実態を具体的に共有すると、必要性が反映されやすくなります。
②他サービスとの組み合わせを検討する
要支援でも利用できるサービスは訪問型だけではありません。入浴介助が必要なら介護保険の「訪問入浴」、医療的な観察が必要なら「訪問看護」、リハビリが必要なら「訪問リハビリ」との組み合わせが有効です。入浴は訪問入浴・医療的な観察は訪問看護・家事は総合事業・見守りは地域資源というように役割を分けると、現実的に組み立てやすくなります。
③自費サービス・配食・見守り等を活用する
介護保険外の自費サービスは、制度の回数上限や提供範囲の制約を補う手段になります。自費ヘルパー・家事代行・見守りサービス・緊急通報・配食・民間送迎などを必要な部分だけ足す発想が現実的です。契約前には提供範囲・対応できない行為・事故時の責任や保険加入の有無を確認しておくと安心です。
以下の関連記事も読まれています
まとめ
要支援は原則として介護保険給付の訪問介護を使えませんが、総合事業の訪問型サービスで生活支援や介護予防の支援を受けられます。身体介護がどこまで可能かは自治体・事業者・ケアプランで変わるため、まず地域包括支援センターに相談し、必要なら認定見直しや他サービスとの組み合わせも含めて最適な支援を検討しましょう。
ポイントは一つの制度に全部求めないことです。生活援助は総合事業・入浴は訪問入浴・医療的な観察は訪問看護というように役割を分けると、現実的に必要な支援を組み立てやすくなります。困りごとが軽いうちに相談するほど選べる手段が増えやすいため、早めの行動が重要です。

介護福祉士
無料資料請求やお問い合わせはこちらからお気軽にお問い合わせください。
介護の資格 湘南国際アカデミー
▶「介護資格に関する無料資料請求」
▶「各種ご相談やお問い合わせ」
▶「お電話でのお問い合わせ:0120-961-190」
(受付時間:9:00〜18:00/年中無休)
訪問介護のサービス提供責任者、デイサービス所長兼相談員を経て、現在はキャリアアドバイザーとして求職者の就労サポートと企業支援を担当。
採用担当経験を活かした面接対策にも定評がある。






