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介護保険優先でも補装具を検討できる|ケアマネ・相談員の対応

  • 介護事業所向け研修

介護保険の対象者から車椅子、歩行器、歩行補助つえの相談を受けたとき、「介護保険が優先だから補装具費は使えない」と一律に終わらせてはいけません。厚生労働省は2026年9月10日付の介護保険最新情報Vol.1542で、身体状況に合わせた個別対応が必要と医師や身体障害者更生相談所等が判断する場合、障害福祉の補装具費支給制度を利用できることを改めて示しました。

今回の通知は、新しい給付を設けたり、介護保険優先の原則を廃止したりする法改正ではありません。市区町村への調査で、過去の補装具利用歴を確認していない、本人から問い合わせがあるまで制度を説明しない、ケアマネジャー等が補装具を適切と考えても相談先が示されない、といった課題が見られたため、既存の取扱いと連携を再整理したものです。

この記事では、居宅介護支援事業所、福祉用具貸与・販売事業所、地域包括支援センターが、相談受付から本人への説明、障害福祉部門との連携、ケアプランとモニタリングまでを点検できる形にまとめます。個別の支給決定は市区町村が行うため、記事だけで適用可否を判断せず、本人の居住地の担当窓口と確認してください。

Vol.1542の要点を30秒で確認

厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1542」(2026年9月10日)を基に整理
論点通知で確認されたこと現場の対応
介護保険優先重なるサービスは原則として介護保険を優先優先を一律の補装具除外と扱わない
個別対応医師等が身体状況に合わせた個別対応を必要と判断した場合、補装具費を利用できる定型品で適合しない理由と専門的判断をつなぐ
利用歴過去の補装具利用を把握することが重要要介護認定前・転入前の利用も聞く
本人の選択両制度の要件を満たす場合、説明を受けて本人が希望を選べるようにする費用だけでなく機能、手続、修理等も説明
情報共有ケアプラン作成時に身体状況と希望を関係者で共有ケアマネと福祉用具専門相談員が自治体等へ接続

今回の通知で制度が変わったわけではない

介護保険と障害福祉サービスの適用関係は、2007年3月28日付の厚生労働省通知でも示されています。介護保険で同じ目的のサービスが使える場合は介護保険を優先しますが、その判断を一律に行うのではなく、本人が必要とする支援内容や利用意向を確認する必要があります。

車椅子、歩行器、歩行補助つえは、介護保険の福祉用具貸与と補装具費支給制度の双方に関係する品目です。既製品や通常の調整で本人の状態に適合するなら、介護保険による貸与が基本的な選択肢になります。一方、座位保持、変形、左右差、操作方法などに合わせた個別対応が必要と専門的に判断される場合は、補装具費支給制度の検討余地があります。

介護保険最新情報Vol.1542は、この取扱いを新設した通知ではありません。自治体の運用と介護現場の情報共有にばらつきがあることを受け、本人が適切な制度を知り、希望を伝えられるようにすることを改めて求めています。事業所内研修では「新制度が始まった」と説明せず、「既存ルールの確認と連携改善」と伝えるのが正確です。

介護保険の福祉用具と補装具費の違い

厚生労働省の2007年通知、Vol.1542、補装具費支給制度概要を基に一般的な違いを整理。個別の対象、基準額、利用者負担は自治体へ確認してください
比較点介護保険の福祉用具障害福祉の補装具費
目的要介護者等の日常生活上の便宜や機能訓練を支援失われた身体機能を補完・代替し、長期間継続して使用
主な実施主体市区町村、保険者市区町村
今回重なる主な品目車椅子、歩行器、歩行補助つえ車椅子、歩行器、歩行補助つえ
選定の視点ケアプラン、福祉用具サービス計画、状態・環境への適合身体状況に応じた個別対応、医師や更生相談所等の判断
利用形態貸与が中心で、対象種目・要介護度等の要件を確認購入・修理等の費用支給。品目や手続を確認
決定介護保険制度の要件に沿う申請を受け市区町村が支給決定

二つの制度は、同じ品目名でも目的と手続が同一ではありません。「車椅子」という名称だけで制度を決めず、本人がどの姿勢を保ち、どの場所で、誰の介助を受け、どれくらいの時間使うのかを確認します。介護保険の標準的な機種と調整で対応できるのか、オーダーメイド等の個別対応が必要なのかを、専門職と行政へつなげます。

「介護保険優先」を一律適用しない

2007年通知の「介護保険サービス優先の捉え方」は、介護保険サービスを一律に優先させるものではなく、本人が必要とする障害福祉サービスの内容や利用意向を聴き取ったうえで判断するよう示しています。介護保険の対象者になった日を境に、それまで使っていた補装具の必要性がなくなるわけではありません。

介護保険最新情報Vol.1542が紹介した調査課題には、介護保険の利用開始前に補装具を使っていたか確認していない自治体があることが含まれます。過去の利用歴は、既製品ではなく個別製作が必要だった理由を知る重要な手掛かりです。初回面談、更新、退院、転居、状態変化のタイミングで必ず確認しましょう。

利用歴があるだけで自動的に支給されるわけではありません

過去に補装具を使っていた事実だけで、現在も自動的に支給されるわけではありません。現在の身体状況、利用環境、制度要件、専門的判断に基づき、市区町村が決定します。ケアマネジャーと福祉用具専門相談員の役割は、適用を約束することではなく、必要な情報をそろえ、本人が窓口へ相談できるよう支援することです。

補装具の検討につなげたいサイン

  • 貸与中の車椅子で姿勢が大きく崩れ、通常の調整を繰り返しても改善しない
  • 身体の変形や左右差があり、身体寸法に合わせた支持が必要と考えられる
  • 過去に補装具費で製作した車椅子等を使っていたが、要介護認定後の利用状況が確認されていない
  • 退院時に病院のリハビリ専門職から個別対応の必要性が示された
  • 本人・家族が補装具の利用を希望しているが、どの窓口へ相談するか分からない
  • 福祉用具専門相談員が定型品では安全性・操作性・座位保持に課題が残ると判断した

これらは補装具費の支給決定を示すチェックリストではありません。相談へつなぐサインです。医師、理学療法士、作業療法士、身体障害者更生相談所等の評価が必要になることがあり、自治体によって申請手順や必要書類が異なります。

相談受付から支給判断までの7ステップ

  1. 本人の困りごとと希望を聞く:「何ができないか」だけでなく、どこへ行きたいか、誰と過ごしたいか、どの動作を自分で行いたいかを確認します。
  2. 過去の利用歴を確認する:要介護認定前、転入前、入院前に補装具を使っていたか、支給決定通知や見積書、製作事業者の記録があるかを聞きます。
  3. 現在の身体状況と環境を整理する:姿勢、移乗、操作、介助量、住宅内外の幅や段差、車への積載、利用時間を記録します。
  4. 介護保険の福祉用具で適合を検討する:複数機種の試用、調整、福祉用具専門相談員の評価を行い、対応できる点と残る課題を分けます。
  5. 個別対応が必要なら専門職・行政へつなぐ:主治医、リハビリ専門職、自治体の障害福祉担当、身体障害者更生相談所等へ相談します。
  6. 両制度の選択肢を本人へ説明する:利用形態、手続、自己負担、修理、納期、試用、変更時の対応を分かる言葉で説明します。
  7. 決定後もモニタリングする:機器が納品・貸与された後の姿勢、安全性、本人の満足、介助負担を確認し、必要なら再調整します。

重要なのは、介護保険の用具を一度試してからでなければ補装具へ相談できない、と独自の順番を固定しないことです。本人の状態や退院期限によっては、介護保険の検討と障害福祉窓口への相談を並行して進める必要があります。自治体の正式な手順を確認してください。

ケアマネ・福祉用具専門相談員・自治体の役割

介護保険最新情報Vol.1542が求める情報共有を、事業所内の役割分担へ落とし込んだ例。最終的な権限と手順は各制度・自治体の定めに従います
関係者主な役割共有したい情報
本人・家族生活上の希望、困りごと、過去の利用を伝える使いたい場面、時間、操作、介助、過去書類
ケアマネジャー生活全体の課題を整理し、関係者をつなぐケアプラン、医療情報、利用意向、制度説明の記録
福祉用具専門相談員用具の選定、試用、適合、利用状況を確認試した機種・調整、適合した点、残る課題
医師・リハビリ専門職等身体状況と個別対応の必要性を専門的に評価疾患、機能、姿勢、予後、必要な支持・操作
市区町村制度案内、申請受付、要件確認、支給決定必要書類、判定手続、連絡先、決定内容

ケアマネジャーだけが制度を調べ、福祉用具専門相談員だけが適合を判断する分業では、本人の希望と専門情報が分断されます。サービス担当者会議や退院前カンファレンスでは、「現在の用具でできていること」「残る課題」「本人が望む生活」「行政へ確認する事項」を同じ様式で共有すると、相談が具体的になります。

本人への説明は「どちらが得か」だけにしない

介護保険最新情報Vol.1542は、両制度の要件を満たす場合、本人が両方を利用できる可能性を知り、説明を受けたうえで希望する制度を選べるようにすることを示しています。説明では自己負担額だけでなく、貸与か購入か、個別製作の範囲、納品までの流れ、修理、状態変化時の調整、返却や再申請の扱いも確認します。

「介護保険しか使えません」「補装具なら無料です」といった短い断定は避けます。補装具費支給制度の利用者負担は原則1割で所得に応じた月額上限があり、一定所得以上は対象外となる条件があります。また、基準額や自治体の判断、品目、申請前購入の扱いなど確認事項があります。具体的な費用は市区町村の決定前に約束しません。

本人が情報を理解しやすいよう、制度名を並べるだけでなく、写真、実機、比較表を使います。意思決定に時間が必要な人には、家族だけで決めず、本人が選べる形で繰り返し説明します。通訳や意思疎通支援が必要な場合は、その方法も先に整えます。

説明した事実だけでなく、本人が何を重視し、どの点に迷い、誰と相談して決めたいと話したかを記録します。選択肢を示した直後に結論を求めず、試用後の感想を聞く機会を設けます。意思表示が言葉だけでは難しい場合も、視線、表情、操作の様子などを関係者で共有し、本人の意思を推定する過程を丁寧に残します。

ケアプランと記録で残したい8項目

  • 本人が実現したい生活と用具を使う具体的な場面
  • 現在の身体状況、姿勢、移乗、操作、介助量
  • 住宅・施設・屋外の環境条件
  • 要介護認定前を含む補装具・福祉用具の利用歴
  • 試用した介護保険福祉用具、調整内容、適合と不適合の理由
  • 医師、リハビリ専門職、福祉用具専門相談員の評価
  • 本人へ説明した制度、選択肢、本人の意向
  • 自治体の相談窓口、相談日、回答、次の担当者と期限

記録の目的は、補装具費の支給を通すために理由を整えることではありません。本人の状態と選択の過程を関係者が共有し、安全な用具利用を継続することです。推測と事実を分け、「合わない」ではなく、何分後にどの姿勢崩れが起きたか、どの操作が難しかったかを具体的に残します。

退院や施設退所の期限が迫るケースでは、行政の判定や製作に必要な時間を見込み、代替用具と安全な介助方法も検討します。補装具の完成を待つ間に生活が止まらないよう、病院、在宅チーム、福祉用具事業所、市区町村が、暫定対応の責任範囲と見直し日を共有してください。

事業所内研修で見直したいこと

通知をメールで回覧するだけでは、初回相談の聞き方は変わりません。30分の事業所内研修でも、①介護保険優先の原則、②個別対応の例外、③過去の利用歴、④相談窓口、⑤本人への説明、⑥記録様式の六点を事例で確認します。ケアマネジャーと福祉用具専門相談員が同じ事例を検討すると、用具の機能と生活目標を結びつけやすくなります。

福祉用具専門相談員は、指定講習で福祉用具の選定、適合、利用支援を学びます。資格の役割や取得方法は福祉用具専門相談員とホームヘルパー2級の違い、講習日程は福祉用具専門相談員指定講習会で確認できます。通知の理解に加え、身体状況と生活環境を観察し、根拠を説明する基礎力が重要です。

江島一孝
介護福祉士/福祉用具専門相談員

【監修者コメント】
相談員として現場でよくお受けするのが、「介護保険優先」と言われて補装具の相談自体を諦めてしまっていたというお話です。過去に個別製作の補装具を使っていた経緯があるかどうかを最初に伺うようにするだけで、選択肢の見え方が大きく変わります。制度の説明は、まず本人の困りごとを聞くところから始めてみてください。

FAQ|介護保険と補装具費の適用関係

Q1.
要介護認定を受けたら補装具費は使えませんか?
A

一律に使えないわけではありません。介護保険と重なる品目は介護保険優先が原則ですが、身体状況に合わせた個別対応が必要と医師や身体障害者更生相談所等が判断する場合、補装具費支給制度を利用できることがあります。市区町村へ相談してください。

Q2.
対象になり得る福祉用具は何ですか?
A

介護保険最新情報Vol.1542と2007年通知は、介護保険の福祉用具貸与と補装具費の対象が重なるものとして、車椅子、歩行器、歩行補助つえを挙げています。個別の品目、仕様、支給要件は市区町村へ確認します。

Q3.
ケアマネジャーが補装具の適用を決められますか?
A

決められません。ケアマネジャーは本人の生活課題と希望を把握し、福祉用具専門相談員、医師、リハビリ専門職、自治体等をつなぎます。補装具費は申請後、市区町村が制度要件と専門的判断を踏まえて支給決定します。

Q4.
過去の補装具利用歴を確認する理由は何ですか?
A

以前に個別製作の補装具が必要だった理由は、現在の定型的な福祉用具で対応できるかを考える手掛かりになります。Vol.1542は、介護保険利用前の補装具利用を把握していないという調査上の課題を示しています。ただし、利用歴だけで現在の支給が決まるわけではありません。

Q5.
補装具費の自己負担は必ず1割ですか?
A

制度概要では利用者負担は原則1割ですが、所得に応じた月額上限があり、一定所得以上は対象外となる条件があります。また、基準額や個別の決定も関係します。本人の負担額を事業所が断定せず、市区町村の窓口で確認してください。

まとめ|制度名ではなく本人の状態と希望から始める

2026年9月10日付の介護保険最新情報Vol.1542は、介護保険優先の原則を維持しながら、個別対応が必要な車椅子、歩行器、歩行補助つえでは補装具費支給制度を利用できる場合があることを再確認しました。新しい制度ではなく、相談、説明、情報共有を改善するための通知です。

ケアマネジャーと福祉用具専門相談員は、要介護認定前を含む利用歴、現在の身体状況、試用・調整の結果、本人の希望を整理し、医師、リハビリ専門職、市区町村へつなぎましょう。どちらの制度が適用されるかを先に断定せず、本人が選択肢を知って意思を伝えられる支援が重要です。

参照元

この記事を書いた人
介護老人福祉施設に10年在籍し、研修受け入れ担当として年間100名以上の研修生を指導。
湘南国際アカデミーでは初任者研修・実務者研修・介護福祉士受験対策の講師を務めるほか、受験対策テキストの執筆も担当。
介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ支援、事業所向けスキルアップ研修のプロデュースなど、人材確保・育成・定着に向けた幅広い活動を展開している。
江島 一孝
藤沢校・横須賀校・海老名校・相模大野校・横浜戸塚校・横浜馬車道関内校・小田原校・大和校・横浜二俣川校
【所持資格】
介護福祉士・介護福祉士実習指導者・介護支援専門員・福祉用具専門相談員・介護技能実習評価試験評価者
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