介護現場で働きながら国家資格である介護福祉士を目指す際、非常に重要となるのが実務経験ルートです。現場経験を活かしつつ、受験資格を得るために満たさなければならない要件や必要書類、また併せて修了を求められる研修について理解することが大切です。制度や要件をしっかり把握しておくことで、無理なく計画的に資格取得を目指すことができるでしょう。
ここでは、実務経験ルートで介護福祉士を受験するための条件から、実務経験証明書の手続き、試験科目や難易度、さらに合格後の手続きまでを幅広く解説します。働きながら学ぶ場合にも役立つポイントを押さえ、スケジュール管理や学習計画を円滑に進めるために必要な情報をまとめました。実際の従事日数の計算や職場との連携、受験対策にまつわる疑問をひとつひとつクリアにして、確実に合格を目指しましょう。
介護福祉士国家試験の実務経験ルートとは
まずは介護福祉士国家試験の受験資格となる実務経験ルートの概要と、求められる条件について解説します。
実務経験3年(1,095日)・従事日数540日の条件を解説
介護福祉士国家試験の実務経験ルートでは、従業期間が3年以上(1,095日以上)であること、かつ実際に介護業務を行った従事日数が540日以上であることが求められます。ここで重要なのは、雇用形態や勤務時間にかかわらず、1日に働いたら1日分としてカウントされる点です。たとえ短時間勤務でも、正規雇用でもアルバイトやパートでも、介護業務を行った日はすべて合計に含まれます。ただし、育休や病欠など業務に従事していない期間は従事日数に含まれないため、実際に働いた日数を正確に把握しておきましょう。

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対象となる施設・事業所と職種
実務経験の対象となるのは、介護保険法や障害者総合支援法などに基づいて介護業務を行う施設や事業所です。具体的には特別養護老人ホームや介護老人保健施設、デイサービス、グループホームなどが該当します。また、高齢者だけでなく障害者や児童を対象とする事業所も含まれるため、介護業務が主となる現場であれば幅広く実務経験を積むことが可能です。勤務形態は多様ですが、主たる業務として利用者の生活支援や身体介護を行うことが条件となります。
実務経験の対象外となる職種に注意
医師や看護師のように、医療行為が主となる職種は実務経験の対象外となります。また、事務員や清掃員など、介護業務をメインとしていない職種も同様です。あくまで利用者の日常生活の支援や身体介護に直接携わる業務でなければカウントできないため、働き始める段階で自分が従事する職種が要件を満たしているかを確認しておきましょう。勘違いや思い込みで日数計算をしてしまうと、後から受験資格を満たさない可能性もあるため、注意が必要です。
受験資格の見込み制度とは?
実務経験ルートでは、受験年度の3月31日までに必要な従業期間と従事日数を満たす見込みがあれば、現在の時点で要件を完全に達成していなくても出願することができます。これは受験資格の見込み制度と呼ばれ、現場で経験を積みながらスケジュール通りに働いていれば介護福祉士国家試験を受けられる仕組みです。例えば年度の途中で3年目を迎える人も、計画的に働くことで年度末までに要件を満たせば十分に間に合います。実務経験の見込みを証明する場合にも、あらかじめ雇用先の協力を得て書類を整えておくことが大切です。
実務経験証明書の取得と注意点
受験申込時に必要となる実務経験証明書の記載事項や手続き、円滑に発行するためのポイントを確認します。
証明書に必要な記載事項と手続き
実務経験証明書には、勤務開始日や終了日、勤務形態、従事した回数や通算従事日数などが正確に記載される必要があります。加えて、主たる業務が身体介護や生活援助などであったことを明記してもらうことがポイントです。作成するのは通常、施設長や事業所の責任者ですが、忙しい職場では早めに依頼しないと発行まで時間を要する場合があります。必要事項をしっかり把握し、不備がないようにチェックしたうえで提出することが大切です。
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職場との連携でスムーズに発行しよう
実務経験証明書の発行には、上司や人事担当者など複数の関係者の協力が欠かせません。あらかじめ介護福祉士試験の申込スケジュールを共有し、書類を作成してもらう期日や内容について周知しておくとスムーズに進みやすくなります。過去に別の施設で働いていた場合は転職先と前職の連絡をつなげる必要もあるため、早め早めの行動が望ましいでしょう。万が一書類に誤りがあった場合にも十分に修正時間を確保できるよう、余裕を持って発行手続きを行うことが大切です。
受験要件で必須となる介護福祉士実務者研修とは
実務経験ルートで介護福祉士国家試験を受験するには、同時に介護福祉士実務者研修の修了が必要です。その詳細を見ていきましょう。
実務者研修が必須となる理由
介護福祉士が行う業務の中には、医行為に近い高度なケアが含まれる場合があります。喀痰吸引や経管栄養などの行為に対応するには、実務者研修で学ぶ知識と実践力が求められます。介護福祉士国家試験の筆記問題にも研修で学ぶ内容が反映されることが多く、実務者研修で基礎を固めることは試験対策としても有効です。現場での実務経験と研修による学習を組み合わせることで、より安心・安全なケアを提供できるようになります。
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実務者研修の学習スタイルと費用
実務者研修の受講方法は、通信制と通学制の両方があります。通信制なら働きながら自分のペースで学習しやすく、通学制なら講師や仲間と対面で学べるメリットがあります。費用は数万円から十数万円程度と幅があるため、金銭面での負担を考慮しつつ、学習効率や通学のしやすさを基準にスクールを選びましょう。経済的な援助制度を利用できる場合もあるので、勤務先や各種支援制度を確認することがおすすめです。
介護福祉士を取得するメリット
介護福祉士の資格取得によって得られるキャリア面や業界内評価などのメリットをまとめます。
介護福祉士は専門性の高い国家資格であり、職場内外での評価を大きく高める強みとなります。実務スキルや知識を証明できることで、給与アップや責任あるポジションへの登用が期待できます。さらに、多様な介護分野や関連職種へのキャリアパスも広がり、長期的な職業安定にもつながるでしょう。利用者やその家族との信頼関係を築きやすくなる点も含め、取得メリットはさまざまです。
給与アップ・キャリアアップにつながる理由
多くの事業所では、介護福祉士の資格を保有している従業員に対して資格手当を支給する制度を設けています。資格取得によって基本給が上がるケースや、リーダー職や管理職への登用も見込めるなど、経済的・社会的なメリットが大きいことが特徴です。特に人材不足が深刻な介護業界においては、有資格者の需要が高まっており、就職や転職の際にも有利に働きます。長期的な視点でスキルを磨きながら、着実にキャリアを築いていける資格といえるでしょう。
専門性が高まることで業界内での評価が上がる
介護福祉士の資格を取得すると、利用者やその家族はもちろん、医療・福祉の他職種からも専門性を認められやすくなります。法的にも位置づけが明確であるため、チーム内での役割分担がしやすくなる点もメリットです。自分の知識と経験を活かし、現場で積極的にリーダーシップを発揮することで、利用者の満足度を高められるだけでなく、組織全体のサービス向上にも貢献できます。専門家としての信用が高まれば、業界内でのさらなるステップアップも期待できるでしょう。
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介護福祉士国家試験の概要
試験日程や申し込み方法など、実際に介護福祉士国家試験を受ける際に必要な情報を解説します。
試験日程と申し込み方法
介護福祉士国家試験は例年1月下旬の日曜日に筆記試験が行われ、合格発表は3月下旬ごろに実施されるのが一般的です。願書は都道府県や試験センターの窓口、またはインターネットから取り寄せて入手できます。申し込みは郵送が原則ですが、一部ではオンライン手続きに対応している場合もあります。締め切り後に提出した書類は受理されないため、余裕をもって必要書類を準備することが大切です。
介護福祉士国家試験に関する最新情報は以下の表をご確認ください。
※引用元:公益財団法人社会福祉・振興試験センターHP
「介護福祉士国家試験・受験申し込み手続き」
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験日/合格発表日 | 試験日:令和8年1月25日(日)/合格発表日:3月16日(月)14時 |
| 受験申し込み受付期間 | 令和7年8月6日(水)〜9月5日(金) |
| 申し込み方法 | 【過去に試験の受験申し込みをしたことがある方】 インターネット申し込み可 【第38回(今回)試験が初めての受験申し込みの方】 郵送で申し込み(インターネット不可) |
| 障害等のある方の配慮申請 | 受付期間内(8/6〜9/5)に別途申請が必要 『受験の手引』とあわせて「配慮案内書」を請求 インターネット申し込み時:手続き途中で申請可能(変更・初回申請の場合は書類をダウンロードし郵送) 問合せ先:試験センター配慮係(TEL:03-3486-7521、FAX:03-3486-7527) |
| 受験手数料(参考) | 前年度(第37回):18,380円 |
| 手数料の支払い方法 | 【郵送申し込み】 『受験の手引』に同封の払込用紙で、コンビニ・ゆうちょ銀行で支払い(※金融機関不可) 【インターネット申し込み】 クレジットカードまたはコンビニ払い(払込用紙は使用不可) ※支払いは受付期間内に限る |
介護福祉士のパート合格制度の試験科目と出題傾向
第38回介護福祉士国家試験から導入されるパート合格制度での試験科目は以下の表にあるように、人間の尊厳と自立、コミュニケーション技術、生活支援技術、介護過程などの幅広い領域が含まれます。
日常的な介護の実践力が問われるだけでなく、倫理観やチームアプローチに関する理解も求められるのが特徴です。実務者研修で学んだ知識と、現場経験で培った具体的なケアの手法を組み合わせることで、試験対策が立てやすくなります。過去問や模擬試験を活用して、出題傾向をつかむことが合格への近道です。
※以下の科目名をクリックすると対談形式で、各科目のポイント解説をご覧いただけますので、是非参考にしてください。
参照元;社会福祉振興・試験センターHP「パート合格(合格パートの受験免除)がスタートします!」
| 午前/午後 | パート区分 | 試験科目 | 出題数 |
|---|---|---|---|
| 午前試験 | Aパート 全60問 | 人間の尊厳と自立 | 2問 |
| 介護の基本 | 10問 | ||
| 社会の理解 | 12問 | ||
| 人間関係とコミュニケーション | 4問 | ||
| コミュニケーション技術 | 6問 | ||
| 生活支援技術 | 26問 | ||
| 午後試験 | Bパート 全45問 | こころとからだのしくみ | 12問 |
| 発達と老化の理解 | 8問 | ||
| 認知症の理解 | 10問 | ||
| 障害の理解 | 10問 | ||
| 医療的ケア | 5問 | ||
| 午後試験 | Cパート 全20問 | 介護過程 | 8問 |
| 総合問題 | 12問 |
試験の難易度と合格率
介護福祉士国家試験の合格率は年によって変動しますが、おおむね70~80%前後と比較的高い水準をキープしています。実務者研修で講義を受けながら学んだ内容をしっかり復習し、過去問を繰り返し解くことが効果的な試験対策です。実務経験を活かし、テキストの知識と現場感覚を融合することで、苦手分野を克服しやすくなります。丁寧に学び直しを行えば、未経験の領域や苦手科目もスムーズに理解できるでしょう。
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合格後の登録申請手続き
介護福祉士国家試験に合格した後は、介護福祉士として正式に登録するための手続きを行う必要があります。登録は、署名・押印をした申請書とともに登録免許税を納付することで完了します。登録を行わないと、介護福祉士の名称を使用して業務に従事できないため、必ず忘れずに申請しましょう。登録証が手元に届けば、あなたは正式な介護福祉士として名乗ることができ、キャリアにも大きな可能性が広がります。
FAQ|介護福祉士の実務経験ルートに関するよくある質問
- Q1.働きながら介護福祉士を目指すポイントは?
- A
まずは勤務先や家族の理解を得て、学習時間を確保できる環境を整えることが大切です。仕事の合間にテキストや問題集を活用し、スキマ時間も効率よく勉強しましょう。実務者研修や通信講座を取り入れることで、カリキュラムに沿って学べるため先延ばしを防ぎやすくなります。短期間よりも地道に長期計画を立て、無理なく学習を続ける工夫がポイントです。
- Q2.介護福祉士に必要な実務経験の計算方法で気をつけるポイントは?
- A
アルバイトやパート勤務であっても、1日介護業務に就けば実務日数1日として計算できます。ただし、長期休暇や育児休業を取得した期間は実務経験に含まれません。複数の施設で働いていた場合は、各施設分を合算して日数を計算する必要があります。不備があると受験資格を満たさなくなるリスクがあるため、就業記録を正確につけておきましょう。
- Q3.アルバイト・パート勤務でも介護福祉士の受験資格は得られる?
- A
雇用形態にかかわらず、介護業務を行っていれば実務経験としてカウントが可能です。日数要件さえ満たせばアルバイトやパート勤務でも受験資格を得ることができます。実務経験が足りない場合は、働く日数を増やす、あるいは複数の施設でバランスよく勤務をするなどの工夫を検討しましょう。自分のライフスタイルに合わせて柔軟に働きながら、確実に日数を積み重ねることが重要です。
- Q4.介護福祉士の学習計画の立て方と進め方は?
- A
試験日から逆算したスケジュールを作り、各科目をコツコツ学習していく方法がおすすめです。一度に大量の勉強を詰め込むのではなく、短い時間を活用して反復することで記憶に定着しやすくなります。仕事や家庭の事情で変動がある場合は、定期的に計画を見直す柔軟性も大切です。過去問や模擬試験に取り組み、苦手分野を早めに把握しておくことで、合格可能性を高められるでしょう。
- Q5.
- A
独学では理解しにくい分野や最新の法改正情報などを、講座やスクールでは体系的に学べます。模擬試験や学習サポート体制が充実しているため、学習ペースを維持しやすく、モチベーションの継続にもつながります。特に難易度が高いと思われる科目や新制度に関するトピックは、プロの講師からのアドバイスを受けることで効率よく理解できるでしょう。職場との両立を考える方には、通信・通学の組み合わせなど柔軟な受講スタイルを選択できる点も魅力です。
まとめ・総括
介護福祉士を目指すための実務経験ルートと試験対策のポイントを振り返り、今後の行動計画を検討しましょう。
介護福祉士の実務経験ルートでは、3年という従業期間と540日以上の介護業務従事が必要となり、さらに実務者研修の修了が必須となります。書類手続きや勤務実績の証明など、受験に向けた準備はやや複雑ですが、着実に計画を進めることで十分にクリアできるでしょう。働きながら資格取得を目指す際は、職場との連携やスケジュール管理が重要な鍵となります。実務経験を活かした学習を行い、介護福祉士国家試験に合格して介護福祉士としてのキャリアアップを目指してください。
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その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。






