介護福祉士の筆記試験は、介護の専門職として欠かせない幅広い知識を問う国家資格の試験です。高齢者や障害を持つ方々の生活を支えるために必要な基礎的理解から、医療的ケアに関する知識まで網羅されており、毎年実施されます。受験ルートも複数あり、多様な背景を持つ受験者が挑戦するため、多岐にわたる内容を学習する必要があります。
本記事では、筆記試験の概要だけでなく、科目ごとの特徴や出題範囲、合格基準のポイントに至るまで詳しく解説します。さらに過去の試験傾向や学習計画の立て方といった具体的な対策方法を提示し、実際に合格を勝ち取るためのステップを分かりやすく整理します。独学や講座受講など、学習スタイルに合わせた方法を選び、効率的に知識を習得できる一助になれましたら幸いです。
介護福祉士の筆記試験とは?
まずは介護福祉士の筆記試験がどのような目的で行われ、何を問われる試験なのかを理解しましょう。
介護福祉士の筆記試験は、国家資格として毎年行われる重要な試験です。試験では、介護の専門性や倫理観、人間の尊厳に対する理解など、介護現場で絶対に欠かせない基本知識が問われます。幅広い知識を確認し、利用者に的確で安全な支援を行えるかどうかを測る仕組みとなっているため、その受験範囲は多岐にわたります。
筆記試験では、大きく分けて13科目をカバーし、人間の尊厳と自立、社会の理解、こころとからだのしくみ、介護の基本、医療的ケアなどの内容が盛り込まれています。単に知識を暗記するだけでなく、実際の事例に基づいた思考力も問われます。介護福祉士として活躍する上での土台となる内容ですので、試験を通じて標準化された知識を確認できるチャンスとも言えます。
この資格に合格すると、介護現場でのキャリアアップにつながり、利用者やその家族からの信頼度も向上します。特に近年は多様な介護ニーズが存在し、専門的な知識や技術を備えた人材が強く求められている状況です。筆記試験における学習を通じ、プロとしての責任感と確かなスキルを身につけることが大切です。
介護福祉士筆記試験の内容と出題範囲
介護福祉士の筆記試験では、複数の領域に分けられた幅広い知識が問われます。各領域の概要を確認してみましょう。
領域:人間と社会
この領域では、社会保障制度や介護保険制度、人権や尊厳など、社会的・法的な背景に関する基礎知識が問われます。実際の介護現場では、利用者の権利を守るための法制度や差別のない支援が求められるため、この領域の理解は欠かせません。多くの受験者が苦手意識を持つ分野でもありますが、介護福祉士試験対策としては条文や制度の概要を押さえながら、リアルな事例にも目を向けるのがおすすめです。
高齢社会における課題や、障害者に対する支援の在り方など、社会の動向と密接に関連するトピックも出題される傾向にあります。身近なニュースや行政の動きなどにアンテナを張りながら、学習内容を実践に結びつけることで定着が深まります。過去問や参考書を使い、社会的課題や国の施策に関する知識を整理しながら対策を進めましょう。
領域:こころとからだのしくみ
身体の器官や心理面に関する基礎的な知識が問われる領域です。高齢者や障害者の身体特性を理解し、日常生活を円滑に支援するためには、人間の構造や心の働きを体系的に把握する必要があります。特に病気の症状や身体の老化による変化などを理解しておくと、利用者への声かけや支援方法を的確に選ぶ助けとなります。
この分野では、生理学的な用語や医学用語も多く出題されるため、まずは専門用語を正確に把握することが重要です。理解したつもりでも、具体的な症状や関わり方が問われる総合問題で混乱するケースもあります。日々の学習でイラストや図表を活用し、よりイメージしやすい形で覚えるように工夫すると理解が深まります。
領域:医療的ケア
医療的ケアの領域では、喀痰吸引や経管栄養など、介護職が実際に行う可能性のある医療的行為に関する知識が問われます。最近は介護福祉士が医療的ケアを担う場面が増えており、試験でも重要な得点源となる分野です。手技や対応の基礎を理解するだけでなく、感染症対策や緊急時の処置など、安全管理に関する知識もチェックされます。
特に緊急対応では、協力医や看護師の指示を仰ぐ判断力が求められます。また、介護福祉士への医療的ケアの解禁範囲も年々変化しているため、最新情報の確認も重要です。テキストや講座教材、厚生労働省のガイドラインを参考に、日常的にアップデートをしながら理解を深めるようにしましょう。
領域:介護
この領域では、介護過程、生活支援技術、コミュニケーション技術など、直接的な介護技術に関する知識が中心となります。身体介助の方法や安全な移乗技術、口腔ケアなど、多岐にわたる実践的な内容を押さえる必要があります。日常生活の場面をイメージしながら学習すると、自然に記憶に定着しやすくなるのが特徴です。
また、利用者一人ひとりの状況や状況変化に応じて適切な介助を行うためのアセスメントも重要です。単に動作を覚えるだけではなく、利用者の立場や心理的状態にも配慮した支援の考え方が求められます。試験問題では、具体的な事例を挙げて介護方法を問うケースが多いため、実際の介護場面を想定しながら学びを深めていきましょう。
総合問題
総合問題は、複数の領域を横断する形式で出題されます。事例問題が多く、利用者の背景情報や社会的状況を踏まえたうえで、どのようなケアを提供すべきかを問われます。暗記だけでは対応が難しく、臨機応変な対応力や総合的な判断力が合格のカギとなります。
過去問を活用すると、どのような組み合わせで領域が結びつくかイメージがしやすくなります。時間があるときには、一度に複数の領域を関連づけて学習する勉強法を取り入れるのも効果的です。現場のリアルな状況を想定しながら、柔軟に知識をまとめあげる訓練を重ねると、総合問題への対応力が高まります。
介護福祉士筆記試験の合格基準と合格率の推移
| 介護福祉士国家試験 | 合格点 | 合格率 |
|---|---|---|
| 第37回(2025年1月試験) | 70点(総得点の60%) | 78.3% |
| 第36回(2024年1月試験) | 67点(総得点の67%) | 82.8% |
| 第35回(2023年1月試験) | 75点(総得点の60%) | 84.3% |
| 第34回(2022年1月試験) | 78点(総得点の62.4%) | 72.3% |
| 第33回(2021年1月試験) | 75点(総得点の60%) | 71.0% |
合格基準や合格率を知ることで、試験に向けた心構えをより具体化させることができます。
介護福祉士の筆記試験では、総得点の60%前後を合格基準とするケースが多いとされていますが、実際には年度によって補正が行われることもあります。全体の難易度が高ければ基準点が下がることもあれば、難易度が低ければ基準点が上がることもあるため、一定の幅を想定しながら対策することが重要です。過去の合格率は上記の表のように70〜80%程度で推移することが多く、試験対策をしっかり行えば十分に合格を狙いやすい試験といえます。
ただし、ここ数年で出題範囲がより実務を反映したものとなっているため、科目ごとの学習バランスが偏らないように注意する必要があります。苦手科目を後回しにせず、過去問や講座を活用して早めに手をつけることで合格可能性が高まります。
科目別の出題数と13科目それぞれの合格要件
介護福祉士筆記試験では、以下の表にあるように13科目から問題が出題されることは分かっているわけですから、各科目からどの程度の割合で出題されるかを事前に把握しておくだけでも学習が効率化します。
例えば、こころとからだのしくみや、生活支援技術など、比較的出題数が多い領域を優先して学習する戦略を立てることも有効です。
ただし、試験は足切り基準もあるため、一つの科目だけに偏りすぎるのは危険です。また、全科目群で1点以上の得点が必要で、他の科目が満点でも1科目だけでも0点の科目があると不合格になるので注意が必要です。
※以下の表の科目名をクリックすると対談形式で、各科目のポイント解説をご覧いただけますので、是非参考にしてください。
参照元;社会福祉振興・試験センターHP「パート合格(合格パートの受験免除)がスタートします!」
| 午前/午後 | パート区分 | 試験科目 | 出題数 |
|---|---|---|---|
| 午前試験 | Aパート 全60問 | 人間の尊厳と自立 | 2問 |
| 介護の基本 | 10問 | ||
| 社会の理解 | 12問 | ||
| 人間関係とコミュニケーション | 4問 | ||
| コミュニケーション技術 | 6問 | ||
| 生活支援技術 | 26問 | ||
| 午後試験 | Bパート 全45問 | こころとからだのしくみ | 12問 |
| 発達と老化の理解 | 8問 | ||
| 認知症の理解 | 10問 | ||
| 障害の理解 | 10問 | ||
| 医療的ケア | 5問 | ||
| 午後試験 | Cパート 全20問 | 介護過程 | 8問 |
| 総合問題 | 12問 |
新たに導入される介護福祉士のパート合格制度とは?
介護福祉士国家試験のパート合格制度とは、従来のように一度で全ての科目を合格できなくても、次年度以降は不合格のパートだけを再受験できる制度です。以下の表の通り13科目を午前試験(Aパート)と午後試験(B・Cパート)の3パートに分けて実施し、パートごとに合否を判定する仕組みが特徴です。
合格パートは2年間有効とされ、次年度以降は不合格パートだけを再受験できます。外国人受験者や介護職で働きながら学ぶ人にとっては、大きな追い風になると期待されています。
引用元;社会福祉振興・試験センターHP「パート合格(合格パートの受験免除)がスタートします!」
| 第38回介護福祉士国家試験日 令和1月25日(日曜日) | ||||
|---|---|---|---|---|
| 試験時間 | パート区分 | 試験科目 | 領域 | |
| 午前 | 10時00分~11時45分 〇弱視等受験者(1.3倍) 10時00分~12時20分 〇点字等受験者(1.5倍) 10時00分~12時40分 〇EPA受験者(1.5倍) 10時00分~12時40分 〇EPA候補者以外の外国人の 方等で希望した受験者(1.5倍) 10時00分~12時40分 |
A | 人間の尊厳と自立 | 人間と社会 |
| 介護の基本 | 介護 | |||
| 社会の理解 | 人間と社会 | |||
| 人間関係とコミュニケーション | 人間と社会 | |||
| コミュニケーション技術 | 介護 | |||
| 生活支援技術 | 介護 | |||
| 午後 | 13時40分~15時35分 〇弱視等受験者(1.3倍) 13時40分~16時15分 〇点字等受験者(1.5倍) 13時40分~16時35分 〇EPA受験者(1.5倍) 13時40分~16時35分 〇EPA候補者以外の外国人の 方等で希望した受験者(1.5倍) 13時40分~16時35分 |
B | こころとからだのしくみ | こころとからだのしくみ |
| 発達と老化の理解 | こころとからだのしくみ | |||
| 認知症の理解 | こころとからだのしくみ | |||
| 障害の理解 | こころとからだのしくみ | |||
| 医療的ケア | 医療的ケア | |||
| C | 介護過程 | 介護 | ||
| 総合問題 | 全領域 | |||
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介護福祉士筆記試験の対策と学習計画
ここでは介護福祉士筆記試験の合格に必要な学習計画や効果的な試験対策の立て方について解説します。
模擬試験・過去問演習の重要性
模擬試験や過去問演習は実際の出題傾向や時間配分をほぼそのまま体験できるため、学習効果が高いと評価されています。本番同様に試験時間を計って取り組むことで、自分がどの科目に時間を使いすぎているかなどの弱点を客観的に把握できます。
また、問題演習の結果を分析し、何が原因で正答を外したのかを振り返ることが実力アップにつながります。過去問を繰り返し解き、正解パターンだけでなく誤答選択肢の根拠や背景を理解する作業を続けていくと、知識がしっかりと定着していきます。
講座・研修を活用するメリット
独学に不安がある場合や、効率よくポイントを押さえたい場合には、介護福祉士試験対策講座や通信講座を活用する方法もあります。専門講師や現場経験豊富な講師から直接指導を受けられるため、独学では見落としがちなポイントを丁寧に補完してもらえます。
また、講座や研修では最新の制度改正や法令の動向など、テキストだけでは得づらい情報をタイムリーに知ることが可能です。スクールによっては模擬試験や個別相談が充実しており、学習のペースメーカーにもなるため、忙しい社会人でもメリハリをつけて勉強できるメリットがあります。
短期集中型 vs. 長期計画型の学習法
試験直前に集中的に勉強する短期集中型の学習法は、一時的に知識を詰め込める利点がありますが、並行して仕事や育児を行っている人にとってはハードルが高い場合もあります。学習負荷が急激に増えるため、体調を崩したりモチベーションを維持しにくくなるリスクも考えられます。
一方、長期計画型の学習法では、早期から少しずつ知識を積み重ねることで安定した理解を得られます。日々コツコツと時間を確保し、細切れ時間でも問題演習を繰り返すことで知識が定着しやすくなります。自分の生活スタイルや記憶定着のしやすさを踏まえ、適切な学習法を選ぶことが試験合格への近道です。
試験当日に向けたメンタル管理
試験当 日はどうしても緊張しがちですが、事前の準備がしっかりできていれば大きく焦る必要はありません。試験前日には早めに就寝し、当日の朝は余裕をもって試験会場に向かうことで、落ち着いて試験に挑めます。
また、緊張を感じた時こそ、深呼吸や軽いストレッチなどで自分のペースを取り戻す工夫が大切です。合格可能性が高い場合でも油断は禁物ですが、ポジティブに考え自分を信じることが大切です。試験直前にノートを見直す程度で、当日にベストパフォーマンスを発揮できるようにメンタル管理を整えましょう。
~・介護福祉士合格の秘訣は満点を目指さない勉強法でした・~
介護福祉士国家試験では、講師陣や専門家でも間違えてしまうような「難問」が必ず出題されます。
しかし、それら全てを解くために「重箱の隅をつつくような勉強法」は効率的ではありません。
出題の可能性が低い内容は省き、「間違えてはならない問題を確実に解く」という合格するためのテキストと勉強法が必要です。
介護福祉士国家試験「受かるんですシリーズ」
「受かるんですシリーズ」とは?
介護福祉士合格請負人のプロが作った湘南国際アカデミー独自の受験対策テキスト教材です。
テキストはこちら⇒「丸わかりテキスト」
動画版はこちら⇒「丸わかり動画」
eラーニングはこちら⇒「解説付きWeb問題集」
FAQ|介護福祉士筆記試験に関するよくある質問
- Q1.
- A
介護福祉士筆記試験の会場は、全国の主要都市に設置されます。受験地は申込時に選択し、最終的な会場は受験票に記載されます。希望する地域での受験を確実にしたい場合は、申込時に必ず希望の受験地を確認してください。
- Q2.介護福祉士の試験日程の変更は可能ですか?
- A
試験日程の変更はできません。原則として全国同一日程で実施されるため、やむを得ない事情があっても日程を振り替えることはできません。受験できない場合は欠席扱いとなり、次回以降の試験を再度申し込む必要があります。
- Q3.介護福祉士国家試験の受験票の不着・紛失時の対応は?
- A
受験票が届かない、または紛失した場合は、試験実施団体(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)へ速やかに連絡してください。試験日までに「受験票再発行」の手続きを行えば、試験を受けることが可能です。
- Q4.第38回介護福祉士の筆記試験からパート合格制度は適用されますか?
- A
第38回(令和7年1月実施予定)から、筆記試験において基準点に達した科目を翌々年まで持ち越せる「一部科目合格(パート合格)」制度が導入されます。不合格の場合でも、基準点を満たしたパートは次回以降の試験で免除されます。
まとめ:介護福祉士筆記試験で合格を勝ち取るためのポイント
最後に、介護福祉士試験対策や学習で押さえておきたい重要なポイントを振り返ります。
介護福祉士の筆記試験に合格するためには、まず試験範囲の広さを理解し、効率の良い学習計画を立てることが必要です。苦手分野を後回しにせず、過去問や模擬試験を利用してバランスよく対策を行いましょう。各科目の基本知識と実務的な連携を意識することで、総合問題にも対応しやすくなります。
また、最新の制度改正や社会的トピックスも押さえておくことで、出題傾向の変化に柔軟に対応できるようになります。試験当日に実力を発揮するためには、十分な体調管理とメンタルコンディションの維持も欠かせません。自分に合った学習スタイルを見つけ、焦らず継続して取り組むことが合格への近道です。
資格取得後は介護のプロとして多様なキャリアを切り開くことができます。合格した先の未来を見据えながら、日々の学習を価値あるものに変えていきましょう。
無料資料請求やお問い合わせはこちらからお気軽にお問い合わせください。
介護の資格 湘南国際アカデミー
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▶「各種ご相談やお問い合わせ」
▶「お電話でのお問い合わせ:0120-961-190」
(受付時間:9:00〜18:00/年中無休)
その他、介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ機関への評価業務や、介護事業所や医療機関において「事業所内スキルアップ研修」の企画・提案・実施など各事業所用にカスタマイズする研修をプロデュースし、人材確保・育成・定着に向けた一連のプログラムを手掛けている。






