特定技能「介護」は在留期間が通算5年の上限があり、長期定着を実現するには採用時点から「5年後の出口」を設計することが必要です。その出口となるのが介護福祉士の取得と在留資格「介護」への移行です。
本記事では、特定技能「介護」の制度上の位置づけを簡潔に整理したうえで、介護福祉士取得を目指す外国人介護士の国家試験合格率データ、年次別の育成ロードマップ、パート合格制度を活用した在留期間延長の仕組み、そして在留資格「介護」への移行ステップを実務目線で解説します。
(参照:厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」)
(参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による在留期間延長措置について」)
特定技能「介護」の採用条件・受け入れ要件・試験免除ルートの詳細はこちら
特定技能「介護」と介護福祉士の関係を整理する
特定技能「介護」は、一定の技能と日本語力を持つ外国人が介護業務に従事できる在留資格(特定技能1号)です。在留期間は通算5年が上限で、「介護福祉士取得→在留資格『介護』へ変更」が長期定着への唯一の正規ルートです。
特定技能はゴールではなく、キャリアの途中にある制度です。5年間で介護の実務経験と日本語力を積み上げながら介護福祉士を目指す、という視点で採用・育成を設計することが、事業所にとっても本人にとっても最も合理的な選択肢になります。
なお、特定技能には2号が存在しますが、介護分野ではすでに在留資格「介護」(介護福祉士国家資格が前提)という長期就労の仕組みがあるため、特定技能2号は設定されていません。これが介護分野の独自性であり、「5年以内に介護福祉士を取得させる」育成支援が他分野以上に重要な理由です。
特定技能・技能実習・在留資格「介護」・EPAの出口設計の違い
4つの制度はそれぞれ在留の出口設計が異なります。育成方針を決めるうえで重要な「介護福祉士取得後の出口」の視点で整理します。
| 区分 | 在留期間 | 転職 | 家族帯同 | 介護福祉士取得後の出口 |
|---|---|---|---|---|
| 特定技能1号 | 通算5年 | 可(介護分野内) | 不可 | 在留資格「介護」へ変更→更新制限なし |
| 在留資格「介護」 | 更新制限なし | 可 | 可 | 取得が在留要件(すでに取得済み) |
| 技能実習 | 最長5年 | 原則不可 | 不可 | 特定技能 or 在留資格「介護」へ移行 |
| EPA | 最長4年 | 原則不可 | 不可(資格取得後可) | 合格→在留資格「介護」、条件次第で特定技能へ移行 |
特定技能は採用しやすい反面、5年の壁があります。技能実習から特定技能へ移行した場合も通算5年が上限となるため、いずれのルートでも「介護福祉士取得→在留資格『介護』」という出口設計を早期に共有しておくことが重要です。
介護福祉士国家試験の合格率と外国人の現状
特定技能で入国した外国人が介護福祉士を目指す際に、最初に確認すべきが合格率の現実です。日本語力と在留期間の組み合わせが合否に直結するため、採用時点から学習計画を逆算する必要があります。
| 在留資格区分 | N2以上での合格率 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特定活動(EPA介護福祉士候補者) | 81.0% | 訪日前研修・養成施設での日本語教育が充実 |
| 留学(介護福祉士養成校 卒業見込) | 79.7% | N2以上が入学要件の施設が多い |
| 技能実習 | 55.9% | 現場での学習支援の質に左右されやすい |
| 特定技能 | 50.4% | 日本語力と学習支援の充実が合否の分岐点 |
(出典:厚生労働省「令和6年度老人保健健康増進等事業 外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」第36回国家試験筆記試験の結果より)
特定技能の外国人のN2以上での合格率は50.4%と、EPA候補者(81.0%)と比べて30ポイント以上の差があります。この差の主な要因は「日本語教育の計画性」と「学習支援体制」の違いです。特定技能での入国は即戦力として現場に入りやすい反面、介護業務と学習の並行設計が事業所任せになりやすい点が課題です。
また、厚生労働省の調査では、外国人介護人材が国家試験を受験する理由として「日本で介護職として働き続けるため」が68.9%で最多でした。本人のモチベーションは非常に高く、それを活かせる育成設計を事業所が用意できるかどうかが長期定着の鍵です。

介護福祉士
介護支援専門員
湘南国際アカデミーが支援する外国人介護福祉士の合格率は70%を超えています。
厚生労働省の調査では特定技能の在留資格で受験した外国人のN2以上での合格率は5割強にとどまりますが、日本語教育と実務者研修を年次で組み合わせた計画設計が合否を分ける最大の要因です。
N3レベルで初任者研修、N2レベルで実務者研修、そして国家試験対策へ、というカリキュラム設計が定着率と合格率の両方を上げる鍵です。
(出典:厚生労働省「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」)
特定技能から介護福祉士取得・在留資格「介護」移行までの育成ロードマップ
採用時点から5年後の出口を設計することが、長期定着戦略の核心です。湘南国際アカデミーの外国人介護士支援実績をもとに、年次別の育成計画の目安を整理します。
| 年次 | 日本語目標 | 受講する研修 | 介護福祉士試験との関係 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | N3取得を目標 | 介護職員初任者研修(修了済みでない場合) | 受験資格なし(実務経験の積み上げ) |
| 2年目 | N2取得を目標 | 介護福祉士実務者研修・喀痰吸引等研修 | 受験資格なし(必須研修の受講) |
| 3年目 | N2以上を維持 | 国家試験対策開始 | 受験資格取得・初回受験 |
| 4年目 | N2以上を維持 | パート合格制度を活用した重点学習 | パート合格を活用して弱点パートに注力 |
| 5年目 | N2以上を維持 | 国家試験対策(最終年度・全パート受験) | 合格→在留資格「介護」移行 / 条件付き→延長措置申請 |
(参考:厚生労働省「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」掲載の育成事例をもとに湘南国際アカデミー作成)
このロードマップで特に重要なのは2点です。第一に、実務者研修は介護福祉士受験資格の要件であるため、2年目までに修了を計画に組み込む必要があります。第二に、5年目の国家試験は在留期間延長措置の条件に関わるため、4年目にパート合格がある場合でも最終年度は全パートを受験することが推奨されます。
事業所が準備すべき学習支援の4要素
育成計画を絵に描いた餅にしないために、事業所が具体的に整備すべき支援を4つ挙げます。
第一は勤務シフトの調整です。日本語学習や国家試験対策のための時間を確保できるシフト設計が不可欠です。過重労働で学習時間が取れない状態では合格は難しく、本人のモチベーションも下がります。第二は研修費用の負担です。実務者研修の受講料や試験対策教材、受験料の負担が定着率向上につながります。第三は日本語学習機会の提供です。業務時間内での日本語授業の実施や、外部の日本語講師の活用が有効です。第四は目標の言語化と共有です。「いつ何の研修を受け、何年目に受験するか」を本人と事業所が書面で共有し、定期面談で進捗を確認する仕組みが合格率を高めます。
在留期間と「5年の壁」
特定技能1号の在留期間は通算5年が原則上限です。「通算」とは、同じ分野・同じ職場に限らず、特定技能1号として在留した期間の合計で管理されます。転職してもリセットされません。
現場でよくある誤解が、いったん帰国すればリセットされるという考え方ですが、原則として通算管理は継続されます。4年目あたりから国家試験受験や在留資格変更の準備を具体化し、手続きの遅れで選択肢を失わないようにすることが重要です。5年到達時の現実的な選択肢は、介護福祉士国家試験に合格して在留資格「介護」へ変更するか、後述のパート合格制度に関連する延長措置を申請するか、です。
介護福祉士国家試験のパート合格制度と在留期間延長の仕組み
介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)が導入されたことで、特定技能1号の通算5年に達した時点で一定条件を満たす場合に、在留期間延長を可能とする措置が示されています。ただし制度の仕組みを正確に理解しないと、誤った受験戦略につながる危険があります。
パート合格制度は、国家試験を複数のパートに分けて評価し、一度合格したパートは次回以降の受験が免除される仕組みです。在留期間延長との組み合わせで注意が必要なのは、「不合格パートだけ受ければよい」と考えやすい点です。延長措置の条件では5年目の全パート受験が求められるため、この誤解が致命的なミスにつながります。
5年目の受験結果による取扱い分岐
令和8年(第38回)国家試験の延長条件は、合格基準点64点の8割以上(52点以上)の得点があり、かつ1パート以上合格していることです。4年目にAパート合格があった場合、5年目の全パート受験結果によって3つのケースに分かれます。
| 5年目の受験結果 | 取扱い |
|---|---|
| 全パートの合格基準を満たした場合 | 国家試験合格扱い → 在留資格「介護」への変更が可能 |
| Bパートのみ合格・総得点52点以上(Cパート不合格) | 国家試験合格扱いとならないが、在留期間延長措置の申請が可能 |
| Bパートのみ合格・総得点52点未満(Cパート不合格) | 国家試験合格扱いとならず、延長措置も不可→原則帰国 |
(参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験のパート合格による在留期間延長措置について」Q&Aより)
令和8年(第38回)国家試験に係る申請期限は令和8年4月30日(木)消印有効です。提出先は厚生労働省社会・援護局福祉基盤課(〒100-8916 東京都千代田区霞ヶ関1-2-2)への郵送のみで、持ち込み・メールは不可です。合格発表後すぐに準備を始めても間に合わないケースがあるため、合格発表前から書類の下準備を進めることが実務上の安全策です。
パート合格・在留期間延長の申請書類・送付先・要件の詳細はこちら
在留資格「介護」への移行ステップ
介護福祉士に合格すると在留資格「介護」へ変更でき、特定技能1号の通算5年の制約から外れて長期就労の見通しが立ちます。在留資格「介護」は、介護福祉士として専門職就労するための在留資格で、更新により継続的に日本で働くことが可能です。特定技能1号のような通算上限がないため、長期雇用やキャリア形成を前提とした育成投資がしやすくなります。
変更手続きは、国家試験合格を軸に入管へ在留資格変更許可申請を行います。実務では、合格後のタイミングで必要書類を揃え、勤務先の情報や職務内容が介護福祉士としての活動に整合していることを説明できる状態にしておくことが重要です。
在留資格「介護」では家族帯同も可能になるため、本人の生活設計にも大きな影響を与えます。「日本で長く住み続けたい」というモチベーションを持つ外国人介護士にとって、介護福祉士取得は在留の安定だけでなく、家族を呼び寄せられるという具体的な目標になります。この事実を採用面接や定期面談で共有することで、学習へのコミットメントが高まります。

介護福祉士
介護支援専門員
在留資格「介護」へ移行した職員が定着した事業所では、その後も同じ制度で採用した新しい職員の育成モデルになるケースが多いです。
合格者が「自分も先輩のように合格したい」という良い循環が生まれます。
介護技能実習評価試験評価者として多くの事業所を見てきましたが、1人の合格者が職場全体の学習意欲を引き上げる事例は非常に印象的です。
FAQ|介護福祉士と特定技能に関するよくある質問
特定技能と介護福祉士の関係について、実務でよく聞かれる疑問をQ&Aで整理します。
- Q1.特定技能1号でいったん帰国した場合、通算5年はリセットされますか?
- A
原則としてリセットされません。通算管理のため、再来日後も特定技能1号として在留した期間の合計が5年の上限に向けて加算されます。だからこそ5年以内に介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移行する計画を最初から設計することが重要です。
- Q2.介護福祉士の受験資格を得るには実務者研修が必須ですか?
- A
- Q3.技能実習から特定技能に移行した場合、介護福祉士受験の実務経験はどう計算されますか?
- A
技能実習期間中の介護業務の経験も、所定の要件を満たせば受験資格に必要な「実務経験」に含まれます。ただし実務経験の証明書類の発行は在籍した事業所が行うため、移行前に必要な書類を確認・取得しておくことが重要です。
- Q4.パート合格制度で在留延長措置を利用する場合、5年目は全パートを受験しなければいけませんか?
- A
はい、延長措置の条件(5年目の試験で1パート以上合格かつ総得点52点以上)を満たすためには、前年度のパート合格があっても5年目は全パートを受験する必要があります。不合格パートだけ受ければよいと考えると、条件未達になるリスクがあります。(参照:厚生労働省在留期間延長措置Q&A)
- Q5.在留資格「介護」に変更すると家族を呼び寄せることができますか?
- A
はい、在留資格「介護」は家族帯同が可能です。特定技能1号では家族帯同が認められていないため、「日本に家族を呼び寄せたい」というモチベーションを持つ外国人介護士にとって、介護福祉士取得は在留の安定と生活基盤の両方を実現する重要な目標になります。
まとめ
特定技能「介護」と介護福祉士の関係で押さえるべき核心は、「特定技能は5年の上限があり、長期定着のためには介護福祉士取得→在留資格『介護』移行という出口を採用時点から設計する必要がある」という点です。
N2以上での合格率が特定技能で50.4%にとどまるというデータが示すように、現場業務と学習を並行させる外国人介護士には、事業所による計画的な支援が不可欠です。年次別の育成ロードマップを組み、実務者研修の修了を2年目までに完了させ、3年目以降の国家試験対策に向けた学習環境を整えることが、合格率と定着率の両方を高める最善策です。
パート合格制度に関連する在留延長措置は5年目の全パート受験が前提となるため、受験戦略と書類準備を前年から設計しておくことが重要です。万が一合格に至らなかった場合の選択肢も含めて、複数のシナリオで雇用計画を立てることが安心につながります。
湘南国際アカデミーは、初任者研修・実務者研修・介護福祉士受験対策・登録支援業務までをワンストップで提供しており、支援中の外国人介護士の介護福祉士合格率は70%を超えています。特定技能での受け入れから在留資格「介護」への移行まで、育成設計のご相談はお気軽にお問い合わせください。
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湘南国際アカデミーでは初任者研修・実務者研修・介護福祉士受験対策の講師を務めるほか、受験対策テキストの執筆も担当。
介護技能実習評価試験評価者として外国人介護士の受け入れ支援、事業所向けスキルアップ研修のプロデュースなど、人材確保・育成・定着に向けた幅広い活動を展開している。


