実務者研修は、介護の専門性を高めるための重要なステップです。本記事では、資格取得の概要から実際の学習内容、メリットや受講手順などをわかりやすく解説します。
実務者研修を修了することで、医療的ケアに近い技術を身につけることができ、現場での役割を広げる大きなきっかけになります。特に介護福祉士を目指す方にとっては欠かせない研修です。
介護分野でキャリアアップを目指す方は、ぜひ最後までお読みいただき、実務者研修の必要性と効果的な学習方法を理解してみてください。
実務者研修とは?資格取得の概要
まずは実務者研修の概要と、なぜ取得を目指すべきかを理解していきましょう。
実務者研修は介護の実務能力を高めるために設けられた研修であり、介護福祉士国家試験を受験するためにも必須となっています。初任者研修からさらに専門的な領域を学ぶことで、利用者一人ひとりに対しより深い理解と適切なケアを提供できるようになる点が特徴です。
また、実務者研修は無資格や経験が浅い方でも挑戦できるのがメリットです。学習では、自宅学習(通信)とスクーリング(通学)を組み合わせるため、働きながら学びやすい仕組みも整っています。これによって、未経験者や外国人など、多様な背景を持つ受講生が学習しやすい環境が作られています。
この研修を修了すると、訪問介護事業所におけるサービス提供責任者として働くことが可能になり、より責任あるポジションを担う道が開けます。さらに医療的ケアの基礎を身につけることで、利用者の安全と安心をサポートする立場として大きく活躍できるようになるでしょう。
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なぜ、実務者研修を取得する必要があるのか?
実務者研修は、介護福祉士国家試験を受験するための必須要件です。介護職としてステップアップを図るうえで欠かせない資格取得の道筋となるため、多くの介護職員がこの研修を受講しています。学習内容では、介護職に必要な専門的知識と技術を実践的に学ぶため、研修を修了することで現場での即戦力として期待されます。また、研修修了後はサービス提供責任者など幅広いキャリアパスも得られるようになるため、職場での貢献度や将来性を高めたい方に特におすすめです。
介護職員初任者研修との違いと科目免除について
初任者研修では介護の基礎を学びますが、実務者研修ではさらに踏み込んだ知識と医療的ケアを習得します。特に、喀痰吸引などの医療行為に近いケアを学べる点が大きな特徴です。また、初任者研修修了者は実務者研修の以下の表にあるように科目の一部が免除されるため、取得にかかる費用や学習期間を短縮できる場合があります。科目免除の有無はスクールによって手続きが異なるため、事前に確認するとスムーズに受講を始められるでしょう。
| 保有資格 | 在籍期間 | 学習時間 (カリキュラム総時間) | 免除される科目 |
|---|---|---|---|
| 無資格 | 6ヶ月以上 | 450時間 | 免除なし(全科目受講) |
| 喀痰吸引等研修 | 4ヶ月以上 | 400時間 | 50時間の科目免除 |
| 初任者研修修了者 (旧ホームヘルパー2級) | 4ヶ月以上 | 320時間 | 130時間の科目免除 |
| ホームヘルパー1級修了者 | 1ヶ月以上 | 95時間 | 355時間の科目免除 |
| 介護職員基礎研修修了者 | 1ヶ月以上 | 50時間 | 400時間の科目免除 |
実務者研修の学習内容とカリキュラム
具体的にどのような知識や技術を学ぶのか、学習内容を把握しておきましょう。
実務者研修のカリキュラムは、以下の表にあるように通信学習と通学授業を組み合わせた形で進められます。通信学習ではテキストやオンライン教材を用いながら、基礎的な介護知識を効率的に学習します。そして、通学授業では講師や仲間とともに実践的な技術を身につけることができます。このハイブリッド型の学習スタイルにより、仕事と勉強の両立がしやすくなるのが特徴です。
カリキュラムには高齢者介護だけでなく、障がい者支援や医療的ケア領域も含まれます。これにより、幅広い現場対応力が身につくため、卒業後はさまざまな施設や在宅ケアの場で活躍しやすくなります。講義では最新の介護制度にも触れられ、実践的な視点から学べるのが魅力です。
| 科目名 | 時間数 (全450時間) | 内容区分 | |
|---|---|---|---|
| 1 | 人間の尊厳と自立 | 5時間 | 基本 |
| 2 | 社会の理解Ⅰ | 5時間 | 基本 |
| 3 | 社会の理解Ⅱ | 30時間 | 応用 |
| 4 | 介護の基本Ⅰ | 10時間 | 基本 |
| 5 | 介護の基本Ⅱ | 20時間 | 応用 |
| 6 | コミュニケーション技術 | 20時間 | 基礎 |
| 7 | 生活支援技術Ⅰ | 20時間 | 基本 |
| 8 | 生活支援技術Ⅱ | 30時間 | 応用 |
| 9 | 介護過程Ⅰ | 20時間 | 基本 |
| 10 | 介護過程Ⅱ | 25時間 | 応用 |
| 11 | 介護過程Ⅲ | 45時間 | 応用 |
| 12 | こころとからだのしくみⅠ | 20時間 | 基本 |
| 13 | こころとからだのしくみⅡ | 60時間 | 応用 |
| 14 | 発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 | 基本 |
| 15 | 発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 | 応用 |
| 16 | 認知症の理解Ⅰ | 10時間 | 基本 |
| 17 | 認知症の理解Ⅱ | 20時間 | 応用 |
| 18 | 障害の理解Ⅰ | 10時間 | 基本 |
| 19 | 障害の理解Ⅱ | 20時間 | 応用 |
| 20 | 医療的ケア | 50時間 | 専門 |
介護技術・医療的ケアの習得
実際の介護現場で役立つ具体的な技術を身につけるのは、実務者研修の中心的な学習領域です。身体介護の基本から、より専門的とされる経管栄養や喀痰吸引といった医療的ケアを学べるため、修了後には利用者の安全と健康状態を支える幅広いスキルを獲得できます。また、感染予防法やリスク管理なども学ぶため、介護する側と介護される側がともに安心して過ごせる環境づくりを実践できるようになります。
学習時間・受講スケジュール
実務者研修はおよそ450時間のカリキュラムが設定されており、通信と通学を合わせて学ぶ形が一般的です。受講スケジュールは週末や夜間コースなど多彩に設定されていることが多く、働きながらでも無理なく受講できるベースが整っています。特にスクーリング日程が柔軟なスクールを選ぶと、仕事や家庭との両立がよりスムーズになるでしょう。
修了試験の概要と難易度
実務者研修では、講義や演習を一定期間こなし、修了試験に合格することで資格を取得できます。修了試験は難しすぎるものではありませんが、学習した内容をしっかり理解していないと合格が難しい場合もあります。ポイントとしては、定期的な復習と模擬問題への取り組みが挙げられ、特に医療的ケアや介護過程など専門的なテーマを重点的に学ぶことが大切です。
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実務者研修の受講方法・費用・給付金制度
受講にあたっては、通学や通信などの選択肢や費用面を押さえることが大切です。
実務者研修はスクールによって受講スタイルが異なり、通信コースが充実しているところや通学主体のところなどさまざまです。費用についても、保持している資格や学歴によって差があり、初任者研修を修了しているかどうかで価格が変動することが多いです。さらに、住んでいる地域によっては地方自治体の助成や職業訓練の一環として給付金を受け取れる場合もあるため、事前の情報収集が重要になります。
通信コースと通学コースの違い
通信コースは自宅学習が中心で、自分のペースで学べる利点があります。一方、通学コースは講師や他の受講生と交流しながら学習できるため、疑問点を直接解消しやすいのがメリットです。ただし、通学にはスケジュール調整が必要となるため、忙しい方は通信と通学をうまく組み合わせたスクールを探すと良いでしょう。
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受講料の相場・免除制度・助成金
実務者研修の受講料はおおむね10万円から20万円程度の範囲が多いとされています。ただし、初任者研修修了者の場合には一部科目免除が受けられるため、さらに受講料が割引になる場合があります。加えて教育ローンや自治体が実施する助成制度を活用すると、自己負担を抑えられる可能性があるので、必ず利用条件を確認しておくとよいでしょう。
実務者研修を取得する3つのメリット
実務者研修を修了するとどのような恩恵があるのか、具体的に見ていきましょう。
実務者研修を修了することで得られるメリットは多岐にわたります。介護福祉士を受験できるようになることはもちろん、現場で必要とされる医療的ケアの技能を身に付け、業務の幅が一気に拡大します。さらに、施設や在宅ケアの現場で責任あるポジションに就けるようになるため、自身のキャリアアップにも大きく寄与します。
1.介護福祉士国家試験の受験資格を得られる
介護の国家資格である介護福祉士は、職の安定と専門性の高さから多くの人が目指す資格です。実務者研修を修了しておくことで、介護福祉士の筆記試験への受験要件を満たすだけでなく、学んだ内容が介護福祉士の試験対策としても役立つのが強みといえるでしょう。国家資格を取得すれば、施設内でのリーダーシップや利用者からの信頼度も向上し、より多くの役割を担えるようになります。
2.喀痰吸引など医療的ケアを学べる
実務者研修を修了し現場の実地研修を修了すると、喀痰吸引や経管栄養などの医療的ケアを行えるようになります。これは超高齢社会の中で要介護度が高い利用者が増加する現場において、大きなアドバンテージです。医療的ケアに対応できる介護スタッフは慢性的に不足しているため、スキルを身につけることで活躍の場が一気に広がるでしょう。
※実務者研修を修了しただけでは、喀痰吸引や経管栄養を行うことはできません。
喀痰吸引等研修に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
3.サービス提供責任者へのキャリアアップ
訪問介護の現場において要となるのが、サービス提供責任者と呼ばれる管理的ポジションです。実務者研修を修了することで、この役割に就くための要件を満たし、個別の介護計画を立案し、スタッフを指導するリーダーとして活躍できます。利用者の生活をトータルにサポートできるようになるため、仕事のやりがいや社会的な貢献度も高まります。
サービス提供責任者に関しての詳細は、以下のページをご覧ください
実務者研修の受講手順と注意点
スムーズに研修を修了するための受講手順と、押さえておくべきポイントを紹介します。
受講手続きは、スクールを選んで申し込みを行い、必要書類を提出することから始まります。学校によって必要とされる書類が異なる場合があるため、募集要項をよく読み、期日に余裕を持って準備することが大切です。働きながら学ぶ場合は時間管理が一番のカギとなるため、学習と仕事のバランスを保てるスケジュールを当初からしっかり組んでおきましょう。
必要書類や手続きの進め方
多くのスクールでは、住民票や身分証明書、写真などの基本書類の提出が求められます。加えて、初任者研修の修了証がある場合は科目免除の申請書類が必要になることも。手続きの進め方はスクールごとに細かい違いがあるため、ホームページや説明会などで事前にしっかり確認することがスムーズな受講の第一歩です。
働きながら学ぶためのコツ
シフト勤務や家庭の事情などで学習時間を確保しづらい人は、通信学習の割合が多いスクールを選ぶと負担を減らせます。さらに、通学コースの場合は通いやすい立地や曜日に注目し、計画的に学習できるよう工夫するとよいでしょう。仕事と学習の両立では、短時間でも毎日テキストを読み返すなどの小さな積み重ねが大きな成果につながります。
学校・スクールの選び方
スクールを選ぶ際には、立地や学費、サポート体制などを総合的に検討することが望ましいです。特に修了までのフォロー体制や、学習に行き詰まった際の相談窓口の有無は重要なポイントになります。通学特化型か通信特化型か、または両方をバランスよく取り入れているかなど、学習環境が自分の状況に合っているかを見極めることで、より円滑に資格取得に取り組めるでしょう。
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FAQ|実務者研修の資格取得に関するよくある質問
実務者研修の資格取得に関するよくある疑問点をまとめました。事前に解消しておくことでスムーズな受講が可能になります。
初めて介護の勉強をする方や、すでに初任者研修を修了している方など、受講者の背景はさまざまです。ここでは特に多く尋ねられる質問とあわせて、その回答のポイントを簡潔に紹介します。
- Q1.実務者研修の受講条件や受講資格の有無はありますか?
- A
実務者研修は特別な経験や資格がなくても受講できることが一般的です。ただし、スクールによっては日本語や学歴に関する基準を設けている場合もあります。介護現場での実務経験がない方でも、カリキュラムをこなすことで実務スキルを身につけられるため、意欲があれば誰でも挑戦可能です。
- Q2.初任者研修修了者への科目免除はありますか?
- A
初任者研修を修了している場合は、一部科目が免除されることがあります。免除が認められる科目や手続きはスクールによって異なるため、申し込み時に必ず確認しましょう。時間短縮や費用削減につながるため、初任者研修をすでに修了している人は積極的に活用するのがおすすめです。
- Q3.実務者研修の修了までにかかる期間の目安はどのくらいですか?
- A
通信学習と通学を組み合わせた場合、受講期間は数か月から半年程度が一般的です。学習スピードやスクーリングの頻度は個人差が大きいため、早めのスタートと計画的な学習がポイントになります。スクールによっては短期集中コースを設けているところもあるため、自分の都合に合ったスタイルを選ぶといいでしょう。
- Q4.
- A
まとめ・介護業界で活躍するなら必ず実務者研修を取りましょう
実務者研修は介護業界でキャリアアップを図るうえで欠かせない資格です。最後にポイントを振り返りましょう。
実務者研修を修了することで、介護福祉士への道が開けるだけでなく、身につけた医療的ケアのスキルを武器に活躍の場が広がります。現場での責任あるポジションへのキャリアアップや、より深い専門性を得られる点が大きな魅力となるでしょう。介護の仕事は今後ますます需要が高まると予想されますが、実務者研修の資格取得を通じて安心・安全なケアを提供できる人材として活躍することで、あなた自身の可能性も大きく広げることができます。
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現在はキャリアアドバイザーとして、求職者の就労サポートや企業支援を担当。採用担当経験者としての豊富な経験を活かし、求職者の強みを引き出す面接対策にも定評がある。介護業界の発展に貢献するべく、求職者・企業双方の支援に尽力。
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